430 神猫 ミーちゃん、渡りに竜です。

「魔法の食べ物にゃ!?」


「にゃ!?」



 凄い食い付きだ。ミンサーは関係ないけど、二つの魔法の食べ物を作りたいと思っている。一つは豆腐。もう一つは納豆。どちらも原料は大豆。そして、醤油があるんだから食べないという選択肢はない!


 ほかほかご飯に納豆、冷奴、みそ田楽、豆腐の味噌汁。和食万歳!



「早く作るにゃ!」


「にゃ!」


「準備と実験が必要だから、すぐには無理かなぁ」



 作り方は知っている。だけど細かい分量や温度などは試行錯誤になるだろう。まあ、ある程度の知識はあるけどね。それでも、誰でも作れるレシピをつくるにはデータが必要になってくる。藁ももらってきているので造ろうと思えば納豆はすぐにでも作れる。


 特に豆腐は神猫商会の次期主力商品候補だ。納豆は……個人的な楽しみかな? 宗方姉弟なら食べるか? いや無理かな、そういえば実家は酒蔵だった。


 取りあえず、ミンサーの出来具合を知るために腸詰ソーセージを作ってみようか。詳しい作り方は知らないので誰かに聞かないとな。腸詰ソーセージはヴィルヘルムの屋台でも売っているから問題ないだろう。



腸詰ソーセージが食べ放題にゃ……じゅるり」


「にゃ……じゅるり」


「み、み~」



 食べ放題……怖い言葉だ。腹ペコ魔人を満足させる量っていったいどのくらいなんだろうか?


 うちの料理長のエフさんに作り方を聞いたけどわからないそうだ。やはり、ヴィルヘルムに行って調べるしかないね。


 翌日、今日はオーク狩りの最終日。宗方姉弟が頑張って俺とミーちゃんの力を借りず、オーク全てを狩り終わる。



「終わった~」


「オークの顔はもう見たくな~い~」


「み~」



 ミーちゃんのお褒めの言葉がありましたが、注文が入れば再開するからね。



「「えぇー」」


「み~」



 さて、オーク狩りが終わったからニクセに行こう。ニクセは湖の湖畔にある美しい町だ。宗方姉弟も気に入ると思う。まずは、獣人の村に飛ばないとね。


 トンテンカンと家を建てる音がいたる所からする。少しは村らしくなってきた。食事作りのおばさんたちにオークを一体置いていく。解体はしていないけど喜んでくれた。


 旨い料理を食べてみなさんには英気を養い、頑張ってもらはないといけない。


 それから、ケーラとアデルが寄って一泊したそうだ。それはよかった。この先当分は安心して休める場所がないからね。


 獣人の村から馬を走らせニクセに向かう。



「ネロさんが言っていたとおり綺麗だね。姉さん」


「不思議の国に迷い込んだ感じ?」


「み~?」



 カオリンの言ってる意味がよくわからないが、綺麗だという意味と受け取っておこう。


 町の門を抜け俺は役所に行く。宗方姉弟はお昼まで自由行動にした。



「これはネロ様。この度は如何なさいました?」


「み~」



 リンガードさんの執務室に役所の人に案内してもらった。さすがにフォルテと違い、役所の人はちゃんと領主の顔を覚えていたからすんなり通してもらえた。


 ソファーに座りリンガードさんと打ち合わせ。ロタリンギアの進攻の件はちゃんと情報を得ていたようだ。


 それと、ケーラとアデルが来て一泊していったと聞かされる。大変恐縮していたそうだ。



「それでネロ様は如何するおつもりで?」



 俺がもらった領地とはいえ、一応はヒルデンブルグ大公国の一部。国の一大事となれば動くのは当たり前。


 そこで、ルミエールから援軍が出てその総大将に俺がなる予定と聞かせる。



「では、ニクセの兵もそちらに?」


「ニクセの兵は万が一があった場合、公都の防衛の後詰めをお願いします」


「万が一ですか……」


「み~」



 そう、万が一だ。国境の砦には正規兵が詰めている。ロタリンギアの進攻が始まれば、更に兵が送られる、騎竜隊も派遣されるだろう。


 俺が危惧してるのは南の魔王たちだ。準魔王だけどね。奴らの動きがわからない。そのせいで公都が手薄になる恐れがある。まあ、大公様はそんなことわかっているだろうけど、その時のための後詰めだ。


「指揮はリンガードさんにお任せします。必要なら金庫が空になろうと、物資の買い付け、兵や傭兵を雇ってもらって構いません」


「承知しました」


「み~」



 その後もブロッケン山の街道のこと、ルミエールから塩の買付に商隊がでること、獣人の村のことなどを話して、最後にフォルテで始める共同出資での村々を回る商隊の話をする。


「それは、よいお考えかと。私のほうで商業ギルドに話を持っていきましょう」



 フォルテの商業ギルドの資料とグレンハルトさんと煮詰めた領主側の対応を書いた紙をリンガードさんに渡し、後は丸投げ。ニクセはフォルテと違って、治世に問題がないからすんなり話は進むだろう。


 そして、打ち合わせは終了。外に出ると宗方姉弟が待っていた。



「本当に綺麗なところですね。こんな所に住みたいなぁ」


「心が洗われたよ~」


「み~」



 お昼はヴィルヘルムで食べよう。一度ニクセを出てヴィルヘルムに飛び、中央広場の屋台からいろいろ買っていく。



「来てたのか。ネロ」


「お昼ご飯を買ってきたので、順番に食べましょう」



 手の空いた順にお昼を食べていく。俺は店のお手伝いに回る。



「今日は何しに来たんだ?」


「ルミエールでは手に入りづらいので、腸詰ソーセージを自家製で作ろうと思ったのですが、作り方を知らないのでヴィルヘルムに調べに来ました」


腸詰ソーセージは旨い。あれはいいものだ」



 アレックスさんも気に入っているようだ。



「作っている店を紹介するか?」


「知ってるんですか?」


「商業ギルドの会合で知り合ってな、よく買いに行くんだ」



 それは渡りに船……いや、竜。



「よろしくお願いします!」




神猫書籍版、出版部数が危機的状況ですにゃ……。

このままでは書籍版神猫がヤバいですにゃ……。

にゃんとかみにゃさんのあいの手を!

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