414神猫 ミーちゃん、無礼はゆるしません!
宗方姉弟は気を失って寝転んでいる。大丈夫、死んでませんよ! ちょっとやりすぎた感はあるけど。
「みぃ……」
いやいや、ミーちゃんも同罪ですよ。可愛そうと言いながら、しっかりと神雷を供給してましたからね。
「みっ、み~♪」
ミーちゃんお得意のエア口笛で誤魔化している。
「なあ、ネロ」
「なんでしょう?」
「み~?」
「思うんだけどよ」
「はい」
「神力使いこなしてるネロが、止めを刺せばいいんじゃね?」
「嫌です。それに神力を使いこなしているのではなく、雷を使いこなしているのです」
烈王さんは気づいてしまった。だが、断る! 危険なことはやりたくない! 勇者として召喚された宗方姉弟が適任だ。俺は後方支援が担当。適材適所だ。
それに、俺は神力を使いこなしているわけではない。ミーちゃんの神力を借りて使っているだけ。実際は神雷だけどね。
それに俺自身に神力なんてあるのか? って感じなのだから。
「こいつら哀れだな……ネロの下に付いたが最後、同情の念を禁じ得ない。しょうがねぇ、ちょっとばかし力を貸してやるか……」
そう言って神殿内に戻って行く。
「あれ? ここは天国ですか……」
「川の向こうで、死んだじいちゃんが手を振ってた……」
「みぃ……」
ミーちゃん、ごめんねぇ……と宗方姉弟にスリスリ。
「なんか、体が凄く軽いんですけど?」
「憑き物が払われたって感じ?」
君たちは呪われていたのか!? 確かにミーちゃんの神雷だから、除霊の効果はあるだろうけど……。たんに電気治療のような効果で疲れがとれたのでは?
「み~!」
いえ、遠慮しときます。俺は呪われても、悪霊に憑りつかれてもいませんから! 疲れてはいるかな……。
「みっ!? み~!」
いや、だから、必要ないからね。ミーちゃん?
「み~♪」
え、遠慮なんてしてませんから!
「あばばばぁぁぁ……」
こ、これは効く……バタリ。
「なにやってんだ? ネロ」
「ミ、ミーちゃんの愛を感じてました……」
「そ、そうか……敬虔な愛だな」
「はい……とても重い愛です」
「み~」
ミーちゃん、とてもいい笑顔です。
「お前ら、これをやる。ここぞという時に使え」
烈王さん、トシに向かって指輪をポイっと無造作に投げる。
聞けば、烈王さの炎の力が封じられた指輪だそうだ。そんな危険なもの、ポイっと投げんなや!
烈王さんの炎の力が封じられているのだから、半端な威力ではないはず。ラルくんのブレスであれだったのだから、想像するのも恐ろしい……俺なら怖くて使えない。対魔王戦に使えとういうことだろう。
「いいか、間違っても味方に使うなよ。消えるぞ。その時が来るまでしまっとけ」
言葉にならず唖然とした二人はコクコクと頷く。
さて、そろそろ船の出る時間だ、帰らないと。
「み~!」
ミーちゃん、俺の肩に登って、可愛い雄たけびを上げる。しばらくすると、馬たちがやって来た。スミレが連れて来ただけあっって、この馬たちは頭がいい。鞍を着け、烈王さんに挨拶して港に行きヴィルヘルムに船で戻った。
今度は牙王さんの所だな。
「かっこいい~」
「おっきなわんこ~」
「「……」」
牙王さんとロデムさん、目が点状態。ミーちゃん、宗方姉弟を後ろ脚でテシテシ。
「よかったら、食っちゃってください。こいつら」
「み~」
「「ネロさん、ひど~い」」
うるさい。ミーちゃんからの了承の一鳴きも、もらっている、お前たちはギルティーだ!
牙王さんはブロッケン山の主で、ルーくんの父。ロデムさんはセラの祖父だ。
無礼は許さん!!
「み~」
ミーちゃんから判決が言い渡された。お前たちはモフモフちゃんたちのための魚焼きの刑に処す! さあ、キリキリとやれい!
ブツブツ文句を言いながら魚を焼く宗方姉弟の下に、白狼や黒豹のおこちゃまたちが集まり始める。
「姉さん。モフモフがいっぱいだよ」
「真のモフモフパラダイスはここにあったのだ!」
いいから、さっさと焼け! みんな、よだれを垂らして待てるぞ。
「あれが勇者か? あれで、魔王が倒せるのか?」
「ゴブリンキングは日に日に力をつけておりますれば、この者たちではいささか頼りないのでは……」
「み~」
そう、対策は取っています。魔王との闘いの前にちゃんと鍛えます。年明けのロタリンギアとの戦いにも連れて行きます。これは強制です。反論は許しません!
「ちなみに、今現在こいつらを一とすると、ゴブリンキングってどのくらいですか?」
「み~?」
「ゴブリンキング自体は実はそれほど強くない。俺の七倍くらいか? そっちの勇者だと百倍ってとこか?」
「ゴブリンキングの怖いところはその統率力ですので。力だけですと配下のゴブリンジェネラルのほうが強いですね。中でも二体、ずば抜けたゴブリンジェネラルがおります。とても恐ろしい相手です」
勝てんの? そんなのに。それに、ゴブリンキングより強いゴブリンジェネラルって反則じゃありません?
「みぃ……」
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