462神猫 ミーちゃん、次代の大公様に会う。
ゼルガドさん、グラムさん、お馬さんたちと手を繋ぎ、ヴィルヘルム支店に飛ぶ。
「こ、ここはどこだ!?」
「神猫商会ヴィルヘルム支店です」
「み~」
「ネロ、おめぇ、転移持ちだったのか……」
違いますよ。転移が使えるAF持ちです。あえて言わないけど。
ヴィルヘルム支店はもう開店していたので、声だけ掛けて王宮に向かう。
門で特使の手形を出して少し待つと執事さんがやって来て、大公様の執務室に案内される。
「今日はどうした?」
ミーちゃんは、侍女さんたちの下に自ら赴き、モフモフの癒しを与えている。ゼルガドさんとグラムさんは俺が座るソファーの後ろに立っている。
「昨日、ルミエールの王宮で銃の実験をしてきました」
「ほう。実験とな?」
「ルミエールは準備が整ったので試作品の製作に入ります」
「そこまで進んでおるか」
「ですので、昨日の実験をこちらでも行い、見てもらおうと思います」
「なるほど、すぐに準備させよう」
そう言って、執事さんに指示を出す。
「そちらの二人は新顔だな」
「ドワーフのゼルガドさん。神猫商会の商品開発部の主任で今回の銃の開発に携わっています。そして、こちらはグラムさん俺の護衛です。烈王さんの義弟になります」
「なんと!? 烈王様の義弟殿か! 最強の護衛ではないか……」
大公様にすれば銃よりドラゴンのほうが優先順位の上位にあるのだろう。まあ、銃でドラゴンを相手するのは分が悪すぎるから仕方がない。
だけど、ドラゴンは無理でも飛竜相手なら話が違ってくる。飛竜はドラゴンほど頑丈ではない。俺の装備している飛竜の革鎧は加工もしてあるので矢は通さないが、クロスボウボルトや火薬式の銃の弾は防ぐことはできないと思う。
金属製の鎧を貫くクロスボウや火薬式の銃は飛竜の致命傷になり得る。これって飛竜隊が主力と言っていい、ヒルデンブルグにとって危機的状況だと思うんだよね。
「どの辺まで開発は進んでいるんですか?」
「銃以外は開発済みだ。火薬も出来ておるぞ。ほかの兵器は改良段階に入っておる。それと、飛竜に腹側に鎧を着せることにした」
苦肉の策らしい。防御力が上がるけど、飛行距離と敏捷性が下がるそうだ。それに、クロスボウのボルトは防げるそうだが、対空兵器のバリスタの槍のような矢はさすがに無理らしい。あれは飛竜だけでなくほかのモンスターだけでなくドラゴンでさえも傷つける可能性がある。驚異の兵器だ。
近衛隊の隊長のカールさんが準備ができたと呼びにきた。場所はやはり練兵場。グラムさん、走り込みだ!
「み~!」
「お、おう!」
練兵場には急遽天幕が張られ、兵士さんが準備に走り回り大わらわ。そんな中、大公様と一緒に天幕に入ると今まで会ったことのない人が大勢いた。
「息子のエドガーだ。儂の後を継ぐからネロくんとは長い付き合いになるであろう」
「ルミエール王国がネロ・フォン・ウント・ツー・ブロッケン男爵です。以後お見知りおきを」
「み~」
「そう、固くならなくてもいいよ。私はまだ父の後を継いだわけじゃない。それに父や妹とはフレンドリーと聞いているよ。私も同じようにしてほしいい」
アンネリーゼ様の兄にあたる方だけあってイケメンだ。イケメンというだけでなく、大公様の威厳さも持ち合わせたイケメンだ。いい次代の大公になることだろう。
だからといって、フレンドリーに話してよいものなのだろうか? 大公様をチラリと見れば頷いてくださった。
「エドガー様がそう仰られるのであれば」
「まだ固いね。正直、ネロくんは私などよりこの国にとっては重要人物なんだから、タメ口でも構わないくらいだよ」
俺が重要人物? なんで?
「わからんか? 意外とネロくんは鈍いとみえる。ネロくんは烈王様と懇意の間柄。かつて、大公といえど烈王様と懇意の間柄だったのは初代様のみ。それを顧みれば儂もネロくんに及ばんのだよ」
「父上。かの御仁はドラゴンではございませんか?」
エドガーさんが、ヨタヨタしながら走っているグラムさんを見ながら大公様に問いかけた。
「うむ。わかるか?」
「なんとなくですが。飛竜隊から飛竜たちがだいぶ騒がしいと報告が上がっております。危機感ではなく興奮しているということなので、彼の御仁の持つ雰囲気からそうではないかと」
「ゲオルグ」
「はっ、ここに」
軽装の鎧だけど素人目に見ても逸品と言っていいような、鎧を着た壮年の方が大公様の前で膝をつく。
「飛竜の様子がおかしいとのことだが、どうだ?」
「おかしいとはいえ、悪い意味ではありませぬ。どちらかといえば武者震いの類かと。ルミエールでの辺境伯の乱の時も同じことがありましたな」
それは、ラルくんだな。ラルくんはいわば王子様。グラムさんは義理だが王弟にあたる。飛竜からすれば雲の上の存在が近くに来れば、そりゃあ興奮するさね。
「み~」
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