437神猫 ミーちゃん、恨めしそうにネロを見る。

 トボトボとクオンとセイランがこたつの中に入っていき、顔だけ出す。恨めしそうにで俺を見上げている。だから、そこまでか!?


 ルーくんとラルくんはすぐに切り替えて外に遊びに行ってしまった。


 そういえば、おチビちゃん姉妹がどこにもいない。こたつの中を覗くと寄り添って寝ている。ミーちゃんもその横で丸くなる。そして、レティさんそこでなにをしているんでしょうか?



「決まっているだろ。おチビちゃんたちが寂しくないように添い寝しているんだ!」



 そ。そうですか……。レティさんがこたつの中に無理くり入っているので、こたつの中はぎゅうぎゅうだ……いいんだけどね。


 こたつは神様仕様だけあって、遠赤外線の暖房付。こたつから出たくなくて、朝まで寝てしまうのもわかる気がしないでもない。朝、覗いたらレティさんがいたりして?


 みんなが戻ってきて夕食。腸詰ソーセージをお披露目するとみんなの目が輝く。ルミエールでは腸詰ソーセージは超高級品だ。ヴィルヘルムでもお高めの値段だ。やはり、香辛料が高いからね。


 ルーさん、ゼルガドさん、珍しくベン爺さんもエールを飲んで、腸詰ソーセージを堪能している。



「旨いにゃ~。旨いにゃ……」


「み~?」



 ペロが泣きながら食べてる横でルーくんたちが奪い合って食べ、セラの教育的指導が入る。しかし、俺は知っている。セラは自分の分をちゃっかり確保していることに。



「姉さん、これは革命的な美味しさだよ!」


「Show-エッセンに負けない美味しさにビックリ!」



 それは最高の褒め言葉だね。作ったかいがあるってもんだ。


 でも、ミーちゃんとおチビちゃん姉妹は猫缶をハムハム。全く腸詰ソーセージに興味はないようだ。まあ、ミーちゃんは脂っこいもの苦手だからね。


 あれだけ作った腸詰ソーセージがなくなった……。アレックスさんたちの分を、ミーちゃんバッグにしまっておいて正解だった。出していたら食べられていたことだろう。腹ペコ魔人……いや、今回は全員だな。じゃあ、文句は言えない。喜んでもらえてなによりだ。


 夕食後、イルゼさんから相談を受ける。季節は移り変わり冬。冷たい飲み物やアイスの売れ行きがガタ落ちなんだそうだ。お団子は問題なく売れているが、そろそろ商品を冬用に入れ替えるべきだな。


 ヴィルヘルムは暖かい地方なので、たいして変える必要はないが、ルミエールでは温かいものが必要だろう。


 こうなることは予想済み。ちゃんと考えてある。露天街に行ったのは、そのための買い物をするためでもあったのだ。



「み~」



 調理場でイルゼさん、エフさんを交えての新商品開発会議~! ドンドン、パフパフー!


 まずは、フローズンに変わるホットドリンクから。


 一つ目はハチミツ生姜湯。作り方は簡単。生姜をおろして、ハチミツとお湯で割るだけ。体が芯から温まる飲み物だ。



「美味しいですね。女性にうけそうです」



 二つ目はヴィルヘルムから大量に買っておいたレモン。ハチミツレモンホットだ。ビタミンCで疲れも取れる。



「これは飲みやすいので、万人向けですね」



 三つ目はおしるこ! 本当は甘酒がいいのだけれど、宗方姉弟がお酒を造るまではお預け。その代わりにおしるこだ。冷蔵庫から餡子を出してお湯で溶いて塩をちょこっと。


 ん? なにか強い視線を感じる。振り返ればイルゼさんに抱っこされたミーちゃんが……。ミーちゃん、いつからいました?



「み~!」



 いいお返事で答えられても困るのですけど……。


 お餅を焼いておしるこの中に投入。出来上がり。


 期待に満ちた目で見られているので、冷ましてミーちゃんのお皿に入れてあげる。イルゼさんとエフさんはお椀に入れて渡した。



「美味しいですけど、完全に女性向きですね」



 そうかなぁ? 俺は好きだよ?


 ミーちゃん、テシテシ俺を叩いています。どうやら、気に入らないようです……。もっと濃厚なのをよこせと? これは神猫屋のメニュー会議ですからね!


 それから、ミーちゃん気に入らないってわりに、エフさんからなにおかわりもらってるんですか!


 そんなミーちゃんはほっといて、それでは男性向けのホットドリンクを作りましょうか。


 それはホットワイン! 手持ちの香辛料で使えるのは胡椒、カルダモン、バニラビーンズ。


 大人の胡椒、ピリッと香るカルダモン、甘い香りのバニラビーンズ。



「こ、香辛料ですか……」



 入れるといってもほんの少しですよ?



「胡椒入りはなんとも言えない、癖になる味だね」


「カルダモンは好き嫌いが分かれそうですね。バニラビーンズは女性にも受け入れられそうです。



 飲み物はこんなところでしょうか? どうです?



「はい、これなら喜ばれると思います。作るのも簡単ですし」



 それはよかった。じゃあ、次は食べ物に移りましょうか。


 その前に、ミーちゃん! いつまでおしるこの残り舐めているんですか!



「みっ!?」



 もう今日は餡子お預けね!



「み、みぃ……」



 悲しそうにトボトボと歩き、時折振り返り恨めしそうに俺を見る姿……既視感デジャヴか!?



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