415神猫 ミーちゃん、餡子に塩使ってますよ?
「更に厄介なことがありまして……」
「み~?」
ロデムさん、奥歯に物が挟まった物言いをするね。嫌な予感しかしない。
「ゴブリンストラテジストという、新たな未知なるゴブリンが生まれております。このゴブリンが実質的な指揮を執っているようです」
ストラテジスト? 戦略家だっけ? タクティシャンではなくストラテジスト? ゴブリンが戦略?
そういえば、以前に烈王さんがゴブリンキングは転生者と言っていた。その部下が新たな進化をしてもおかしくはないのか?
将軍二体に戦略家一体これで戦術家までいたら最悪だ。いや、ゴブリンキングが戦術家と考えることもできる。絶対的な統率力で率いる戦術家……最強の軍隊じゃねえ?
「烈王さんから、今代のゴブリンキングは転生者と聞いています。そのせいで、新たな進化をしたゴブリンが生まれたのかもしれません」
「みぃ……」
「転生者だって!?」
「……では、ゴブリンキングは勇者だということですか?」
「まあ、敵側の勇者ですけど……」
「「……」」
天を仰ぐ牙王さんとロデムさん。言葉が出ないようだ。
「ミー様、なんとかならねぇのか?」
「みぃ……」
なんとかしてあげたいのはやまやまなんだけど……と困り顔。ミーちゃんの主の神様は、こっちの世界の神様じゃないからねぇ。向こうの神様のお姉さんらしいけど、連絡をする手段がない。できたとしても手を貸してくれるとは限らない。フローラ様はどう考えているのだろうか?
「我々で何とかするしかないんでしょうね」
「勇者となればあまりにも強大ですが……」
「一応、こちらにも勇者候補はいますので。彼らの頑張りに期待しましょう」
「み~」
「「……」」
こいつらで大丈夫かよ……って魚を焼いてる宗方姉弟を見る牙王さんとロデムさん。正直、俺も同じ気持ちです。
取りあえず、暗い話は置いといて、焼けた魚とお酒で乾杯。宗方姉弟はおこちゃまたちたちに魚をほぐして与えている。モフモフに囲まれて嬉しそうだ。我が世の春を味わうがよい。
「ネロ殿の酒はいつ飲んでもうめぇなぁ」
「み~」
「水スキル持ちに訓練させているのですが、なかなかどうして難しいようです」
酒を冷やすために水スキルの訓練をさせているのか? なんて、無駄使い……まあ、頑張れ。うまくいったら、神猫屋で雇おう。
「み~」
「もう一匹養子にだせと?」
「み~」
「確かに南の魔王共のことを考えますと、南の人族と誼を通ずるのは悪くはありませんが……どうなのですか? ネロ殿」
俺が話を切り出す前にミーちゃんが話を振ったようだ。
「俺は悪くない話だと思います。ロタリンギアが年明けにヒルデンブルグを攻めるのに乗じて、南の魔王も動くというのであれば見える形での友好関係は、南の魔王たちに動揺を与えることができるでしょう。お前たちがロタリンギアと組むなら、こっちはヒルデンブルグと組むと」
「み~」
「うむぅ」
南のごたごたが落ち着かないと、ゴブリンキング討伐に本腰がいれられに。早急に決着をつける必要がある。そのためにも、南の魔王をけん制するためにも必要だと説得を試みる。
大公様がモフモフしたいからなんて、口が裂けても言えない……。
「ガキんちょだけでいいのか?」
「何かあったときの繋ぎは必要ありませんか?」
確かにロデムさんの言うことはありなんだけど、情報なら転移を使える俺がいるし、もし、ヴィルヘルムに何かあってもアレックスさんたちがいるから心配はないと思うけど。
「み~」
大公様の護衛? なるほど、それは盲点だった。今、大公様に倒れられると、ヒルデンブルグは大変なことになるだろう。実質の政務は息子さんが行っているとはいえ、大公様の人気は絶大だ。気さくな方なので王宮の外にも出かけられるようだし、護衛は付いているのだろうけど用心に越したことはない。
「要人の護衛ですな」
「その人族が死ぬと大変なことになるんだな?」
「み~」
「よし、わかった。ミー様の話に乗ろう」
「報酬は塩でどうですか?」
「「塩?」」
ヒルデンブルグには売るほどある。人族にとって塩は生きてくうえで大事なものだ。牙王さんたちはどうしているんだろう?
「み~?」
「塩は山から取れるぞ?」
「たまに舐めていますよ」
岩塩ですか。なので、二種類の塩をミーちゃんバッグから出してもらう。
最初は普通の塩だ。牙王さんとロデムさんが舐める。
「しょっぺ!」
「塩ですな」
「み~」
次は藻塩。今日の焼き魚はこれを使っている。
「おっ! これは……」
「とげとげしさがなく、まろやかで美味しいですね」
「み~!」
ミーちゃん、自分では舐めないけど、絶品なの~! と絶賛。ちなみに餡子には塩を使っているよ?
「みっ!?」
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