460神猫 ミーちゃん、僕らは便利な運び屋さぁ~。

「ネロ、おめぇってすげぇ奴なんだな……」


「そうでしょうか? 面倒なだけですよ。今回のようにね」



 道具を並べていき作製準備に入る。ここからは書記さんが全て工程、分量を書き留めていく。職人さんと研究者の方は、少し離れた場所からこちら作業を窺っている。


 前掛け、帽子、マスク、手袋、ゼルガド特製ゴーグル、そしてゼルガド特製アースバンド゙を身に着け作業開始。


 静電気で暴発なんて嫌だからね。事前に作ってもらっていた。


 最初は黒色火薬。分量を計量器できっちりと計り、薬研でゴリゴリと細かくしていく。


 褐色火薬も同じ、配合比率は黒色火薬と違うけど俺の記憶の彼方に封印した黒歴史ノートに配合比率がちゃんとあった。無煙火薬についてもだ。忘れないようにちゃんと書き出しておいた。まさか、役に立つ日が来ようとは……。


 結構な量を作ったところで、一工夫加えたものを作る。丸薬作りだ。コーニングともいう。花火などで使われる技術だね。火縄銃などでも使われていた技術だ。


 昔は水で練って乾かすだけだったけど、揮発性の高いアルコールでやるのが一般的。高濃度のアルコールがなかった時には蒸留酒で練っていたと聞く。



「おいおい、ネロ、もしかしてそいつは……」


「蒸留酒ですよ。揮発性があるので早く乾きます」


「マジかよ……ドワーフの秘伝が……」



 コネコネして銃口径に合わせて作ってもらった成丸器で丸くしていき、出来上がったものを水スキルで少し乾かし、日当たりいい場所で本格的に乾かす。


 さて、準備は整った。実験並びにお披露目の時間だ。


 練兵場に銃を設置する台を地面に固定して、五十メル、百メル、百五十メルに的を用意する。全ての準備ができたところでみなさんを呼びに行ってもらう。


 ぞろぞろと観戦用の席に着き、こちらを注視する。


 最初に見せるのはこちらの世界に最初からあった火薬。


 銃はライフリングなしの滑空砲。火縄でのマルチロック式ではなく火打石でのフリントロック式を採用。弾は丸形とどんぐり型の二種類。どんぐり型の弾の底にコルクを取り付けて極力圧力を逃がさない工夫を加えた。ただ、押し込むのがちょと難あり。


 ドーンの音ともに弾が飛び出し的を射貫く。二種類の弾を三度、的の距離を変えて行う。以前に行った実験と変わりはない。


 観戦席からは驚きの声が上がっている。音が凄いし煙も凄いからね。


 丸型の弾は五十メルならほぼ真ん中あたりだが、百五十メルになると地面すれすれの左下に弾が当たっている。どんぐり型の弾は丸型より直進性が良く、百五十メルの的で真ん中より二十セン下に当たっていた。


 丸型よりどんぐり型が命中率が上がることが実証されたわけだ。


 次は黒色火薬。ドパーン! と明らかにさっきまでの火薬の音とは、比べものにならないほどの爆音と大量の煙が出る。


 観戦席も驚いているけど、引金を引いたゼルガドさんが一番驚いて腰を抜かしている。


 これを何度か撃ちデータを取る。褐色火薬も同じようにデータを取った。正直、黒色火薬と褐色火薬の違いは見た感じではわからなかった。しかし、データを見れば一目瞭然。


 最後にコーニングした火薬も使いデータを取り実験は終了。


 といきたいところだったのけど、王様とウィリバルトさんから、的を金属鎧に変えてやってみろとの要望を受け、急遽やることに。距離は違えど、金属鎧も貫通。同じようにデータを取る


 全ての実験が終わり昼食を挟んで、実験結果を精査し考察することになる。書記の方はこの昼食の間にデータをまとめて人数分の資料を作らないといけない。頑張れ!


 グラムさんは真面目に走っていたので、昼食と聞いてバタリと倒れ込む。昼食を食べるか聞くと、



「食う……」



 だそうだ。



 そして、なぜか俺はロイヤルファミリーと一緒に昼食を食べている。ゼルガドさんとグラムさんは王宮の食堂で昼食を食べているのに……。




「やっぱり、ネロくんの用意するご飯のほうがいいみたいね」


「み~」



 ルカたちには宮廷料理長自ら作った猫まんまが用意されているが、神様仕様の猫缶には敵わない。それでも、しっかりと完食していて食欲旺盛な子たちばかりだ。



「結果は聞かずともわかるが、凄い武器だな」


「話には聞いていましたが、ここまでのものとは思いませんでしたわ」


「伯父上のところでもあれを作っているのでしょう?」


「どこまで進んでいるかわかりませんが、今日のデータを速やかに渡すべきでしょう」


「うむ。我々より直近でロタリンギアとぶつかるのは義父殿だからな。エレナ殿、お願いできるか?」



 飛竜を使えば最短で二日でヒルデンブルグに着くからね。



「それならば、ネロくんのほうが適任でしょう。今回の当事者ですし、烈王様の転移門も使えますわ」



 ここにいる人たちは転移門については知っている。なにせロイヤルファミリーだ。



「はぁ、明日行ってきます」


「うむ。頼む」


「み~」



 僕らは便利な運び屋さぁ~。



「み~!」



 ミーちゃん……自虐ギャグなんですけど?



「みっ!?」



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