448神猫 ミーちゃん、神猫商会本店を開店させる。

 神猫商会本店の開店当日。


 今日はモフモフ軍団は全員お手伝い。イルゼさんたちは昨日の教訓を踏まえ、早朝暗い時間から準備に入っている。昨日以上に忙しくなるのは目に見えている。


 お店の前には時期外れの花の鉢植えで飾って見栄えをよくする。温室でベン爺さんが育てていた花の鉢植えたちだ。冬に入ったこの時期にこれだけの花を飾れば、必ず人目に付く。物珍しさで寄ってくる人たちは新規顧客の開拓にもなる。


 そして、店の目立つ場所にフローラ様から頂いた招き猫を飾る。みんなで二礼二拍手一礼。神猫商会の発展を願う。


 さあ、開店の時間だ! 


 店の戸を全開にして、暖簾とのぼりを設置。ルーくんとラルくん、クオンとセイランが両端にお座り。ミーちゃんとムニュムニュ姉妹専用台も設置、後から応援でテラも加わる。


 準備は万端。



「神猫商会。開店で~す|」


「み~!」



 早朝だというのに、開店前からお客さんが並んでいる。多くはハンターさんたちだ。


 まだ、朝だというのにホットワインがバカ売れ。それにあわせてじゃがバターも売れまくる。今日からはフライドポテトと、唐揚げも売り出している。揚げたてなので、寒いこの時間にはもってこいでいい売れ行きだ。


 そして聞こえてくるひそひそ話。聞こえてくる内容はクラウディアさんとコンラートさんの美男美女の店員が増えていること。クリスさんは前からいるので認知されている清楚系美人。そこにゴージャス系美人のクラウディアさんが加わったので、更に華やかになる。


 そして、イケメン……。今まで女性しかいなかった店員にイケメンが加わるとどうなるか? その答えは……女性が寄ってくる。キャーキャーと姦しい女性陣を優しい笑顔で接待。ホストか!?


 一応、俺も男なんですけどぉ……。くっ、イケメンめ! もげちまえ! 何がとは言わない。


 モフモフ軍団も頑張って接客。ミーちゃんは招き猫の横で、リアル招き猫となり前脚コイコイ発動。百発百中の成果を上げている。


 そうこうしていると、立派な馬車と荷馬車が……ニーアさんですね。人混みがモーゼの十戒の如く割れて道が出来る。あなたは聖人ですか? 権力者、怖いわぁ。



「神猫商会本店開店、おめでとうございます。王妃様より祝いの品をお届けにあがりました」


「み~」



 ミーちゃん、気にしなくていいのに~と言いつつ、ニコニコ笑顔がとまらない。


 荷馬車から花束がいっぱい入った籠が棚とともに降ろされ店の両脇に飾り立てられる。



「綺麗ですね。本当に頂いても?」


「神猫商会様の本店開店に花を添えたいと仰せでした。ご自由にお使いください」


 言質は頂いた。なので商品を買ってくれたお客様に、先着で一本持ち帰っていいですよと声を掛ける。驚きの声が上がる。この時期に花を買ったら、それこそ目が飛び出るような値段になる。


 ちょうどそんな時にパミルさん率いるハンターギルドのお姉様方が来店。テラがミーちゃんの横に下され、ミーちゃんがペロペロしようかと思った瞬間、ミーちゃんの目の前からテラが消える!?



「みっ!?」



 ミーちゃん、テラが神隠しにあって固まっている。そして、神隠しにあったテラはニーアさんにムニュムニュ、チュッチュッされている。ミーちゃん、ニーアさんの早業に気付いていない様子。


 パミルさんとニーアさんは目礼で挨拶。ニーアさんたちにはお礼にお土産を持たせるので、それまでモフモフタイム。



「ちょっと、ネロくん。あの美男美女は誰よ」


「本店で人が足りないから、ヴィルヘルム支店から呼びました」


「ネロくん。あなた立派な実業家になったわね……」



 なぜか、遠い目をしながら、固まったままのミーちゃんとムニュムニュ姉妹をモフるパミルさん。


 出来上がったお土産をお皿に載せる。いつものお団子に新作のくるみ団子とマロングラッセと栗きんとんも加える。正直、栗の二種類は加えるか悩んだ。だけど美味しいものだから食べてもらいたいので加えた。


 マロングラッセを見たニーアさん、ぎょっとした目でマロングラッセを見てから、本気かこいつ? という目で見てくる。


 別の小さいお皿にマロングラッセと栗きんとんを載せ、ニーアさんに渡す。まあ、食てみなさい。



「み~」



 フリーズから立ち直ったミーちゃんも、まあ、食べてみ~! とニーアさんを促す。


 恐る恐る、食べるニーアさん。最初に手を付けたのは栗きんとん。こちらは見た目では栗とわからないからね。食べてびっくり、目が点状態。温かいお茶を渡すと栗きんとんの余韻を味わいながらゆっくりと飲む。


 そして、マロングラッセを口に運び、蒸留酒の香りに驚くニーアさん。口の中に入れれば至福の表情。栗自体は安いけど水飴の甘さと、蒸留酒の香りで高級品に変わる。


 どちらもどこに出しても恥ずかしくない逸品だと自負できる。


 ニーアさんは納得して帰っていった。


 パミルさんたちも大量にご購入いただいた。半額とはいえ、そんなに買って食べきれるのだろうか? 温め直せば食べれるけど、明日の分は明日買ってほしいなぁ。


 その後もお客は引っ切りなし。何か買えばお花がもらえるという話が広がったようで、奥様方が買いに来てくれ更に大忙し。その上、コンラートさんが接客するので、おそらく本来はお団子一本ぐらいしか買う気がなかったであろう奥様方が爆買いしてくれる。恐るべし、イケメン効果。


 お昼になればなったで、じゃがバターが更に売れる。正直、蒸かしたジャガイモにバターのっけただけなのに。売ってる本人が言うのもなんだけど……。


 唐揚げと一緒に買っていく人が多いので、お昼ご飯代わりに食べるのかもしれない。かく言う俺たちもローテーションでそれを食べている。


 カヤちゃんは別ね。お昼休みついでに、モフモフみんなのお昼ご飯を頼んでいる。


 食べ終わったみんなは丸くなってお昼寝。カヤちゃんもモフモフに埋もれてお昼寝。


 微笑ましい反面、すごく羨ましい……。



「すぴぃー」




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