427神猫 ミーちゃん、神猫将軍の旗を作ることを決意する。
宗方姉弟たちと馬に乗りフォルテに近づくと、町の周りを走っている集団が見えた。集団の後ろから掛け声を出し棒を振り回しいる人物も見える。ローザリンデさんだ。
どうやら、あの集団はうちの私兵みたいだね……。
「ネロさん、オーガがいますよ!」
「エルフババァだ!」
ヒュン!
「みっ!?」
宗方姉弟の乗る馬の手前に矢が刺さっていますけど……。
走っていた集団が止まり、崩れるように倒れ込んでいる。ローザリンデさんがいつの間にか弓を装備して、こちらに歩いて来る。
「お久しぶり~」
「「ひぃー!」」
宗方姉弟は抱き合って震えている。ついでにミーちゃんも震えて俺の服の中に隠れていますけど……。
「順調ですか? ローザリンデさん」
「もちろんよ~。年明けまでにはしっかり鍛えておくから。任せてぇ」
せっかくここでローザリンデさんに会ったので、王妃様からもらってきたクロスボウを一式を渡して確認してもらう。
「変わった~弓ねぇ」
ローザリンデさん、じっくりとクロスボウを観察してからボルトをつがえ、近くの街道沿いに生えている立ち木に向かってボルトを放つ。
ボルトは半分くらいまで突き刺さっているので、もう抜くことはできないだろう。あれが生身の人なら致命傷だ。革製の鎧を身に着けているくらいでは厳しいのではないだろうか? 金属鎧でも薄いものなら十分に通用しそうだ。
「凄いわね……」
先ほどまでのおどけた表情はどこにもない。立ち木に刺さったボルトを見つめている。
「扱いが簡単で狙いも正確。多くの命が失われえるわね……」
「みぃ……」
宗方姉弟は苦虫を噛み潰したような表情になっている。この話になるとどうしてもそうなる。知識を伝えてのはヤンキー君だとしても、それを止めなかったことは、ある意味同罪だ。しょうがない。
「なんて考えても~ここにこうしてある以上、使わない手はないのよねぇ」
「みっ!?」
切り替えはやっ!
エルフってもっとこう、なんていうか、思慮深いというか、こんなに現実主義っぽくないよね? イメージが……。
「さて~ネロくんはグレンとのお話があるだろうから、しかたないとしてぇ。あなたたちは~暇よねぇ。どのくらい~成長したか~確かめてあげるわぁ」
「み~」
「「ひぃー!」」
南無……。
フォルテの門を抜け役所に向かう。門で身分証明書を見せてもスルー。役所の中に入っても誰も俺のことに見向きもしない。いや、チラ見はしてるけど、何しに来たって感じ。ちょっと寂しい。
「みぃ……」
役所の職員のテオさんがいたので声を掛ける。
「あのう……」
「ちゃんと並んで順番を守ってくださぃ……ネ、ネロ様!?」
「や、やぁ」
「み~」
そんなに大きな声を出さなくても聞こえてますよ。
テオさんの声で俺が誰か気づいて役所のみなさんが立上り九十度のお辞儀姿勢になり、役所に来ていた一般ピーポーが驚き戸惑っている
なぜか親猫に首根っこを咥えられ引きずられて行く子猫のように、グレンハルトさんのいる執務室に連れて来られる……。それが領主にすることかぁ! 人権侵害で訴えてやるんだからな!
「この町は酷いものだ。平然と悪が蔓延っている。それが当然としている町の住人も異常だ」
そう言うグレンハルトさんは、ツンデレ猫のコルネをモフり、足元には白狼を侍らせている。
あれだけ摘発した闇ギルド連中だけど、それを埋めるかのように増えているそうだ。それだけ、お酒の利権は大きいということだね。地道に潰していくしかない。
まっとうに酒造りをしている人も多いのだけど、裏で密造酒造りを平然としている人も多いのが実情。そんな所に闇ギルドが付け入るのだろう。
ミーちゃんがグレンハルトさんの膝の上にいるコルネにご挨拶に行くも、フシャー! と撃退されている。仕方なくトボトボとグレンハルトさんの足元の白狼にスリスリと悲しそうにご挨拶。
「みぃ……」
仲良くしたいだけなのにぃ……とぶつぶつ言ってるね。俺も同じ目にあいそうなのでコルネには近寄らない。
さて、グレンハルトさんと今後のことで打ち合わせを行いましょう。確認、共通認識事項は多い。
商業ギルドで塩の買付の商隊を出す件。神猫商会で雇ったケーラとアディーの件。商隊の護衛をしてくれる妖精族と白狼の件。そして、一番大事な年明けにロタリンギアが進攻してくるので援軍を出す件。
「ネロくんが率いるのか?」
「みっ!? み~!」
いや、ミーちゃんでもいいんですけどね。建前上、俺が王様から任命されるわけだから、神猫将軍は内輪でのお話なわけで……。
「みぃ……」
そこまで、落ち込む!?
じゃ、じゃあ、ミーちゃんの旗作ろう! ここに神猫将軍ありってやつを!
「み~!」
じゃあ、ララさんとヤナさんに可愛い旗をお願いしようか。どんな旗がご所望かな?
「み~!」
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