420神猫 ミーちゃん、可愛い姉妹にご対面。

 ニャイトペロを迎えに行こう。うまく話はついたかな?


 ヴィルヘルム支店に入ると商談室にペロがいた。アメリカンショートヘアーの子猫が二匹、お皿からミルクを飲んでいる。



「ここはお魚いっぱいだからにゃ、食べ物に不自由しにゃいにゃ。だから、わざわざ人に飼われたい猫は少にゃいみたいにゃ」


「み~」



 猫の区長さんに無事に会えたようだけど、そこからが大変だったっようだ。ペロが言ったように港に行けば、時化で漁ができないとき以外は間違いなく魚が手に入る環境。飢えるということはよほどのことがないとない。人と戯れるのが好きという猫以外、人に飼われれるメリットがあまりない。


 じゃあ、この子たちは?


 ミーちゃんが、子猫たちをペロペロ。お皿にミネラルウォーターと猫缶を出してあげる。



「この子たちはみなし児にゃのにゃ。区長さんの奥さんが面倒みてたにゃ。乳離れは済んだから里子に出してもいいと言われたにゃ」


 どちらも女の子。見つけた時には五匹だったそうだが、三匹は残念ながら育たなかったそうだ。人見知りもなく今は元気いっぱいなんだって。お目々がクリクリと可愛い子たちだ。ミーちゃんに促され猫缶をハムハム食べている。食欲も旺盛でなにより。



「み~」



 落ち着くまで、俺はお店のお手伝い。ベルーナは寒くてコートが手放せないけど、ヴィルヘルムはまだまだ暖かい。おそらくこれ以上温度が下がることはないのだろう。こういう住みやすさもあって、猫は人に飼われなくていいんだろうね。



「あの子たち飼うのかしら?」



 最近は夕方になると冷えたエールも売っているらしい、クラウディアさんが聞いてきた。



「大公様の所で飼いたいと仰るので」


「人族は不思議ですわ。役に立つ馬などや食用の動物を飼うんなら分かりますけど、猫など役に立つのかしら?」


「猫だって役に立ちますよ。保存している穀物などをネズミから守てくれますし、何といっても癒しを与えてくれます。ミーちゃんを見ればわかるでしょう? そこにいるだけで癒しMAXです!」


「ミーちゃんは神猫だからじゃないかしら?」


「そんなことはありません。後であの子たちを見て抱いて撫でてください。百聞は一見に如かずです!」


「え、えぇ、わかったわ」



 それにしても、絶えずエールを飲みにくる。何度か見た顔も混ざっている。


 つまみはフライドポテトを作って売っているそうだ。フライドポテトは、エールを飲まない人も買っていく人気商品らしい。最近では中央広場で真似して売っている屋台もあるそうだ。作り方は簡単だからね。


 唐揚げ棒を追加すると瞬く間に売れていく。そして、エールも飛ぶように売れる。ウハウハだ。でもうちはこれが本業じゃないからやりすぎには注意だ。他の酒場の営業妨害になるからね。



「そうでもないみたいだぞ。ネロ」


「どういう意味ですか? アレックスさん」


「商業ギルドの会合に最近呼ばれるようになってな、顔を出しているがうちがエールを提供し始めてから、この辺の酒場の売り上げが上がっているそうだ」



 へぇ、会合なんてやってるんだ。知らなかった。


 そしてどうやら、うちで一杯引っ掛けたお客さんが、ほかの酒場に流れていくらしい。うちではお客さんを満足させるだけの量は提供してないから、飲み足りないお客さんや一杯飲んで勢いが付いたお客さんが流れるんだろうね。


 それに、中にはエールを冷やして提供する酒場も出てきているらしい。アレックスさんに言わせるとまだまだらしいけど。それでも、水スキル持ちは多いからこれからどんどん増えていくだろう。うちも負けないように商品開発など頑張っていかないとね。


 休憩に入ったクラウディアさんに、体を洗ってあげた二匹を抱っこさせる。



「み~」


「「みゅ~」」


「か、可愛いわ……」



 この二匹、本当に人見知りしないようだ。クラウディアさんの肩によじ登り顔をペロペロ、スリスリ。クラウディアさんのデレ顔、レアだな。



「ミーちゃんのムニュムニュも捨てがたいけど、この子たちのムニュムニュもいいわね。ここでも飼いましょう!」


「残念ですが却下です。ここは食品を扱うお店ですからね。衛生上問題があります。それに、みなさんが仕事している間、面倒を見る人がいません」


「そ、そんな……」



 本店が開店したらクラウディアさんはベルーナに移るから、少しの我慢ですよ。向こうはモフモフいっぱいですから。


 お腹が空いたとペロがうるさいので、うちに帰る。そして、俺は知っている。ペロはちゃっかり、アレックスさんからお団子をもらって食べていたことを……。



「少年! ペロペロちゃんが増えてるぞ!」


「み~」



 最近、極度のモフラーであることを隠そうともしなくなったレティさんが、新しいミーちゃんの妹分の二匹を見て騒いでいる。


 クオンとセイランもちっこい子猫に興味津々で、鼻を押し付けては可愛い猫パンチをされて喜んでいる。



「その子たちはヒルデンブルグの王宮で飼われる子たちです。少しの間、うちで躾をするため一緒に生活します。そのつもりで」


「がう」


「きゅ~」


「「かう」」



 セラは久しぶりの子猫なのでお世話に一生懸命。そこにカヤちゃんも加わり大騒ぎ。



「お兄ちゃん、可愛いね」


「そうだね」


「私のペロペロちゃんじゃないのか……」



 あなたにはクオンがいるでしょう!



「み~」



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