神猫ミーちゃんと猫用品召喚師の異世界奮闘記

458神猫 ミーちゃん、誓いを立てさせる。

「た、助かったぁ」

「地面がこんなに冷たいなんて……」

　宗方姉弟の重力を元に戻すとフラフラしながら立ち上がる。

「これを何回か繰り返すと重力スキルを覚える」

「重力スキル、魅力的ですが……」

「ベッドの上でやって」

　それはどうだろうか？　ベッドが壊れる可能性もあるし、ベッドに埋もれて窒息死もあり得るのでは？

「ネロさん……ふ、腹上死させるつもりか！？」

「姉さん……それを言うなら、畳の上で死なせてじゃないかな？」

　やる気があるなら訓練するのはやぶさかでない。

「魂の器が育ってないので……」　

「取りあえず？　今はパス！」

　さて、やる気のない宗方姉弟はほっといて、グラムさんはどうなった？

　まだ、地面に這いつくばり、ミーちゃんに頭をテシテシされている。憐れ。

　ミーちゃんに重力スキルを解除してもらい、グラムさんに現実を突きつける。

「今、お姉さんの所に勝負しに行ったところで勝てませんよ。まず、間違いなく」

「み～」

「なぜだ！？　最強の力を身につけたんだぞ！」

「確かに重力スキルは雷スキルと違って、初級スキルではありませんが、所詮は付け焼き刃。どんな強力なスキルでも使って熟練度を上げないかぎり、お姉さんの地力に勝てないでしょうね」

「み～」

「ぐっ……」

　そもそも、ヴェルさんって烈王さんの奥さんでしょう？　弱いわけがないよね？

　烈王さんの分体にワンパンで負けるグラムさんに、勝てる見込みはあるのか？

「ぐ、ぐっ、なにか、もの凄いプレッシャーが……」

「み～」

「ならば俺は一生勝てぬのですか……？」

　どうだろう？　本人のやる気次第？　今回手に入れたスキルは修行にもってこいのスキルだと思うしね。

「どう思う？　重力スキルと言ったら、思いつく修行方法があると思うけど？」

「あれですね。いいと思います」

「ドSの極み」

「みぃ……」

　ドSの極み……言い得て妙か？　ミーちゃんもヒドイ……とか言ってるわりに、期待に満ちた眼差しを向けてるよね。

「グラムさん、強くなりたいですか？」

「なりたい！」

「つらいからといって、途中でやめたり逃げ出したりしないとミーちゃんに誓えますか？」

「み～？」

「……ち、誓います」

　ん？　今の間はなに？　もし、ミーちゃんとの誓いを破ったら神罰が下りますよ？　神罰が下らなくても、烈王さんやヴェルさんどころか、クリスさんとラルくんにもチクりますからね？

「み～？」

「誓います！」

「その願い、聞き入れよう！」

「み～！」

　というわけで、自分自身に重力スキルで負荷を掛けさせる。さすがドラゴン、重力二倍ではそれほど苦にならないようだ。三倍でも耐える。四倍がいい感じだ。

「こ、これをずっと続けろと？」

「もう、弱音を吐くつもりですか？」

「ぐっ、やる！」

　とはいっても、実際にやるのは建物の外にいるときだけ。建物の中でこれをやったら床が抜ける。だから、できるだけ外にいてもらおう。

　ちなみに、俺は二倍が限界。それも身体強化を使った状態でだ。常時、自分を背負って動くなんて馬鹿だよ。誰だ、こんな訓練方法考えた奴！

「ネロさんは超野菜人にはなれそうにないですね」

「狼の飲茶で宴会だな！」

　宴会じゃなくて限界な！　人間上等！　俺はヒーローじゃないからいんだよ！

「お前ら、人のことを言ってる余裕があるのか？　一応とはいえ、勇者候補だって忘れてないよな？」

「み～」

「ゴブリンキングに止めを刺すのはお前らだからな！」

「……」

「嫌ぁぁーーー！」

　トシはその場面を想像してブルッてフリーズ。カオリンは奇声を上げトシの周りを走り回る。

　本当にこいつらで大丈夫か？

「み～？」

　さて、そろそろ本題の商業ギルドに向かおう。ヨタヨタしたグラムさんを連れ本店に移動して、外に出てまたヨタヨタと歩くグラムさんの手を引くように商業ギルドに向かう。

「孫に手を引かれて歩くおじいちゃんね」

　なんて、俺たちを見送ったクラウディアさんが毒舌を吐くが、今のグラムさんに言い返す余力さえない。

「つ、つらい……」

「み～」

　商業ギルドに着きグラムさんは外で待機。俺とミーちゃんは中に入り、受付へと向かう。

「神猫商会様からのご注文の品は届いております。こちらの札を裏の倉庫の担当者にお渡しください」

　裏に回って倉庫の前にいた男の人に札を見せると、倉庫の中から大きな荷を運び出してくれた。

　中身を確認すると炭だね。それも中途半端に炭になった感じのものだ。

「こんなのどうすんだ？　固くて、黒光りする炭が欲しいって注文はよく受けるが、こんな炭を注文されたのは初めてだ」

「ちょっと実験に使うので、これでいいんです」

「み～」

「実験ねぇ。その炭じゃ、たいした火力はでないぜ。旨い肉は焼けないぞ？」

「みっ！？　みぃ……」

　いや、焼けなくて構いませんから！　それにミーちゃん、お肉食べないでしょう！

「み～？」