428神猫 ミーちゃん、ギルド長の婚期を心配する。
取りあえず、ミーちゃんの旗は置いといて、グレンハルトさんと話を続ける。ミーちゃんは白狼のモフモフに埋もれてスピスピと寝息をたてている。最高の寝心地だろうね。羨ましい。
さて、ルミエールからは補給隊込みで六千人近くが送られ、ニクセの西の鉱山町で恩赦付きの徴兵が行われることを伝えた。
「ブロッケン男爵としても私兵を出すのだろう。二百がいいところだな」
「それだけいれば十分です。王妃様からもらってきた最新兵器が二百なのでちょうどいいです。機密保持もあるので」
グレンハルトさんにもクロスボウを渡して見せる。
「扱いやすく強力な弓か……これを敵も持っているのだろう? 戦争が変わるな」
「攻めに使うのは難しいですが、守りには最適な武器です。素人でも少しの訓練で扱える武器ですので」
「志願兵や義勇兵に持たせれば効果的か……」
よくわかってらっしゃいます。
「ハンターにも普及すれば、使い方次第で狩りが楽にもなりますよ」
「ゴブリンキング戦にも有効か、うちでも作らせるかね?」
「それはまだやめたほうがいいでしょう。確かに今から作ったほうがいいのですが、一応、国家機密なので」
「そうだな、変な勘繰りはされないほうがいいな」
恐らく、王妃様も急ピッチでクロスボウを作らせているはず。ロタリンギア戦でも役に立つが、メインはゴブリンキング戦になるだろう。
「ニクセからは私兵は出さないのかね? 向こうのほうが練度は高いと思うが?」
「出しません。万が一、国境の砦が落ちたときに公都の守りに送らないと駄目ですから」
「そうならないことを願おう……」
グレンハルトさんと打ち合わせを終え、ミーちゃんをモフモフの中から抱き上げ次の目的地である商業ギルドに向かう。
商業ギルドに着いてギルド証を見せると、有無を言わさずギルド長室に連れて来られた。何事だ!?
「やっと来てくださいましたね。男爵様!」
「何かありましたっけ?」
「み~?」
商業ギルド長の声で、腕の中で寝ていたミーちゃんが目を覚ます。眠気眼で何が起きているかわかってない顔だ。
「村々を周る商隊の件ですよ! 話だけしてそのままじゃないですか!」
「みぃ……」
商業ギルド長のシェーラ・カナルさんが怒髪天で怒り始めた。丸投げしたつもりなんですけど?
ちなみにシェーラギルド長は家名持ち。カナル男爵家の三女なんだそうだ。まだ独身なので家名が残っている……お歳は、ゴホン……。
「何か問題でも?」
「問題だらけです!」
「みぃ……」
丸投げのつもりだったんだけど、領主の俺が発案したことで勝手に話を進めることができないでいたようだ。俺としては領主としてではなく、神猫商会として提案して、領主のほうは便乗したつもりだったんだけど、解釈的に逆が常識だとシェーラギルド長に怒られた……。
かといって、何も進めていなかったわけではなく、ちゃんと裏で出資希望者には話を通しているらしい。
じゃあ、それでいいんじゃね、と思ったが、領主として一度、ちゃんと出資希望者にメリットデメリットなどを含めたプレゼンしてほしいらしい。プレゼンの資料は商業ギルドで作ったそうで渡してきた。
持ち帰って確認が必要だね。それに領主としての税金の軽減税率なども設けないといけない。そして、できればニクセもこれに加えたいと思っている。
「ニクセですか?」
「み~」
「ニクセもうちの領地ですから。ニクセも村が多いですし、鉱山町も抱えています。需要は多いはずです」
フォルテから東の街道周りでニクセに行き、ニクセからも東街道周りでフォルテに各々商隊を出す。帰りは互いの町の特産品を積んで、ブロッケン山経由で帰ってくる。
帰りが空荷にならず効率もいい。もちろん、それだけ利益が出ることになる。ブロッケン山越えは二日がかりになるが、牙王さんの所で護衛を出してくれるし、中間地点には商隊の休憩地も完備している。
「すぐに街道は使えるのですか?」
「護衛云々抜かせば、街道の整備は終わっていますので、使うだけなら可能です。ですが、正式な発表は王宮側で出されることになっています」
「み~」
なので、塩の件も話し、王都の商業ギルドの手紙も渡す。
「確かに塩は急を要する話ですね。まだフォルテはヒルデンブルグのすぐ隣ですので少しは入ってきますが、ほかの町に送るほどの量は確保できていないのが実情です」
この商隊が上手く回るようになれば、ニクセから塩も村々に回るようになる。フォルテの商隊がニクセからの帰りに仕入れてくることもできるだろう。結果、フォルテやニクセだけでなく、ルミエール全体の利益にもなる。
「み~!」
そうなれば、フォルテの商業ギルドの株が上がる。ギルドの株が上がれば、当然ギルド長の株が上がるわけなので、ギルド長のお見合い話も増える。
「これぞ、商隊が儲ければ、ギルド長の結婚が早まる作戦なの~と、うちの会頭が申しております」
シェーラギルド長のこめかみ辺りに青筋が……。
「み~?」
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