423神猫 ミーちゃん、キレてな~い。キレてないよ!

「お前は暇なのか?」



 エバさんにお土産のシュークリームを渡して、ある意味お茶を催促。


 宗方姉弟はパルちゃんをモフモフ。ミーちゃんはフェルママにペロペロされている。



「暇なわけがあると思いますか?」


「じゃあ、なぜここにいる。王都に帰ったはずだろう?」


「宮廷料理長からの依頼でオークを狩りに来たんですよ。ついでに、こいつらの訓練も兼ねています」


「強くなってるのか?」


「ま、まあ、そこそこは……」



 パルちゃんをモフモフしている宗方姉弟を流し目で見ているセリオンギルド長に、先日牙王さんとロデムさんから聞いたゴブリンキングのことを話して聞かせる。



「ゴブリンキングは着々と準備が整ているのだな……」



 それに比べ、人族側は全然らしい。いまだにまとまらず、バラバラでの行動。


 第三騎士団が白亜の迷宮手前のゴブリンの前線基地を攻めたらしいが、地の利のあるゴブリンたちにいいように打ち負かされたらしい。今度は第二騎士団が攻め込む準備をしているそうだ。頭悪すぎ……。


 傭兵とハンターはそれを無視して、白亜の迷宮の前の森を伐採しているそうだ。戦場造りだね。でも、一丸となってやらないと、間に合わないと思うんだけど。



「旗となる人物がいないのが問題だ」



 求心力のある人物がいないんだよねぇ。王様に弟とか従弟とかいればいいのだけど、昔いろいろあったようで残念ながらいないんだよ。


 なんてったって、レーネ様が王位継承権一位だからね。だから早く次の王子王女が望まれている。



「それで今日来たのはなんなんだ?」


「商業ギルドに用があって来たんですけど、気が乗らなくて……」


「ハルクギルド長か……悪い男ではないのだがな」


「ですが、極度の貴族嫌いですので、ネロくんのこともよく思っていないようですわ。オーク肉の件ありますから」



 オーク肉の件、根に持ってるのかよ!? うわぁ、ますます行きたくない……。



「何を持って来たんだ?」


「塩です」


「塩か……必需品だな。すぐに行け!」


「ミーちゃん、行こうか……」


「みぃ……」



 やって来ました、商業ギルド。ギルド証を受付のお姉さんに見せると、



「か、神猫商会様!? しょ、少々お待ちください!」


「み~?」



 顔を引きつらせて奥に走って行ってしまった……そこまでなのか?


 いつかの話のわかる秘書さんが走って来て、周囲を伺いながら別の部屋に連れて行かれる。



「はぁ……。神猫商会様、本日はどのようなご用件でしょうか……」



 いや、そのため息をつく気持ちはわかるけどね。こっちも来たくて来たわけじゃないんですけど。まあ、仕方ないので王都の商業ギルドで書いてもらった手紙を渡す。


 ギルド長宛なんだけど、勝手に破いて読み始めた。



「み~?」


「秘書ですから」



 問題ないらしい。



「そうですか……塩ですか。大変ありがたく、そして助かります。クアルトにはこちらでハンターを雇い、間違いなく送らせせていただきます」


「どこに出せばいいですか?」


「み~?」


「裏の倉庫にお願いします。見つからないように……」



 人目をはばかり、抜き足差し足で裏の倉庫までやって来た。正直、どうしてここまでやらないといけないのだろうか? お金は既に王都の商業ギルドからもらっている。ここに運ぶのはサービスでやっていることなのに……。秘書さんの気持ちを汲んでやってあげてるんだからな!


 しかし、そういうときに限って会いたくない人に会うもので……。



「そこでなにをやっている!」


「あぁ……」


「みぃ……」



 秘書さんから嘆きの呻き声が……。ミーちゃんからもだ。



「貴様……ブロッケン男爵! なにしに来た!」


「み~!?」



 貴様……ってそこまで言うか! 言われる筋合いもないぞ!



「待ってくださいギルド長! ブロッケン男爵様は王都の商業ギルドからの依頼で、不足がちになっている塩を運んで来てくださったのです!」


「なら、さっさと置いて行け!」



 おいおい、なんだよその言い方。こっちはサービスで運んでやってるんだぞ。やっぱり、来なきゃよかった。



「はぁ……。やっぱり、やめた。ミーちゃん帰ろう」


「み~!」


「ブロッケン男爵様……?」


「塩は王都に取りに来てください。では、さようなら」


「み~」



 ミーちゃんもアディオス~って別れを告げた。もう会うことはないかもしれないけどね。ミーちゃん、神猫だけにしゃれた別れの挨拶を知っているね。どこで覚えたんだろう? ポンコツ神様か?



「み~?」



 パルちゃんをモフモフして荒ぶる心を静めている。ミーちゃんもフェルママにペロペロされて落ち着きを取り戻している。



「お前はなにしに来たんだ?」


「ネロさんがキレるなんて、ある意味そのギルド長凄い!」


「親の顔が見てみたい~」


「キレてな~い。キレてないよ。俺をキレさせたらたいしたもんだ!」


「み~!」


「……」


「「キレてんじゃん!」」



 ギルド長室のドアがコンコンコンと鳴り、エバさんが顔を出す。



「商業ギルドの方がお見えですが……」


「お通ししろ」


「えぇー!」


「いいな。ブロッケン男爵!」


「はい……」


「みぃ……」




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