422神猫 ミーちゃん、王妃様に妹たちを紹介する。

「それで今日は塩の件かしら? それとも、可愛い声のお披露目かしら?」


「塩の件はお任せします。商隊がフォルテに着く前にグレンハルトさんに連絡を入れないとまずいですけど」


「み~」



 そう話しながらキャリーバッグからテラを出してあげと、久しぶりの兄弟姉妹にもみくちゃにされる。



「テラちゃんね。久ぶ……ネロくん!?」



 テラがキャリーバッグから出た後に様子を伺いながら、アメショー柄のムニュムニュ二匹が顔を出す。



「大公様に頼まれまして、ミーちゃんの新しい妹たちです」


「み~」


「「みゅ~」」



 ルカたちもテラと戯れるのやめて、新しい妹たちを囲んでスンスンと匂いを嗅ぎ始める。ミーちゃんは初めて会った兄姉たちに囲まれ緊張している二匹を安心させるためにペロペロ。



「お父様にこんな可愛い子たちが嫁ぐなんて犯罪だわ!」


「み~?」



 嫁ぐわけではないのですけど……。



「にゃんにゃん!」



 ペロと手を繋いだレーネ様が王妃様の所にやって来て、ミーちゃんの新しい妹たち見つけて声を出す。後ろには表情をなくした幽霊のようなレティさんがいる……。まだ、立ち直ってないんかい!



「ミーちゃんとルカたちの新しい妹たちです。もう少ししたらレーネ様のおじい様の所で大事にされますよ」


「じぃじぃさまのところ?」


「レーネ様のおじい様も、レーネ様と同じようにお友だちがほしいそうなのです」



 レーネ様はなるほどとばかりにうんうん頷く。



「ペロが探して来たにゃ!」


「み~」



 ペロがここぞとばかりにアピール。レーネ様がペロの頭をなでなで、ペロは目を細めている。ほかの人にこんなことされたら怒るのに、レーネ様だけには甘いんだよなぁ。


 王妃様に抱き上げられた二匹はじっと王妃様を見つめる。



「可愛い……やっぱり、お父様にはもったいないわ!」



 ニーアさん含めた侍女さん軍団もうんうんと頷いているが、無視だな。


 そんなムニュムニュ二匹に目が釘付けなニーアさんに、カティアさんがラッピングしてくれたお土産を渡す。ニーアさん、中身を見て首を傾げる。



「み~?」



 食べ物ですからね! 石みたいに見えるかもしれないけど、美味しいスイーツですからね!


 ニーアさんが各皿に盛りつけみんなに配るが、何かを悩んでいる。



「ネロ様。これはどのように食すものなのでしょうか?」


「手掴みで食べます」


「任せるにゃ!」



 うちの特攻隊長が果敢にシュークリームを攻める。



「うにゃ……」



 シューのいろんな所からクリームが飛び出して、手がクリームだらけになっている。



「手掴みで食べますけど、優しく上品に食べないと、ああなりますので注意が必要です」


 王妃様はさすがに気品ある食べ方だ。何気にレティさんも上品に食べているな。


 セラは口の周りをクリームだらけにして食べている。気にしてないようなのでいいのだろう。


 問題はペロとレーネ様だ。手もお口回りもクリームだらけ、お互いに手を舐めあって笑っている。大変なのはお世話しているニーアさんだな。


 ミーちゃんとルカたちはミーちゃんクッキーとミネラルウォーターを、カリカリ、チロチロ。ムニュムニュ二匹もミーちゃんを見習ってカリカリ、チロチロ。


 ここにいる人たちは勝手知ったる仲の人たちだけなので、後はお任せして俺は宮廷料理長の所へ行くことにした。



「美味いな。だが、これでどうするつもりだ? 大量に作ったとしても驚きはないと思うぞ。見た目もあまりよくない」



 確かにシュークリームは見た目がよくない。粉砂糖でも振りかければ少しはよく見えるけど、結局白い砂糖が必要になる。それは本末転倒だ。



「これはこれで完成されたお菓子なのですが、少しアレンジします」



 そう言って、みなさんと今回作ってきたシュークリームより小さい、二口大の大きさの少し硬めのシュークリームを作る。


 オーブンがいっぱいあるので一度に大量に作れるからいいね。


 出来上がったシューを冷ましてクリームを注入。出来上がった小粒のシュークリームを大きな皿に正方形に並べ、シュークリームの底にハチミツを塗りながらピラミッド型に積み上げていく。



「「「おぉー!」」」



 てっぺんまで積み上がると周りから歓声が上がる。本来ならこの上に飴を掛けたり、粉砂糖でも掛けるところだけどこのままでも十分インパクトはあるだろう。



「色ではなく形で驚かせるか。考えたな」



 俺が考えたんじゃないけどね。なので少し説明を入れる。



「子孫繁栄の願いと、豊かな収穫を願う意味があると聞いています。名前はクロカンブッシュといいます。どうですか?」


「なるほど、意味がちゃんとあるのだな。意味的には王家の式典には最適か。さすがにこのままでは使えんが、花や果物で周りを飾れば映えるだろう。こちらのほうがいいかもしれんな」



 宮廷料理長たちが考えたのは、やはりフルーツタルト。だけどやはり時期的に彩のよい果物が手に入らなく地味なんだそうだ。味は文句なく美味いからな! と言っている。負けず嫌いか!


 宮廷料理長が周りの料理人と相談を始めたが、すぐに結果が出た。クロカンブッシュに決定だ。



「うむ。レーネ様の誕生会はこれでいく。後はこちらに任せてもらおう」



 ふぅ~。これで、一つ問題が解決だ。




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