435神猫 ミーちゃん、出資者を募集しています。
「義賊ギルドのやり方にどうこう言うつもりはありませんが、前神官長は神罰が下ったそうです。触らぬ神に祟りなしと言います。お気を付けを」
「み~」
「……」
俺は澄まし顔でお茶を飲むのに対して、青くなるミストレティシアさん。
「ここだけの話ですが、水飴の瓶に貼られた紙に描かれた絵は、フローラ様自ら考えたものらしいですよ。神官長が神託を受けたそうです。神託が描かれた紙は教会の至宝として保管されているそうです」
「み~」
ますます、青くなるミストレティシアさん。
「教会からは手を引いたほうがいいわね……」
「まあ、お金儲けの術なんて、探せばどこにでも落ちてますよ」
「み~」
「あら、じゃあ拾ってきてくださる?」
よし、乗ってきたな。
「考えが変わりまして、前に言っていたプリンの販売をしようかと思いまして、出資者を募っているところです」
「神猫商会が主導でやるのかしら?」
「いえ、神猫商会は出資するだけ。あくまでも、ほかの出資者がメインで行ってもらいます」
「ペロとセラにゃんも出資するにゃ!」
「ペロちゃんも出資するの?」
「プリン食べ放題にゃ!」
「み~」
食べ放題じゃないからね! あくまでもオーナー権限として品質管理として味見するだけだからね! ミーちゃんもいいよ~じゃありません! ペロとセラが本気を出したらその日の商品がなくなる。間違いない。
「その出資者に私も加われと?」
「前にやりたい言っていたので声を掛けました。もちろん、断っていただいても構いません。出資金にはさほど困っていないので」
「み~」
「ネロくん、なにか含んだ言い方ね。ネタをバラしてくれるのかしら?」
「こう見えて、ペロは王女様であらせられるレーネ様と非常~に懇意の仲でして、今回プリンのお店を開きたいという話をしたところ、レーネ様も出資していただけることになりました」
「後ろに王家がつく……」
「み~」
そう、王家御用達……ではないけれど、王家を醒めた目で見ている町の人でさえもレーネ様は別格で人気がある。そのレーネ様のお店となれば話題を呼ばないわけがない。
そのことに気付かないミストレティシアさんではない。今、頭の中で一生懸命にそろばんを弾いていることだろう。
「なるほどね。これは乗らない手はないわね。それで、出資者の役割はどうするの? 第三者を雇うつもりかしら?」
「そうですねぇ。出資金は豊富にあるので長期的な構想を立てたいと思っています」
「み~」
ネックになるのは材料。これをどうにかしないとどうしようもない。なので、専属の農場を作ってしまおうということを説明する。
「専属の農場……そこまで需要があるかしら?」
「卵は栄養価が高いうえ、いろいろな料理に使えます。牛乳も同じで加工すればチーズにもなり、生クリームにもなり、今後の新製品に役に立ちます。正直、拡張していかないと足りなくなるとみています」
「その長期的構想を聞かせてもらえるかしら?」
最初は二店舗を出す。貴族向けの高級店と一般向けのちょとした高級店。一般向けのお店は神猫商会の本店の空いている場所を使おうと思っている。
おそらく、レーネ様のネームバリューもあり、すぐに噂は広がりプリンも認知される。売れないわけがない。
問題は材料。専属の農場が軌道に乗るまでは、ほかの農場から仕入れなけならない。余裕があるなら二号店を出す。王都の人口を考えれば、貴族向けの店は三店舗、一般向けのお店は五店舗は出せるとみている。喫茶店風の店も出せば更に数店舗は出せるだろう。
「そこまで自信があるということね」
そこで、シュークリームをミストレティシアさんの前に出す。
「シュークリームにゃ! ペロにも頂戴にゃ!」
ペロが手をクリームまみれにして食べる。レティさんも物欲しそうに見てくるので出してあげる。ミストレティシアさんは上品に食べ始め、目を大きく開き驚きの表情。
「まだ、秘密ですが、このシュークリームをレーネ様の誕生会で貴族に振る舞う予定です。少し形は変えますが」
「これも一緒に売るわけね……」
「体制さえ整えば、ほかの品も商品に加えていきます」
「料理人も多く必要になるわね」
ミストレティシアさんは各店舗にパティシエを置いて作ると考えているようだけど、俺の考えは違う。別の場所で製造して店舗に送る形をとるつもりだ。そうすれば、売るスペースさえあればお店を出せる。それに効率的だ。
「作る場所と売る場所が別……考えつかなかったわ。それなら店舗になる場所も探しやすいし、店舗が増えても製造場所を拡張するだけで済むのね。確かに効率的だわ」
だんだん、乗り気になってきたな。ミストレティシアさんの目がレトに変わってきた。しかし、釘は刺しておかないとね。
「この事業での収益の配分は出資金での按分とします。神猫商会とレーネ様の配当金は、全て医学の発展に寄与されます。そのため、会計と監査は王宮から人を出してもらうことになっています。義賊ギルドも弱者救済を掲げているのですから、医学の発展は義賊ギルドの理念にも沿っていると思いますがどうですか?」
「み~?」
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