421神猫 ミーちゃん、弟妹の顔合わせです。

 二匹は食欲もあり体調的にも問題ないが、一点だけ気になることがある。この二匹をお互い一定以上離れさせると、急に寂し気にみゅ~みゅ~鳴きだすのだ。二匹っきりの姉妹だとわかっているようだね。


 そんな二匹を夕食の間、カヤちゃんが甲斐甲斐しくお世話をしてくれている。ミーちゃんも負けじと姉妹の猫缶まみれのお顔をペロペロと綺麗に。


 食事が終われば、恒例のお風呂。二匹は汚れてる感じはしないが、今後のお風呂に慣れるためにも入ってもらう。


 桶にお湯を入れて片方を入れるとみゅ~みゅ~鳴き出す。試しにもう片方もお湯に入れると鳴きやんだ。二匹とも並んで暴れることなく、まったりとお湯につかって気持ちよさそう。


 今日はハンターギルドに行かなかったセラが、教育的指導をしようと待ち構えていたのに、肩透かしを喰らった感じの表情で眺めている。そんなに教育的指導をしたかったのだろうか? ペロにすればいいのに……。


 しかし、この二匹は何かする時は一緒にやったほうがいいようだ。少しでも離れると寂しがって鳴きだすから。


 お風呂上りはミーちゃんとセラに任せ、俺は作り途中だったシュークリームを完成させよう。


 もしものためにエフさんがペロたちから隠していたシューとクリームを受け取り、シューに絞り器を使ってクリームを注入し完成させる。


 もう一度、ペロたちに見つからないように冷蔵庫にしまい、カティアさんに明日ラッピングを頼もう。


 ルーカスさんに明日の王宮へのアポイントメントも頼んでおく。怒られないように忘れずにね。


 ミーちゃんとセラ、ヤンくん兄妹が子猫のお世話をしていると、ペロとルーさんが戻って来た。


「ペロ、明日は王宮に行くから狩りはお休みね。ルーさん、すみません」


「み~」


「構わねぇよ。ヤン、明日は訓練つけてやるぜ」


「はい!」


「別に一緒に行ってもいいですけど?」


「勘弁してくれ……」


「面倒だにゃ~」



 ヤンくんと違いグズグズ言ってるペロにエサを撒く。



「レーネ様が会いたがっているし、明日は新作のお菓子を持って行くんだけどなぁ」


「行くにゃ!」


「にゃ!」



 セラも元気よく返事を返す。いや、まあセラも連れて行くつもりだったけどね……。



「じゃあ、私はこのムニュムニュたちの面倒を見ていてやろう。少年」



 恩着せがましく言ってはいるが、ただ単にムニュムニュしたいだけなのはわかっているぞ、モフラーめ! なので、ここはレティさんにけん制のジャブを一発打っておく。



「そのムニュムニュを兄姉に合わせに行くんですよ」


「み~?」


「な、なんだと!?」


「ハンターギルドに寄ってテラも連れて行こうと思います。簡単には会えなくなりますからね。ちゃんとミーちゃんの弟妹として会わせておきたいんです」


「みっ!? み~!」



 ルミエールとヒルデンブルグは普通に移動したら遠い。俺たちは転移装置があるから簡単に行けるけど普通はこうはいかない。


 もしかしたら、ミーちゃんの弟妹が顔を合わせるのはこれが最初で最後かもしれない。ちゃんと、会わせてあげたいじゃないか。



「み~」


「みんな集まるのか……ムフフフフ。仕方ない。少年の護衛だからな一緒に行ってやろう」


「みぃ……」



 さすがのミーちゃんも、レティさんの取って付けたような言い草にあきれ顔。最近、隠そうともしない隠れモフラーだからね……。


 翌日、ルーカスさんが王宮にアポを取り午後に出発。今日は大人数なので馬車を借りての移動。


 王宮に行く前にハンターギルドに行き、パミルさんに事情を説明してテラを預かる。


 このまま立ち去ると受付のお姉さま方が怖いので、ちゃんと対策は練ってきている。ルーくん、ラルくん、そして初顔のクオンとセイランを人身御供としておいていく。


 ルーくんとラルくんは恨めしそうに俺を見る、クオンは初めてのハンターギルド訪問のうえ、多くの人がいるので遊んでもらえると思い大喜び。セイランはこの初めての環境にしり込みして、パミルさんにしがみついている。パミルさんは目尻を下げて嬉しそうだが。



「ペロしゃん!」


 久しぶりのペロ訪問で勢いよく飛びつくレーネ様に、やれやれといったペロに対して、てっきりモフモフ談義同士の自分に抱き着いてくると思って手お広げたのにスルーされ固まっているレティさん……。


 セラ、そのポンポンとレティさんを叩くのやめなさい。ハートブレイク中の人にやると、更に落ち込むからね。。



「み~」


「にゃ~」


「「「みゅ~」」」



 レーネ様の後ろから猫様行列がやって来る。いつもなら、ミーちゃんに突進していくところだが、今日は俺が肩から下げているキャリーバッグに興味があるようだ。


 全員を抱っこして王妃様にご挨拶。



「珍しく先ぶれなんて出してくるから、何事かと思っていたのに思い過ごしのようね」


「うちのセバスチャン……もとい、ルーカスさんが王宮に行くなら事前に連絡を入れろとうるさくて……」


「み~」


「ネロくんとミーちゃんは顔パスだからいいのに」



 ニーアさんもうんうんと頷いている。


 ミーちゃんも、ちょとドヤ顔でそうよね~って感じ。


 うん、とは言えない俺……。



「「みゅ~」」


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