425神猫 ミーちゃん、出資はちょっと……。

 用事も済んだので下に降りて、サイクスさんに手動ミキサーをプレゼント。



「ネロ。お前、天才だな……」



 新しく入った見習い料理人さんと一緒に、キラキラとした目で見られている。男にそんな目で見られてもうれしくない。



「親方~。これでマヨ作りでの苦労が減りますよ~」


「そうだな。こいつの使い方は無限だ!」



 サイクスさんと見習い料理人さんが抱き合って泣いてます。正直、暑苦しい。それに宮廷料理長が聞いたら嘆くと思うよ。自分でやらんか! ってね。


 せっかくヴィルヘルムの魚も渡したのに、手動ミキサーで霞んでしまった……。


 新しいウエイトレスさんにミーちゃん用にアズキトースト、宗方姉弟にサイクス印のプリンを頼む。サイクス印のプリンはサイクスさんの奥さん(前ウエイトレスの猫獣人さん)が営むお店でも購入できるが、受付のお姉さま方の要望でギルドでも販売しているそうだ。


 フェルママとパルちゃんがミーちゃんクッキーをカリカリ食べている横で、ミーちゃんはアズキトーストのトーストなしをペロペロ。俺の前にはアズキのないアズキトーストがある。



「姉さん、このプリン美味しいよ」


「おぉー、プリンの下にビスケットが敷いてあるではないか~。うむ、美味である」



 サイクスさんもいろいろ工夫しているんだね。しっとりとプリンの味がしみ込んだビスケットが美味しそう……トースト? 美味しいよ?



「み~」



 三時のおやつも食べ終わり、解体場にオーク肉をもらいに行く。まさに解体中だった……何度見てもグロいな。



「正直、これだけは慣れませんね」


「やらないと食べられないのはわかっているけど……ムリ~!」 


「みぃ……」



 あのオークが解体され部位ごとに分けられていく。俺たちがもらって行く部位はヒレ、ロース、トントロだ。


 せっかく『グラン・フィル』に行くのだからお土産に持っていく。今日はペロやセラがいないからそんなに量はいらない。代わりに、一番いい所をもらっていくのだ。



「焼肉食べ放題!」


「食べ放題~」


「み~」



 食べ放題には違いないが、焼肉ではないからな! 『グラン・フィル』に行くのに焼肉なんか食べないからな! それからミーちゃん、餡子はないからね!



「みっ!? みぃ……」




 セリオンギルド長と『グラン・フィル』に来ている。


 ミーちゃんの前には餡子の載った皿がある。ミーちゃん恍惚の表情で皿を見つめてます。最近、デザートに餡子を使用しているそうだ。ミーちゃん、よかったね……。



「み~!」



 サイクスさんの師匠にも手動ミキサーをプレゼント。



「これは助かります。私も寄る年波には勝てませんからね」



 餡子の件に戻るが、最近は水飴が市場に流通するようになったので、コースの最後にデザートを出すようになったらしい。


 俺も今はハチミツ、黒砂糖、水飴の三種類の餡子を作っている。ミーちゃんのお気に入りは黒砂糖の餡子だ。原材料費が他に比べて半端なく高くつく。ミーちゃん、唯一の贅沢品だから作らないわけにはいかない。


 水飴は教会が孤児院などで作り一元管理している。レシピを提供したのは宗方姉弟だが、収益は全て教会に入り孤児院などの福祉関係に使われている。


 最近の水飴の瓶には、フローラ様のデフォルメされた可愛らしい顔が描かれているので有名だ。値段もハチミツより安価なので庶民でも手軽に使える甘味料となっている。


 レシピを教会に譲ったのが宗方姉弟だと、セリオンギルド長とサイクスさんの師匠に話すと驚かれていた。



「あなた方は尊い徳をお積みです。いつの日かフローラ様のもと、天に召されることでしょう」


「「……」」


 宗方姉弟は微妙な顔だ。君たちは天に召される運命なんだそうだ……サイクスさんの師匠は意外と天然か!?


 オーク肉も渡し、いろいろな料理に仕上がって行く。なのに、トントロは藻塩で炙っただけものが出てきた……焼肉か!? 美味しく頂きましたよ?


 ミーちゃんも餡子が食べれて、ご満悦。


 家に帰るとペロとセラがスンスンと俺や宗方姉弟をついて周り、体の周りを嗅ぎ回る。ストーカーか!?



「にゃんか美味しそうな匂いがするにゃ」


「にゃ」


「サ、サイクスさんの腕がまた上がったね。お、お土産、食べる?」


「食べるにゃ!」


「にゃ!」



 サイクス印のプリンをみんなに出す。ルーさんとベン爺さんは甘いものが得意ではないので辞退された。それでも、みんな満足そうに食べている。


 ミーちゃんは、餡子いっぱい食べたから今日はもう終わり。クオンとセイランがプリンを美味しそうに食べているのを恨めしそうに見ている。諦めたのか、ムニュムニュ姉妹をペロペロし始めた。二匹を舐めることで、餡子の余韻を味わっているようだ。



「ネロもプリン屋、始めるべきにゃ!」


「にゃ!」



 なにを言い出す。ペロさんとセラさんや。



「やだよ。面倒くさい」


「にゃ、にゃんですとー!」


「にゃ……」



 そんなにやりたいなら、ペロがやればいい。毎日、朝早くから玉子や牛乳を仕入れて、プリン作り。売れると思うからペロたちが食べる分なんてないに決まってる。



「ム、ムリにゃ……ペロは朝は弱いにゃ……」


「にゃ……」



 そこかい!



「みぃ……」




      

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る