429神猫 ミーちゃん、蹴られる!?

「余計なお世話です!」


「みぃ……」



 はいはい、ミーちゃんは悪くないですよ。ちょっと行き遅れのひがみってやつだんね。シェ、シェーラギルド長の後ろに真っ赤な炎を纏ったオーガが見える……。こ、この辺でこの話はやめようね……。


「み、み~♪」



 と、取りあえず、持って返り確認しますと言って、逃げるようにギルド長室を出て受付に行く。倉庫に案内してもらい塩五百箱を納品。


 役所に戻り、グレンハルトさんと商業ギルドからもらった資料の確認。


 ミーちゃん、懲りずにコルネと仲良くなろうとちょっかいを出すが、足蹴にされ撃沈。白狼のモフモフに癒やしを求めもぐり込んでいる。



「税率を下げるか、補助金を出すかだがどうするね?」


「最初の三年は両方。その後は税率軽減だけで行きましょう。補助金はまずは一度商隊を出してみてからにしましょう」


「最初は採算度外視になるでろう。補填せねば続けられまい」


「軌道に乗れば十分に利益は出ると思います。それまではノウハウの蓄積が必要でしょう。うちの領地だけでなく、ほかの領地でも通用ようするビジネスモデルにしたいですね」


「流通の不整備は領民の生活環境に直結する。全ての領民が、住む場所によって不平等であってはならない。その一環として進めるべき政策であると思う」


「み~」



 グレンハルトさん意識合わせをして予算を組んでもらうことになった。商業ギルドの資料に追記して、初年度から三年は利率五パーセントの元本保証を確約してとし、四年後からは元本保証なしの利率変動制に変えることにして出資者を募る。正直、破格の条件だ。


 ほかの細かい事項はグレンハルトさんと役所の者で内容を詰めてもらう。プレゼンは五日後にすることにした。その旨は役所側から商業ギルドに通達してもらう。いちいち、俺が行く必要はないと思う。


 ここまでの分の写しをもらい明日はニクセに行って説明だな。



「み~」



 それにしても、もうすぐ役所の閉まる時間だ。俺も帰りたいんだけど宗方姉弟はどうなっているんだ?


 待っても二人は現れず、役所を閉めてグレンハルトさんと領主館に移動した。


 パロくんが俺の馬と宗方姉弟の馬を世話してくれるそうなので任せる。初めて会った時に比べると、だいぶ健康そうに見える。いいことだ。



「み~」



 グレンハルトさんの腕に抱かれていたコルネが、ぴょんとパロくんの肩に飛び移りスリスリ。この差はなんなんだろう……。触れないと触りたくなるこの欲求……。



「み~!」



 ミーちゃん、懲りずに今度はパロくんにダイブして、コルネと仲良くなろうとする作戦にでた。


 パロくんにたどり着く寸前にコルネからミーちゃんに、へぶっ! って声が聞こえそうなほど見事な猫パンチを喰らって撃墜。とぼとぼと歩いて来て俺の足にスリスリ。抱き上げて慰めて撫でてあげる。



「みぃ……」


「すみません! すみません! すみません!」



 パロくんが土下座せんとばかりに謝ってくるのに対し、コルネは何食わぬ顔で、なによ文句ある? という表情で見てくる。



 こ、こいつは……。


 また、グレンハルトさんのもとに戻ったコルネを尻目に屋敷に入る。メイドさんが淹れてくれたお茶を飲みながら宗方姉弟を待つ。来ねぇ……。


 グレンハルトさんと世間話をしながら待つことだいぶ。やつれ疲れ切った幽霊のような宗方姉弟と、艶々のローザリンデさんが戻って来た。



「この世に生を受けごめんなさい……。この世界に争いが絶えないのは僕のせい……ごめんなさい……」


「くっ、このババァ容赦ねぇ……化け物め……」


「み~?」



 目が死んでる宗方姉弟がなにかぶつぶつと言っている。正直、怖いんですけど。なんなの!?



「若いて~いいわねぇ。多少~無理させてもちゃんとついて来るのよねぇ」


「み~」


「「多少じゃねぇ!」」



 はいはい、帰りますよ。



「また~来なさいねぇ」


「「来ねぇよ!」」


「み~」



 ローザリンデさんは笑顔で言っているが、目は笑っていない。本気だな。よし、オーク狩りが終わったら、ローザリンデ・ブートキャンプに参加させよう。少しでも二人には強くなってもらわなければならない。俺が楽するために。



「みぃ……」



 家に変えると既視感なのかやつれたゼルガドさんがいた。そういえば、最近見かけていなかった。



「出来たぜ……」



 二つの道具を出してきた。一つは小型の石臼だな。もう一つは……ミンサーだ!? 作ったんだ……さすがイカレ頭は伊達じゃない。



「石臼は職人ギルドに頼んで作ってもらった。ミンサーは完全オリジナルだ。食品を扱うって言ってたからよ、分解洗浄できるようにしてあるが、煮沸消毒は必要だろう。そのためのでかい鍋も職人ギルドに依頼して作ってもらっている」


「み~」



 至れり尽くせりだな……。



「これで、にゃに作るにゃ?」


「にゃ?」



 食品と聞いて腹ペコ魔人が寄ってきた。



「そうだなぁ。いろいろ作れるよ。腸詰ソーセージなんかを作るのに役に立つ機械だね。後は豆腐だ」


「豆腐にゃ?」


「にゃ?」


「そう、豆腐。魔法の食べ物だよ」


「み~」

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