439神猫 ミーちゃん、頑張れ、ホトトギス。
大人たち用にも毛布を置いていくけど、まだまだ余っている。どうしよう?
「妖精族の所に持っていけばいいんじゃねぇか?」
「そうですね。彼らも喜びましょう」
ということなので、牙王さんに案内役を借りてパトさんの村に向かった。
「ミーちゃん、ネロさん、よく来たワン。商隊の護衛の人選は終わったワン。もうすぐ出発するんだワン」
「み~」
それはよかったわん! 待ってるわん!
「今日はどうしたワン?」
首を傾げるつぶらな瞳のパトさんは可愛い。ミーちゃん、たまらずパトさんにダイブ! パトさんのお耳をハムハムし始める。
「み~」
「くすぐったいんだワン」
ミーちゃんが羨ましい……ではなくて、毛布を買いすぎたので余っているのでいりませんか? と言うと、
「もう、めっきり寒くなってきてるワン。冬支度には毛布は最高だワン」
なので、いつかの薬草が納られていた倉庫に出すことに。この倉庫は今は妖精族の図書館になっている。壁一面に本棚が設置され、大人から子どもまで自由に本が読めるようになっている。
今もおこちゃまたちが絵本を床に座って読んでいる。ちょうどいいので毛布を敷いてあげると、みんな寝転んで本を読み始めた。
残りは空いている場所に出す。出したのだが、やはりすごい量だ……。おこちゃまたちたちが毛布にダイブして泳いでいる……。
「すごい量なんだワン……本当にもらっていいのかワン?」
「ほかの妖精族にも分けてあげてください」
「そうするんだワン!」
帰り際に魚を置いて帰った。コボルト族の女性陣が大喜びで魚を捌いていた。冬用に干物にするそうだ。内臓はその場でソテーされていたけど。周りにいたおこちゃまたちの口元が涎であふれていて、洪水が起こるのではと思うほどだったよ。
「み~」
牙王さんにも帰りの挨拶をして、ヴィルヘルムに飛ぶ。
「温かい飲み物か?」
「ヴィルヘルムは温かいから必要ないんじゃないかしら?」
そうなんだよね。実際、街中を歩いて人たちは半袖姿の人がほとんどだ。朝もそれほど気温は下がらないらしい。なので、いまだに夕方に行っている冷えたエール売りは大好評。ホットワインを売りの出しても飲む人は少ないだろう。
「だが、旨いな。俺は好みだ」
「女性受けしそうですわね。試しに一度売ってみますわ」
あとはじゃがバターも無理そうとアレックスさんに言われた。ここでは、唐揚げ、ポテトフライを作っているのでじゃがバターは売れないという意見だ。
代わりに、くるみ団子とマロングラッセと栗きんとんは売れるとクラウディアさんと、リーザさん、ロッテの女性陣が目を輝かせて太鼓判を押してくれた。
なので作り方を伝授。材料はヴィルヘルムでは手に入らないので、こちらで支給する。作り方は簡単なのですぐに覚えてくれた。
帰りに自家製
家に戻ると玄関近くでうずくまるグラムさんを発見。ルーくんとラルくん、クオンとセイランがグラムさんの周りを走り回っている。
「ミーさま、ネロ。なぜ、俺は勝てないんだ……?」
烈王さんの予想どおり、お姉さんに勝てなかったようだね。
「スキル一つ身につけたくらいで、勝てると思っているグラムさんが浅はかなのでは?」
「ぐっは……」
「みぃ……」
「お姉さんのしごきに耐え切れず逃げ出したあげく、神人と喧嘩して負け、迷宮の下層で食っちゃ寝してたグラムさんが、日々強さへの研鑽を重ねていたお姉さんに勝てると思っていたんですか?」
「ぐっはっ! ぐっは……」
見えないけど血の涙と血を吐くグラムさん。ラルくんがグラムさん背中に乗って頭をポフポフ叩く。ルーくんは後ろ脚でケリケリ。クオンとセイランはグラムさんの前で首を傾げている。君たち、グラムさんが可哀そうだからやめなさい。と、一番貶している俺が言えないか。
「根本的な地力の差なんでしょうね。雷スキルは強力ですけど、それを上回る力の差があるんでしょう」
「み~」
「では、一生勝てないのか……」
どうなんだろうね? 雷スキルは強力だけどまだまだ未熟。まあ、今のままでは無理なのは確かだ。どう思う? ミーちゃん。
「み~」
「勝てぬなら勝つまで頑張れどらごんちゃん? ってなんですか? ミー様」
俺もわからん? 泣かぬなら殺してしまえホトトギスじゃないの?
「みっ!? み~」
殺しちゃだめ!? 何事も努力が一番なの~だそうだ。
「ど、努力ですか……」
グラムさんって努力とか苦手そうだもんね。まあ、そういうところがお姉さんに勝てない原因だと思うんだけどね。
「取りあえずは、スキルの熟練度上げなんかは手伝えるから、地道に訓練だろうね。宗方姉弟と一緒にやればいい」
「……よろしく頼む」
「み~」
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