432神猫 ミーちゃん、時は止められません……。
「なんだネロ、帰るのか?」
「はい、急ぐので帰ります。今度来るときは
「ああ、期待している」
「み~」
ロッテとダミアンと話しをしていた宗方姉弟を引っ張り家に戻る。
ペロたちもレティさんもいないようなので、嫌がる宗方姉弟とうちのモフモフ軍団を連れ王宮に向かう。今回は急ぎなのでルーカスさんの小言はスルー。
「珍しい組合せね。どうしたの?」
「以前、この二人が渡した武器の知識に追加があります」
「いい話のようで、あまり嬉しくない話ね……」
「みぃ……」
宗方姉弟は王妃様に挨拶した後、モフモフ軍団とレーネ様の所に退避していった。そんなに苦手か!?
大公様の所で話したことを話す。追加で硝石は薬学機関でも手に入る可能性もあると伝える。
「パトリック所長をお呼びして」
ニーアさんの指示で侍女さんが出ていく。しばらくするとパトリック所長とヒルデさんがやってきた。
「至急のお呼びだとか、何用ですかな?」
一度、俺をチラ見してから、いつもの権力に対して横柄な態度で話をする。
「ネロくん、説明を」
「承知しました。実は至急に発色剤が必要になりまして。聞けば発色剤は薬師ギルドで扱っている品だとか。それなら薬学機関でも取り扱っていないかと思いまして、王妃様にご相談した次第です」
「発色剤?」
ヒルデさんがパトリック所長に目配せ、
「所長に代わり質問させていただきます。発色剤とは食品加工に使われる発色剤で間違いないでしょうか?」
俺が頷く。
「そうであれば当方でも取り扱いしています。如何ほど必要なのでしょうか?」
「手に入るだけ全て、できるだけ大量に」
「何に使う気だ? ネロ」
パトリック所長が俺を睨んでくる。どう考えても怪しいと思うのは当たり前か……。だが、どう答える。これは難しいそ。
「新しい武器の開発に使います」
言っちゃった。
「貴様。それがどういうことかわかって言ってるんだろうな!」
怒り心頭のパトリック所長。射殺さんというばかりの視線を向けてくる。
「人の命を守る立場にいるパトリック所長の言いたいことはわかります」
「わかったような口を利くな! 小僧!」
「ですが、この新しい武器はロタリンギアも開発しようとしています。彼の国が開発を進める以上、我々も開発しなければなりません」
「それが薬学機関とどう関係がある! 貴様らだけでやればいい!」
「みぃ……」
いやぁーそう言うと思ったけど、そうもいかないのよ。悲しいけどこれ戦争なのよね。
「パトリック所長。もし、未だに見つかったことのない、新しい毒が発見されたらどうします?」
「研究するに決まっているだろう!」
「毒も兵器に転用できますよね?」
「なればこそ、我々が研究して解毒剤を作らねばならん!」
「それと同じです。相手が兵器を開発した以上、こちらもその兵器を研究するため開発しなければなりません。もちろん抑止力という考えのほうが大きいですが、それを使われた時にどう対処するかも考えねばならないのです。その中には怪我の治療も含まれます」
「くっ……それは正当化するための詭弁ではないか!」
「詭弁? 違います。今回、開発されようとしているのは、剣や弓などと比較にならないほどの殺戮兵器です。それも扱うのにたいした技量も必要ありません。この意味がわかりますか?」
「……」
この言葉はパトリック所長にだけ問いかけているものではない。ここにいる全員に問いかけたことだ。
「この武器が開発されると、これまでの戦争が一変します。そして、遅かれ早かれ剣や弓が廃れていき、剣や弓で戦う時代が終わるでしょう。騎馬兵や重歩兵などが意味を持たなくなるからです」
「「「「……」」」」
いまいち、納得していない様子のみなさん。でも、大袈裟に言っているわけではない。歴史が証明している。そして、その歴史を俺以外に、もう二人が事実だと知っている。
「如何にこの武器の数量を持つかで国の戦力が決まります。武器の数に対して兵の数が足りなければ意味がないと思うかもしれません。ですが、少しの間訓練した一般人でこと足りてしまうのです」
ここまで話すとだんだんと俺の言いたいことがわかってきた王妃様などの表情が曇っていく。
「もっとも安価な兵器は人といった考えを持つ国が考えることは、想像がつきます。足りないなら無理やりにでも集めて戦わせればいいと。今後、多くの血が流れるでしょう。そのためにも相手を上回る性能ある武器の開発。そして、新たなる医学、医術、医療体制の研究、発展も急務になってきます」
「「「「……」」」」
俺は宗方姉弟を見ながら最後の一言を言う。二人は抱き合って青白い顔をしている。責めているわけではない。だが、二人はこの世界の変革を促したという重荷を、一生背負っていかなければならないのだ。
今思えば、ポンコツ神様が俺に世界に影響を与えるスキルを与えなかったのは、こんな重みを背負わせないように思ったなのからかもしれない。詰めが甘いが……。
「もう、一度進み始めた時間は戻りません。行き着く先が世界の平和なのか。あるいは、世界の終焉なのかは私にはわかりません。それこそ、神のみぞ知る。なのかもしれませんね。それでも、もう進むしか道はありません。蹂躙されないためにも、科学を発展させなければならないのです。できれば、抑止力としてというのが理想ですが」
さて、神猫のミーちゃんはどう思います?
「みぃ……」
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