461神猫 ミーちゃん、ご褒美、ヨロ~!

 昼食後、大きな会議室に移動。ここに来るのは初めてだ。


 全員が集まり書記さんが頑張ってまとめた資料が配られ説明が始まるが、ゼルガドさんは緊張して役に立たない。必然的に俺が説明役になる。


 ちなみに、グラムさんは午前中と同じ重力で負荷をかけての走り込みだ。


 それはさておき、資料を見ながらみなさんに説明。こうしてデータを見ると、こちらの世界の火薬より黒色火薬と褐色火薬は威力が別物だとわかる。


 丸型の弾は命中率が悪いけど、どんぐり型にするだけで命中率が各段に上がる。黒色火薬で百五十メル、褐色火薬で二百メルなら、ほぼ狙いどおりの場所に着弾する。ライフリングを刻めば更に距離が伸びるだろう。


 金属鎧も黒色火薬と褐色火薬は難なく貫通した。正直、恐ろしい威力だ。



「ロタリンギアはどの程度の武器を開発すると思うかね?」



 矢面に立たされるウィリバルトさんは知りたいだろうね。



「一番最初に使った火薬はどこででも手に入ります。材料を見つけることができれば、黒色火薬までは作れるのではないかと思っています」



 見つけることができればね。彼らは鑑定スキルを持っていないので、偶然に見つけることは困難だ。あるとすれば、発色剤のことを知っているかもしれないってことかな。配合比率は知っているとみていいだろう。褐色火薬については知らないことを願うしかない。



「その銃を作る職人を育てるのに時間が掛かるのでは? 機密保持も難しいと思われるが。そこはどう思うかね?」



 眼鏡をずらしてギロリと睨んで宰相様が問いかけてくる。だから、怖ぇーよ。



「一人で全部を作るとなれば人も時間もかかるでしょうし、機密保持も大変になるでしょう。ですが、各部品をバラバラにいくつかの工房に発注して、出来上がった部品を信用できる職人に組み立てさせればいいと思います。それでも、いつかは情報は漏れるものです。こればかりはどうしようもありません。その辺はお任せします」



 俺の銃を今はその方法で造っている。でも、いつかは真似されるだろう。そうやって技術革新がおきていくんだ。



「実際に人にどれだけのダメージを与えるのか医療面から知りたい。検体の提供を要望する」



 怖い顔したパトリック所長が。結構難題を言ってくるのですけど……。まあ、あれを見たら危機感を募らせるのは当然か。



「言いにくいことですが、死刑囚を使うのがいいかと。あるいは、ゴブリンなどの人型モンスターであれば容易かな。その辺も宰相様にお任せで」



 偽善だと言われようと人は殺したくない。実際に自分の命や仲間の命がかかれば、心を決めるけどね。



「新しい武器の運用方法や戦術はどうだ? 万能ではないようだが」


「そうですね。どうしても雨に弱いという弱点があります。その点は追々改良していくしかないでしょう。運用方法や戦術はいくつか案がありますので、後日提出します。ウィリバルト団長などで精査をお願いします」



 紙薬莢、紙雷管が比較的楽かな。一番いいのは金属薬莢の開発だ。それには無煙火薬が必要になる。ニトロセルロースが必要だな。長い道のりだ。



「どんな戦いにも長所短所はつきものだ。万能が理想だが、致し方ない。承知した。こちらでも運用方法を考え、ネロくんの案と交えて精査しよう」


「後はどれだけの量を揃えられるかね。王都以外の町にも部品の発注をしないといけませんわ」


「運用する兵も用意せねばなるまい」


「第四騎士団の一部を回すのがよいかと」


「うむ。アーデルベルトとウィリバルトで決めよ」


「「はっ」」



 宰相様とウィリバルト団長が王様の前で膝をつく。



「ネロ。今回の件、見事であった。褒美は期待しておけ!」


「み~!」



 ミーちゃんは気楽だね。俺はあの笑顔が怖いんですけど……。


 さあ、撤収ですよ。グラムさん、ゼルガドさん、ぼぉーっとしてない!


 と思ったけど、宰相様にお願いがあったのだ。執事や使用人のことだ。帰る前にお願いしたら、意外とあっさりOKがでた。直接フォルテに派遣してくれるそうだ。ラッキー。


 代わりに、ミーちゃんのミネラルウォーターを要求されたけどね。


 用事も済んだし帰りますか。 


 明日はヒルデンブルグに行かないといけないので、道具はミーちゃんバッグにしまう。今日作った残りがあるので、明日は実験がすぐにできる。今日使った実験道具はヒルデンブルグに置いてきていいとも言われている。ヒルデンブルグでも少しは進めているだろうから、技術差はなくなるだろう。


 あぁ疲れたなぁ。早く帰って風呂入って寝よ。


 寝て起きたら朝だった。モフモフスローライフはいつやってくるのだろう……。



「み~!」



 最近ミーちゃんは元気だ。やる気に満ちている。あんなに朝は弱かったのに、今は目覚まし前に起きて俺を起こしてくれる。もう少しゆっくり寝てていいんだよ?



「み~?」



 朝食を食べみんなをモフモフした後。準備ができたのでヒルデンブルグに向かう。


 メンバーは昨日と同じ。



「なあ、ネロ。ヒルデンブルグに行くんじゃねぇのか?」


「今から行きますよ?」


「ここからヒルデンブルグのヴィルヘルムまで、どのくらいかかかるかわかっているのか? 旅の準備はどうすんだよ?」


「旅の準備? そんなもの俺たちには必要ないぜ!」


「み~!」



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