440神猫 ミーちゃん、専用馬車に乗る。

 さて、今日は豆腐を作ってみよう。大豆はすでに前の日から水に漬けてある。


 ミーちゃんのミネラルウォーターを加えながら大豆をミンサーで砕く。出来上がったものを泡が出ないように、沸騰させないギリギリで少し煮る。そこまで出来れば布でこすと豆乳の出来上がり。残ったものがおからになる。これはこれで使い道があるので取っておく。


 ここからが運命の分かれ道。豆乳を八十度くらいに温めて火を弱火にする、豆乳の一パーセントのにがりを投入。三回かき混ぜた後、逆回転で流れを止める。


 この時点で固まっていかなければ失敗。上手くいけば個体と液体に分離を始める。いい感じだ。


 用意していた木箱に目の粗い布を被せてそこに個体を掬い入れていく。この個体が寄せ豆腐だね。布で包み蓋をして重しを載せて水を切った後、水の中にいれれば木綿豆腐の出来上がり。なかなか、いい出来だと思う。


 量にして普通サイズの豆腐六個分になった。一個を四角く八等分に切り分け、串に刺して味噌を塗って炙る。いい匂いが漂いはじめる。みそ田楽だ。


 みそ田楽作りはエフさんに任せて、おからで卯の花作り。ニンジン、シイタケに似たキノコ、ねぎ、お肉小間切れ少々。本当はちくわがあればベスト。ミンサーがあるので今度作ろう。


 油で炒めて醤油、水飴で味を調える。お酒がないのが残念。調理は簡単でこれで出来上がり。まずまずの出来だね。ホカホカご飯にのせて食べたい。


 食卓に並べ、寄せ豆腐も各自に小分けにしてしておく。少ないから少しずつ食べましょう。


 じゃあ、頂きます。


 寄せ豆腐にミーちゃん、珍しく興味を示している。食べてみる?



「み~」



 ミーちゃんのお皿に寄せ豆腐を載せてあげれば、ハムハムと食べ始める。



「み~」



 美味しいよ~といい笑顔で答えてくれた。寄せ豆腐は大豆の味が濃厚でやわらかくて美味しいから、ミーちゃんも気に入ってくれたようだ。



「こ、これはにゃんと高貴な味! ネロ、これ美味しいにゃ~」


「にゃ!」



 確かに昔は作るのが大変だったから、高貴な身分の人かお寺での精進料理としてしか食べられなかったという。ミンサーがあるから簡単に作れるけど、昔は石臼で作っていたから大変だっただろうね。


 絹ごし豆腐が作れれば、黒蜜ときな粉などかけてデザートとしてもいけるはず。だけど、絹ごし豆腐は作ったことがないんだよねぇ。



「こいつは酒にも合うな」



 ルーさんとベン爺さんが田楽と卯の花でエールを飲んでいる。ほかのみんなも概ね好評のようだ。


 これを生産して神猫商会の商品として売り出すつもりだ。せっかくだからちくわやかまぼこなども作りたい。なので専門に作る人も育成しないとね。そこら辺はカティアさんと相談だな。



「これを神猫商会で売ろうと思いますがどうでしょう?」


「食べやすいので、私は売れると思います」


「多く作れるなら主婦層も狙えるのではないでしょうか」



 クリスさんもイルゼさんも賛成のようだ。なんといっても原価が安い。いくらでも手に入るのもいい。これは、ウハウハの予感。



「み~!」



 会頭も納得の商品だ。



 次の日の昼前に念願の馬車が届いた。ブロッケン男爵の紋章付きの、黒塗りの立派な二頭引きの馬車だ。格好がいいね! 紋章に真ん中に描かれているミーちゃんもなかなかの風格。



「み~!」



 昼食後に試運転と称して走らせてみることにした。みんな乗りたがったけど今回はパス。乗るのは俺とミーちゃん、それにゼルガドさんだ。御者はベン爺さんとスキニーさん。


 なぜ、ゼルガドさんかというと、馬車を乗り心地よくなるように改造してもらうからだ。


 さすがに貴族の馬車なのでそこら辺の馬車に比べたら乗り心地はいい。いいのだが、サスペンションらしきものは付いているけど性能がよくないので、段差がある場所で座ていると飛び上がってしまう。車輪も木製で外側を金属で補強しているだけなのでクッション性は皆無。


 王都から外に出て走らせての確認もする。改造する所をゼルガドさんと馬車の中で相談し詰めていく。



「でかい板バネを車体の下に付けろだぁ~。面白れぇじゃねか!」


「み~!」


「今付いているものでは衝撃を吸収しきれてません。スプリングが作れればいいのですが、ないものねだりしてもしょうがありませんから」


「よう、ネロ。スプリングってなんだ?」



 この世界でまだスプリングってまだ見てないんだよねぇ。



「鉄の棒をこんな風にグルグルと巻いたものです」


「そんなもの使いものになるのか?」


「いろいろ応用できるので便利だと思いますよ。固い金属より粘りのある金属を熱っして、元になる円柱を回して巻きつければ出来ます」


「粘りのある金属か……今度作ってみるか」



 その後も車輪にクッション性のあるものを巻いてほしいとか、窓にガラスを入れてほしいとか、ベン爺さんとスキニーさんの意見も聞きゼルガドさんに丸投げだ。



「み~!」


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