431神猫 ミーちゃん、忙しいのでさらばなのです~。

 お昼を食べた後、アレックスさんとお出かけ。ミーちゃんはお店で看板娘としてお手伝い。宗方姉弟は街中散策に出かけた。



「あら、アレックスさん。今日は早いわね」


「今日は奥さんにお願いがあって来ました」


「あら珍しい。アレックスさんの頼みなら何でも聞いちゃうわ」



 アレックスさんが俺を神猫商会の副会頭と紹介してくれたので、後は俺が説明する。



「自分で作るつもりかい? うちから仕入れるじゃ駄目なのかい?」


「うちの商会で扱うならそうしますが、個人的に楽しむために作るので作り方を知りたいんです」


「個人的にねぇ。まあいいけどうちの秘伝は教えないよ。教えるのは一般的な作り方だけだよ?」


「構いません。よろしくお願いします!」



 アレックスさんは奥さんにお礼を言ってから帰っていき、俺は店の作業場に案内される。



「なんだこいつは?」


「アレックスさんの紹介でね、腸詰ソーセージの作り方を教えてくれってさ」


「ネロといいます。ご教示、お願いします」


「お、おう」



 腸詰ソーセージの作り方を教えてもらう。用意したのはお肉、ケーシングと呼ばれる塩漬けの羊腸、塩、砂糖、胡椒、セージ、ナツメグ。


 まじかぁ、セージとナツメグを見つけてしまった……。


 セージはそれほど驚かない。市場でハーブ類が売っているのを見かけた。パセリとかローズマリーなんかね。


 でも、ナツメグは初めてだ。正直、これがあれば腸詰ソーセージよりハンバーグを作りたい。何度か作っているけど、なんか一味足りなかったんだよね。ナツメグはとりすぎると中毒を起こすけど、ハンバーグには欠かせない材料だ。


 おっと、ご主人が作り始めた。なになにお肉はよく冷やす? これがポイントなの? 包丁で小間切れからミンチにする間も何度か氷水で冷やしていた。材料を混ぜる時も氷水で冷やしながら混ぜている。なるほど、重要らしい。


 塩抜きしたした羊腸に材料を詰めていき、適度な長さでねじる。このねじりもコツがあり教えてもらった。慣れれば問題ないだろう。


 ここまでくれば最終段階。火で熱して消毒した針を使って慎重に空気抜きをする。


 最後は茹でる工程。沸騰させすぎないお湯にいれて茹でる。時間にして五分くらいで一つ出して半分に切って火がとおっているか確認。問題なければ完成だ。


 材料は自分で試行錯誤しろと言われた。それが各家の味であり、店の秘伝なのだそうだ。


 ご主人、ついでにハムの作り方も教えてくれた。くれたのだが、ほとんど覚えていない。


 なぜか? それは予想もしなかったものを見つけたからだ。


 なぜ、ここにある? これは食品だったのか? そういえば色がよくなるとかなんとか言っていたような……。


 どこで売っているか聞いたら、薬師ギルドで扱っているらしい。俺の鑑定では硝酸カリウムと出ているが、ご主人は発色剤と呼んでいる。


 そう、火薬の材料、硝石だ!


 ご主人にオーク肉を渡し、お礼を言って支店に帰る。



「どうした? ネロ」


「すみません。王宮に行って来ます!」


「み、み~!」



 飛びついてきたミーちゃんをキャッチして、馬に乗り王宮に急ぐ。急用なので特使の手形を出して、大公様に取り次いでもらう。



「どうした、慌てて? ネロくんらしくないのう」


「慌てます! 今、慌てずしていつ慌てるんですか!」


「う、うむ。して、なにがあった?」


「み~?」


「偽勇者の武器の知識にあった火薬の材料が見つかりました!」


「まことか!?」


「み~!」



 まこともなにも、すぐ近くにあったなんて不覚……。


 大公様に今日のことを話して聞かせる。



「そんなものを食べていたと申すか……」


「みぃ……」



 いや、今考えるところはそこじゃないですからね! ミーちゃん、ハム食べないでしょう!


 俺のポンコツの頭に封印した、厨二部分から記憶を引っ張り出す。



「定かではありませんが、確か、木炭:硫黄:硝石の比率は十五:十:七十五だったと思います。あとは実験あるのみです!」


「うむ。すぐにやらせよう」


「み~」



 執事さんがメモを取っているので、ついでにコーニングについても説明する。水でもいいが、蒸留酒でやったほうがいいらしいとも伝えておく。あとはさっきも言ったが実験あるのみ。くれぐれも火気には注意するように言っておく。静電気もヤバいので常時アースをとる方法も教えた。



「じゃあ、帰ります!」


「ゆっくりしていかんのか?」


「ルミエールにも同じことを伝えに行きます。そうそう、白狼の養子の件ですが、養子ではなく大公様の身近におく護衛を出してくれるそうです。代わりに、ミーちゃんの妹たちを王宮に入れますので、しばしお待ちください」


「み~」


「そ、そうか、それは楽しみ。待っておる」



 大公様付の侍女さんたちから歓声が上がる。本当に可愛い姉妹だから、楽しみに待っているといい。


 では、さらば!



「み~」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る