407神猫 ミーちゃん、衝動買いならぬ衝動雇いをする。

 なにがだめなの~と言ってくる、ミーちゃん。


 ケーラたちは神猫商会の人間じゃない。この話が広まれば、そういった行商人がうちに泊めてくれって押し寄せるよ。これがただの旅人の知り合いとかなら話は別なんだけど、行商人は特にお金がかかるので宿に泊まるのを躊躇するから、この話が広がるのは非常にまずいことになるよ。


 村や都市には、そういう人たち用に空き地が用意されているけど、ベルーナやヴィルヘルムにはないんだよねぇ。



「み~?」



 うちの商会の人にすれば~? って簡単に仰いますがね、そんなに簡単じゃないよ?



「み~」


「姫の言うとおりにゃ。聞いてみればいいにゃ」



 彼女らには彼女らの考えがあるだろし、将来は自分の商会を作りたいと思っているかもしれない。いや、商人ならならそういう思いでやってるはず。ここで彼女たちの夢を断念させるのは如何なものかと。



「本当ですか!? 神猫商会さんで雇ってくれるのですか!」


「み~!」



 あるぇ~? なんでこうなった? 君たちは商人としてのプライドはないのか!?



「プライドで食べていけるのなら苦労はしません!」



 ある意味、商人的な現実主義リアリズム



「み~」



 話を聞けば、最初は大店の商会に入ろうとしたけど伝手がなく、ことごとく断られたらしい。大店狙いだと伝手がないと無理だろうね。


 ある意味、商人向きじゃない楽観主義オプティミズム。無謀とも言う。



「み、みぃ……」



 まだ、決まってないけど、フォルテでいくつかの商会がお金を出し合って、フォルテの村々を周る商隊を出す話があること話す。



「それ、私たちがやります! フォルテは生まれ育った町ですから、村々のことも知ってます」


「み~」



 取りあえず、そういうことなら、会頭の言うことでもありますしいいのかな?



「「よろしく、お願いします!」」


「み~」


「よかったにゃ! これからはにゃんこ先生と呼ぶにゃ!」


「「はい!」」



 ペロ……さっき自分で猫じゃない! って言ってませんでしたか? 



「そうだっけにゃ?」


「みぃ……」



 とさか頭ですか!? 猫頭なのに……。


 話が決まったので、俺たちは先にヴィルヘルムに向かう。と言っても、人気のない所で転移でベルーナの家に戻り、俺たちの乗って来た馬とは別に、二頭連れてくるつもりだ。


 あの二人にうちの馬を一時的に貸そうと思う。歩いてフォルテに向かったら時間がかかりすぎる。


 うちの馬たちは頭もいいし、ミーちゃんのミネラルウォーターを飲ませたこともあり、見違えるほど回復したうえ丈夫になった。おそらく、軍馬として育てられた馬にも負けないだろう。さすが、スミレが連れて来た馬たちだ。


 馬を連れヴィルヘルム支店に転移して、アレックスさんに二人のことを伝えておく。



「部屋は空いてるから問題ないぞ。そいえばな、二人ほど増える予定だ。こちらで働きたいという者が意外と多くてな、選考に苦慮してるそうだ」


「み~」



 そうか、ドラゴンが増えるのかぁ。本店に二人引き抜くからちょうどいいといえばちょうどいい。でも働きたいというドラゴンが多いというのは意外だな。俺なら働かなくていいのなら、働かないでだらけるのになぁ。



「みぃ……」



 二人の布団を用意したり、商業ギルドに顔を出してお茶を飲んだりして時間を潰していると、二人が神猫商会にやって来た。アレックスさんたちに二人を紹介して、明日の早朝に迎えに来ると言ってから家に帰る。



「「かう!」」



 クオンとセイランがお出迎え。なんか、ルーくんとラルくん、疲れた顔してますけど、どうしたの?



「がぅ」


「きゅ……」



 どうやら、クオンとセイランのやんちゃぶりに振り回せれ、お疲れモードのようだ。おとなしい性格のセイランもルーくんたちとは元気に遊んでいるようだね。


 明日は、朝市に一緒に連れて行ってあげよう。海を見たことがないだろうから喜んでくれるだろう。



「み~」



 レティさんを誘ったら、ヴィルヘルムは暑いから嫌と断られた。夏が終わってだいぶ過ごしやすくなっているんだけどね。となると、やっぱりペロを護衛に誘うか?



「ルー兄ぃとセラにゃんとギルドに行くから駄目にゃ。ジンにゃんから頼まれたこともあるしにゃ。カオリンとトシを連れて行けばいいにゃ?」



 宗方姉弟か……確かにそろそろ、転移の秘密も教えてもいいかな。ついでに、牙王さんと烈王さんの所にも連れて行くか、一度は紹介しないと駄目だろう。



「み~」



 ミーちゃんのお許しも出たので連れて行こう。


 その二人を探すとゼルガドさんと絵を囲んで話し合いの真最中。



「ここで熱して、ここで冷やすのはわかるが、この冷却部分だけで本当に間に合うのか? 気化だっけ? そこから液体に戻るのに足りるか?」


「うーん。どうなんでしょうね。見たことがある装置はそれでやってました。だよね、カオリン博士」


「そうなのだ。やってみて駄目なら、そこに冷却装置を付ければいいじゃな~い?」


「まずは小型の試作品を造るか。銅で造りゃあ、いいんだよな?」


「熱伝導率がいいので、それが一番だと思います」


「銅には殺菌作用もあるから安全なのだ!」



 蒸留酒の話をしているみたいだ。俺は実験でやったことがあるけど、、水を循環させた冷却装置を付けてやったな。でも確かに本で見た、蒸留酒の装置にはなかった気がする。その分冷却部分は長かった気がするな。大きさも関係するのかもしれない。やはり、試行錯誤が必要だ。蒸留酒を造っている村人を引き抜けないかな? 無理だろうな……。



 ゼルガドさんたちの奮闘に期待だな。



「み~」

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