456神猫 ミーちゃん、知りたい!

 家に帰ってきて、ミーちゃんはムニュムニュ姉妹とこたつでぬくぬく。


 俺はのんびりする暇もない。フォルテでやったプレゼンのことをまとめている。ニクセに渡す資料だ。


 正直、フォルテの村を回る行商は慈善事業に近い。村を回った後にニクセに寄って品を仕入れることで、利益が出ることになる。


 だとしても、領地の村々に行商人が回るようになれば、人も物もお金も回るようになる。そのおかげで村々が発展していけば、更なる商機や税収アップにも繋がるはずだ。


 物があっても売る場所がない、お金があっても買う場所がないのでは、正常な経済活動が成り立たない。経済活動が滞れば生活が苦しくなる。生活が苦しくなれば食い扶持を減らすため、出生率が減る。出生率が減れば生産率も自ずと減っていく。更に経済活動が滞るという負のスパイラルに陥る。


 そのためにもしっかりとした流通システムを構築する必要がある。今までは商人任せだったようだけど、行政がその辺りをしっかりと補っていかなければならない。そして、そのシステムが長く続くようにもしなければならない。


 以前のフォルテは王国の直下領だったこともあり、数年ごとに行政官が変わっていた。そのせいで、ちゃんとして行政が行われず、私腹を肥やすことだけを考える行政官が多かった。


 ブロッケン男爵領になったとはいえ、俺の次の代がちゃんとした行政を行うかは、次の領主の能力によって変わってしまう。それでは駄目なんだ。


 封建制度の悪いところは、優れた人物が上に立っているときは善政で、能力の劣る人物が上に立つと間違いなく悪政となることだ。


 そうならないための何かしらのシステムが必要になってくる。うちの領内だけでも封建制を廃止しようか? でも国が封建制なのにうちだけ、封建制をやめても面倒になるだけのような気がする。


 封建制をある程度維持したままで、領主の権限を分散するのがいいかな? 三権分立か? 領主権、行政権、司法権に分けるか? 更にフォルテとニクセで分けて、お互いに監査させせればいいだろう。


 おっ、なんか形が見えてきたな。これもメモに書いておこう。ニクセのリンガードさんの意見も聞きたい。


 そんなことを考えながら資料をまとめていると、家の呼び鈴が鳴る。



「ネロ様、王宮より手紙が届きました」


「王宮から?」



 手紙は二通ある。一つはレーネ様の誕生会の招待状だ。もう一つは手紙というより命令書か? 例の件の準備が整ったので明日登城するするようにとある。王様の捺印まである。逃げるなよということだろう。



「明日か? 問題ないぜ。準備はできてる」


「み~」



 ゼルガドさんにはいろいろと準備をしてもらっている。火縄銃の改良版も作製してもらっている。フリントロック式の銃だ。


 先日、バネも作ったので撃針ハンマーを引くとロックがかかるようにして、引金トリガーを引くとロックが外れ撃針が落ちて火打石が擦られて火花が散る仕組みに出来た。


 バネを作った時にはゼルガドさんが興奮して大変だった。小さい鉄の棒に溶かした金属を巻いていくだけの簡単な作業。出来上がったバネと一緒に飛び跳ねて喜んでいた。


 次の日には、目を真っ赤にして極小のバネを作ってきたのは、さすがにイカレ頭だ。馬車用のバネは大きな作業場が必要なので後日となった。


 あとは褐色木炭。商業ギルドに依頼している。褐色木炭なんていうと凄い木炭なのかと思うけど、生焼けの木炭のこと黒くなる前に取り出した炭になる。届いているはずだから取りに行こう。


 レティさんは見当たらない。グラムさんを探せば宗方姉弟と雷スキルの勉強中のようだ。絵を描いているので覗いてみる。人体図だ。脳から各部に電気が走っている様子を描いた絵のようだ。



「さっきも言いましたが、脳からの指令を送って体が動きます」


「ここからが仮定の話なのだが、ネロさんの『紫電』はその指令を雷スキルで増幅していると思われるのだよ。グラムくん」


「カオリン博士! それは俺にもできるのか!?」


「理論上は可能だよ。グラムくん」



 へぇー、そうなんだぁー。なんとなく、そうかな? くらいしか思っていなかった。



「みぃ……」


「だが、ネロのあの動きはどうなんだ?」


「そう、そこなのだよ。グラムくん」


「我々も雷スキルを持っているから検証してみたんだ。そうしたら、雷スキルで体全体を雷を纏うと少しだけ素早くなったんだ」


「ほ。本当か!?」



 へぇー、そうなんだぁー。なんとなく、そうかな? くらいしか思っていなかった。



「みぃ……」



 まあまあ、おそらくだけど俺の動きは、ミーちゃんの神雷のおかげだと思う。神雷スキルはおそらく最上級スキル。初級の雷スキルなんか目じゃないほどのスキルだ。そのくらいの差があって当然だろう。



「み~!」


「そこで、一つの疑問が浮かびました」


「ほかのスキルならどうなのかとね。知りたいかね? グラムくん」


「「知りたい!」」


「み~!」



 つい、手を挙げてしまったけど、なるほど面白い着眼点だ。


 ぜひ知りたい。


 戦術の幅が広がるかな?



「み~」


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