441神猫 ミーちゃん、正常な行政運営を行います。

 今日はフォルテで商隊の共同出資者へのプレゼンの日だ。


 行きたくないと駄々をこねる宗方姉弟と、ムニュムニュ姉妹を連れたレティさんを連れて来た。


 案の定、ローザリンデさんに宗方姉弟が捕まり連行されていく。



「嫌だ~!」


「離せ、鬼畜ババぁ!」


「若いから~元気があり余ってて羨ましいわぁ」


「み~」



 南無……頑張れ。



 役所に向かいグレンハルトさんと最後の打ち合わせをする。


 だが、する前にもう一つやることがある。コルネにレティさんをぶつけてみる。



「グレンハルト殿も猫を飼われているのか? なかなか品のいい美猫だな」


「にゃ~ん」



 コルネの奴、普通にレティさんに挨拶している……なぜだ!?



「レティ殿も可愛らしい子猫をお連れのようだが?」


「ヒルデンブルグの大公殿に養子に出す姉妹を、躾が終わるまで預かっているのだ。可愛いだろう?」



 グレンハルトさんとコルネがムニュムニュ姉妹をなでなで、ペロペロ。普通に接しているね……。


 ミーちゃん、私も~とばかりにムニュムニュ姉妹の所に行くと、コルネに後ろ脚で足蹴にされる。


 ガーン! という魔界の底にでも落とされたかという悲しい表情で、フラフラしながら俺の元に戻ってくる。



「みぃ……」



 はいはい、ミーちゃんは悪くないですよ。コルネとは相性が悪いんだしょうがないよ。俺も触ることすらできないでいるからね。



「みぃ……」



 仲良くしたいのに……。何度もその言葉を聞くけど、俺にはどうしようもない。過去にコルネに何があったのか知らないけど、もしかすると神様が嫌いなんじゃないだろうか? だから神猫であるミーちゃんとその相棒である俺のことが嫌いなのかも。時が解決してくれればいいけどね。


 ミーちゃんは足元にいる白狼のモフモフに潜り込んでふて寝を始めた。俺は今度こそグレンハルトさんと最終打ち合わせ。コルネとムニュムニュ姉妹ソファでレティさんにチュッチュッされている。


 グレンハルトさんと打ち合わせが終わる頃に、商業ギルドから迎えがやって来た。


 レティさんは孤児院の様子を見に行くそうなのでムニュムニュ姉妹と、ミーちゃんは俺と一緒に商業ギルドに行く。白狼はグレンハルトさんに付いて来るので、残るはコルネのみ。


 そんなコルネは我関せずとソファで欠伸をして丸くなっている。



「気にすることはない。私がいないときは役所の職員の誰かが面倒をみている」



 なるほどコルネは愛されているね。


 商業ギルドの用意した馬車に乗り商業ギルドへ。フォルテは以前、魔王との最前線の砦があった場所だけあって、町の規模がほかの町に比べてとても大きい。人口もその分多く、それに比例して貧富の差も大きくなる


 その貧富の差を大きくしていた悪代官や闇ギルドを排除したことにより、やっと健全な経済が回り始めてきたところだ。経済を回して雇用を促進して、貧富の差を少しでも縮めていくのが、フォルテの目下の課題でもある。


 商業ギルドに着き会議室に案内される。既に人は集まっているようだ。


 シェーラギルド長が壇上に立ち開会の挨拶を始めた。



「……というわけで、皆様もご存じだとは思いますが。こちらが代官のグレンハルト様。そしてこちらが初めての方もいらっしゃることとは思いますが、フォルテのご領主様であられるブロッケン男爵様です」



 グレンハルトさんのときはなにも反応がなかったのに、俺が紹介されたとたん、ガヤガヤと騒ぎだす。若いから驚いているのかな?



「み~?」



 グレンハルトさんと目で意思の疎通を行い。俺が壇上に上がる。



「ご紹介に預かりました私がこの地の領主となりましたネロ・フォン・ウント・ツー・ブロッケンと言います。最初に言っておきますが、今までのように賄賂や接待などで甘い汁を吸おうなどと思っているならすぐにお帰りください。そんなクズに用はありません」


「み~」


「この町はあまりにも腐敗し穢れきった町です。私が領主となったからにはこの町をまっとうな町に戻し、更に発展させます。その邪魔をする者は闇ギルドであろうと、大店の商人であろうと潰します」


「み~」


「我々の力が必要ないと言うのか? 男爵とはいえガキだな。フンッ」


「もうこのフォルテに必要悪はいりません。これからは、正常な行政運営が行われます。そしてそれに反発する者は淘汰されて行くでしょう。その正常な行政運営に賛同する方だけ残ってください。賛同できない方はお帰りくださって結構です」


「み~!」


「ブ、ブロッケン男爵様!?」



 シェーラギルド長が慌てふためいている中、全体の半分の人が出て行った。俺を睨んでいく者、あからさまに敵意を見せる者までいた。舐められたものだね。


 今出て行った者たちは、自らまともに商売をする気がないと言っているようなものだ。こいつらは敵だ。潰すべき相手だ。容赦する気はない。叩けば多くの埃も出てくることだろう。


 なんとか鑑定で調べられた名前を紙に書き写す。半分くらいは書けた。残りはシェーラギルド長に問いただそう。奴らを呼んだのはシェーラギルド長だ。奴らの内情を知らないわけがないからね。ならば脅してでも責任の一端は持ってもらおう。



「み~」


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