464神猫 ミーちゃん、食べたら美味しい?
所変わって飛竜のいる竜舎。
立派な建物だ。飛竜が大事にされているのがよくわかる。
ゲオルグさんに案内され一頭の飛竜の前に来た。ゼルガドさんは疲れたらしく、王宮の食堂で休んでいる。グラムさんは一緒について来ている。
「私の相棒でフルンティングという。威嚇はすれど私の命なくば襲うことはないから安心してくれていい」
そして、エドガーさんがフルンティングに近づくと、唸り声と共に牙を向けられる。
「いつもこうなんだよ……うちの家系で飛竜に嫌われているのは私だけ……」
まだ、唸り声を上げているフルンティングにグラムさんが睨みを効かす。フルンティンの体がビクッとなり平身低頭状態になる。みなさん、唖然。
「はいはい。グラムさん、弱い者いじめはいけませんよ」
「み~」
「い、いや、俺は……」
そんな平身低頭状態のフルンティングの鼻先に、ミーちゃんがぴょんと移動。
お鼻とお鼻をくっつけ合えば、もうお友達とばかりにフルンティンを駆け上がり頭のてっぺんに陣取る。
「み~!」
ぬぅ~とフルンティングが首を上げおとなしくしている。
「フルンティンがおとなしくしている……目の前で見ていながら信じられん」
「グラム殿は当然格上。ネロくんの子猫は友達というところか?」
「子猫に負けた……」
三者三様。いろいろだね。グラムさんは地面にのの字を書いて落ち込んでいる。グラムさんは自分ではそう思っていないようだけど、ちょっと尖りすぎなのだ。もう少し、自分が周りに与える影響を考えないといけない。
「いいものを見せてもらったぞ、ネロくん。うちに来る子たちが楽しみだ」
「もう少しお待ちください。白狼のほうは問題ありませんが、子猫のほうはもう少し時間が掛かります。やっと人に慣れてきたところなので」
「うむ。仕方あるまい。しかし、楽しみよ」
大公様だけでなく侍女さんたちも待ちわびているからね。でも、夜は誰が面倒をみてくれるのだろうか? 持ち回りか?
用事も済んだので神猫商会ヴィルヘルム支店に戻る。
夕方になりエールの販売がちょうど始まったのを見たゼルガドさん。エールを飲みに来たお客さんの列に並んでいる。
「並ばなくても飲ませますよ?」
「ネロから金をもらってばかりだ。使わないと経済が回らないんだろう? 少しは貢献してやるぜ」
「み~」
そう言って、ほかのお客さんと意気投合して、ガハハハッと肩を組んで飲んでいる。サケコミュニケーションって凄いね……。
「グラム。なんか変わったか?」
「な、何も変わってなどいないぞ……」
「み~?」
なぜそこで、アレックスさんの問いに誤魔化す?
「み~」
「もっか、グラムさんは修行中なのです~だそうです」
「ミ、ミー様!? なぜ言う……」
「お前が修行ねぇ。ネロ、どんな修行をさせているんだ?」
「えぇーと、重力スキルを覚えさせて、自分に負荷を掛けさせています……」
「重力スキルだと? 長が使うスキルだぞ? どうやってグラムが覚えた……スキルの実験は俺がやると言ったはずだが?」
ですよねぇー。そう言われると思ってました。
「グラムさんの修行に必要だったので、急遽覚えてもらいました。習得方法は烈王さんに聞いていたので」
「なら、ネロも使えるのか?」
「み~!」
ミーちゃん、俺の肩からぴょんと飛んで、アレックスさんの前でプカプカと浮かぶ。ドヤッ! って顔で……。
「最近、使えるようになりました。ツライ、苦行に耐えて……。ドラゴンはおそらく適性があるので覚えるのは簡単だと思います。グラムさんも一度で覚えましたので」
「グラムが使えて、俺が使えないのは屈辱だ。俺も覚えたい。ネロ」
「なっ!? なんで!」
アレックスさんのほうがグラムさんより年上か格が上なのかな? はぁ……しょうがないね。
「いろいろ立て込んでいるので、五日後なら体が空くので教えられますが?」
「問題ない」
「み~」
あぁーせっかくお休みになると思っていたのになぁ。俺のスローライフはどこ行った……。
早く帰りたいのだが、ゼルガドさんがお客さんと盛り上がっている。昨日、今日と頑張ってくれたので、無下にはできない。
仕方ないのでお手伝い。いつの間にかフライヤーが設置されている。最初は夕方のエールを売る時間だけに、ポテトフライや唐揚げを揚げていたらしいが、日中も食べたいと要望が多くかなりの数が売れるので、一度に沢山揚げられるフライヤー特注で作ってもらい設置したらしい。
これ、本店にも欲しいな。
「み~」
ミーちゃん、危ないから近寄っちゃ駄目だよ。ミーちゃんの素揚げが出来ちゃう。
「みぃ……」
ミーちゃん、食べても美味しくないよ……と言っておりますが、毎日餡子を食べているミーちゃんは美味しいに違いない!
「みっ!? みぃ……」
いや、冗談だからね! ハムハムはするけど食べませんから!
「みぃ……」
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