469神猫 ミーちゃん、冷や汗をかく。

 家に帰って来た。昼食をとった後、実験を行なう。みんなで迷宮の村に移動。


 宗方姉弟、ペロ、セラ、ルーさん、ヤンくんにはオーク狩りをしてもらう。ヤンくんは初めてのオーク狩りになるので、セラが専属のボディーガードになってもらう。



「任せるにゃ!」


「が、頑張ります!」


「み~!」



 ミーちゃんの応援を受け、ペロたちが出発。無理はしないでね~。


 さて、実験は俺とゼルガドさん、そして助手にグラムさんだ。


 物が物だけに危険が伴うので、指示は俺が出し実際の作業はグラムさんが行う。一応。ゴーグル、マスク、手袋、エプロンは着けてもらっている。


 狐獣人の村を出て離れ、開けた場所に移動した。大きな音や衝撃が起こるかもしれないので、村から離れた場所で実験をする。


 大きなテーブルをミーちゃんに出してもらい。実験道具も出していく。全てガラス製の特注品だ。


 以前に宗方姉弟に化学の実験で使う道具を知っている限りを絵で描かせて、商業ギルドに発注していたのだ。この間の蒸留器もその一つだ。


 木箱からニトログリセリンを出して、グラムさんに少量ビーカーに移し渡す。少し離れた場所にある岩に一メルくらいの高さから一滴ほど落としてもらうと、ボンっと爆発した。


 ミーちゃん、びっくりして俺にしがみ付く。


 威力がわかったので別のビーカーに珪藻土を入れ、グラムさんにニトログリセリンを少しずつ慎重に入れていってもらう。珪藻土はどんどんニトログリセリンを吸っていく。


 珪藻土の三倍ほどのニトログリセリンを吸ったところで一旦止める。どのくらい吸わせるかは今後の実験次第だ。


 グラムさんにスプーンでニトログリセリンを吸った珪藻土を少し掬ってもらい、さっきの岩に同じ高さからその珪藻土を落としてもらう。


 ボトっと落ちただけで爆発はしなかった。今度は二メルほどの上から落とすも爆発はしない。


 グラムさんに離れてもらい。岩の上に落ちた珪藻土に向かって弱い雷を放つ。ボーンっと鈍い音がして爆発した。



「まじかよ……安定したってことか?」


「安定はしましたが、威力が落ちたみたいです」


「み~」


「そこは量を変えて検証すればいいことだぜ」


「保存方法も考えないと駄目ですね。気化すると使えない可能性もあります」


「その辺も検証だな。気化して乾いても使えるなら完璧な爆薬だぜ」



 確か、気化すると駄目だった気がする。あえて気化させて気化爆弾もありか? 難しそうだ。


 今度はニトロセルロース作りだ。


 ニトロセルロースと聞くと難しく考えてしまうが、意外と向こうの世界ではニトロセルロースを見ていると思う。


 ニトロセルロースは手品師がよく使う、火を点けると一瞬で燃えて鳩が飛び出す手品などに使われているあれだ。


 原料は綿。どこにでもあるものだし作り方も簡単。高校の時に化学の実験で作ったので覚えている。というより思い出した。


 作り方は非常に簡単な反面、非常に危険な作業になる。グラムさんに頑張ってもらおう。


 ビーカーに濃硝酸と濃硫酸を二対六の割合で混合酸を作る。この際、発熱するので桶に張った水で冷却する。その混合酸に綿を入れ一時間ほど放置。一時間後、取り出して水ですすいで自然乾燥させれば出来上がり。ニトロセルロースだ。


 俺は自然乾燥ではなく、大気スキルで乾燥させた。



「見た目はあんまし変わんねぇな」


「み~?」



 では、その身で体験していただきましょう! 


 小片をゼルガドさんの手のひらに載せる。



「おいおい、嫌な予感しかしねぇんだが……」


「大丈夫。一瞬ですので火傷なんてしませんから」



 そう言って、ゼルガドさんの手のひらの上のニトロセルロースに火を点ける。ボウォっと一瞬で燃え尽きる。



「みっ!?」


「ウォッ! ビビるじゃねか! あ、熱くはねぇ? 煙も出ねぇ?」



 間違いなくニトロセルロースの反応だ。ネロは無煙火薬を手に入れた!


 このニトロセルロースとニトログリセリンを混ぜれば推進用の火薬だったはず。信管が作れればロケット砲も出来てしまう。作らないけどね。


 ニトロセルロースとニトログリセリンと何かを混ぜると、現代で使われているゲル状のダイナマイトになるはずだけど覚えていない。


 まあ、そこまでしなくてもいいでしょう。ここまで出来れば御の字だ。


 さてここでまで、ノリノリで作ってなんだけど、本当によかったのか?


 俺をこの世界に送った神様は、俺にこの世界に影響を与えるスキルは駄目といった。


 確かにスキルはもらえなかった。猫用品スキルは別。世界に影響を与えそうな品をいくつか召喚できるけど、争いには向かないからね。


 時空間スキルは……自分で覚えたからノーカウント。


 でも、今回の技術はどうなんだ? クロスボウなどは偽勇者たちだけど、この火薬類はやりすぎじゃねぇ? と密かに心中で冷や汗を垂らしている。


 どう思う? ミーちゃん。



「み、み~?」

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