453神猫 ミーちゃん、ダークサイドに堕ちたネロを憐れむ。

「いらっしゃい、ネロくん。と言いたいところですけど、まさか連れて来たのが先代の影の長とは……」


「み~」


「レーネ様の代理です。全権を預かっているそうです」



 ふふふ……ミストレティシアさんが驚いている。してやったり!



「まさか、我々義賊ギルドのテリトリーに先代とはいえ、影を入れることになるなんて、感慨深いですわ」


「ふん。レーネ様のお願いでもあるが、お前さんの所の先代とはいろいろあったからね。供香そなえこうくらいしてやろうかと思ってね」


「そうですか……母も昔馴染みが来てくれ喜びましょう」



 ありゃりゃ、しんみりしちゃったね。こういう展開は予想していなかった。


 応接室に移動してお茶を頂く。今日はレティさんしか連れてきてない。グラムさんは宗方姉弟に預けて、雷スキルの勉強と訓練だ。宗方姉弟にグラムさんに雷の基礎知識を教えるように頼んである。



「それでは話しを始めましょうか。それでネロくん?」


「昨日、王妃様と話してきて出資比率は均等で、店の名前は『パティスリ プランセス レーネ』と決めてきました。以前にお話ししたとおり、神猫商会は出資金回収後はアドバイザー兼品質管理だけさせてもらいます」


「じゃあ、義賊ギルドね。材料確保のために農場を一つ買い取りました。そこの人員も確保済みです。調理場の建物と貴族向けの店舗は目途がついてるわ。一般向けの店舗は神猫商会の本店の一部を借りれるのよね?」


「問題ありません」


「み~」



 ガラスケースも冷蔵設備も完璧だ。ガラスケースの上部には氷を入れるスペースも作ってある。ガラスケースに冷蔵設備を後付けしようとしたら、目が飛び出るほどの見積額が提示されたのでやめた。


 氷はクラウディアさんに作ってもらえばいいだけだ。水さえあればただ。ただはいいよねぇ。



「王宮からは経理関係を主に扱う人材を出すよ。不正は絶対にさせないからね! あとは接客の指導を行う侍女と、当面の間の菓子作りと指導の料理人を出す。これでいいかい?」



 貴族相手の接客となると、王宮の侍女さんに指導してもらえれば問題ないだろう。将来的には一般向けの接客も貴族向けも同じにしたい。料理人も助かる。あの宮廷料理長の下で料理を学んできた料理人なら間違いない。


 その後も細々こまごまとしてことを話し合い決めていく。決めた内容は義賊ギルドの人が書き留め、後日正式な書類にしてくれることになっている。



「いつから始められる。王妃から早めにと言われていてね」


「材料と人はなんとかなりますわ。調理場も急げば二、三日中には稼働できるわよ。でも、店舗は時間がかかるわね」



 貴族向けとなると外装、内装とも凝ったものにしないと駄目だろう。



「それでは、神猫商会の店舗から先行で始めましょう。調理場が使えるようになったら、まずはいろいろと確認する時間が必要です。その後になりますので開店は一週間後。レーネ様の誕生会まで余裕があるので問題ないでしょう」


「看板は王宮で特注で作るから問題ないよ」


「では、準備ができ次第、連絡を入れますわ」



 一段落着いたところで、またお茶会を再開。



「男爵。正直、私はどうでもいいんだが、何かあればレーネ様が悲しむから忠告しておく。最近、あんたを嗅ぎ回っている連中がいるよ。注意しな」



 前に、ミストレティシアさんにも同じことを言われたな。



「北から多くの闇ギルド関係の者が流れてきているせいで、情報が掴みにくい状況なのよ。でも、間違いなく裏で糸を引いているのはロタリンギアよ」


「みぃ……」



 また、ロタリンギアなの……とミーちゃんもうんざり顔。


 以前の貴族の反乱の鎮圧と共に闇ギルドも潰しまくったので、闇ギルドを再構築しようと闇ギルドや新興のマフィアが王都に押し寄せているらしい。義賊ギルドはそれを潰しているらしいが、あまりにも多く難儀しているようだ。


 でも、だいぶ稼いでいるみたいだけどね。



「それが、義賊ギルドの稼ぎですから」


「どっちも同じ穴の狢だよ。潰し合えばいいさ」


「それを取り締まれない無能な組織に、言われる筋合いはありませんわね」



 バチバチと火花が飛ぶのが見える……ような気がする。



 その、流れ込んでいる悪党共に紛れて、ロタリンギアの間者も多く入り、ルミエールの貴族と接触をしている。その間者の一部が俺のことを探っている。



「ロタリンギアからみれば、ネロくんは殺したい人物のトップにいるから仕方ないわ。有名人はつらいわね」


「み~?」



 有名人!? それも殺したい人ナンバーワンって……なんでやねん!?



「意外とネロくんは甘いところがあるから……。いい、ネロくんはロタリンギアが画策した貴族の反乱を邪魔した挙句、せっかく手に入れた切り札の勇者を五人中二人とはいえ引き抜いたのよ。画策した奴らは腸が煮え返っているでしょうね」



 たかが、そんなことで怒るなんて、なんて心の狭い奴らだ。そんな馬鹿な奴らには俺が鉄槌を下してやろう。烈王さんが使わせたがっている星が降ってくるAFで。


 駄目だな。あんなの使ったら罪のない人まで巻き込んでしまう。危ない危ない、ダークサイドに堕ちるところだった。



「みぃ……」



 いや、ミーちゃん冗談だから! 冗談ですからね!


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