408神猫 ミーちゃん、秘密を教える。

 申しわけないが、ゼルガドさんと宗方姉弟が話しているところに割って入る。



「二人とも、悪いけど明日の早朝付き合ってほしい所があるんだ。一応、俺の護衛として連れて行くから、簡易でいいので武装はしておいて」


「み~」


「どこに行くんですか?」


「早朝……朝は眠いのだ」


「みぃ……」


「行ってからのお楽しみ」


 一人、何か言ってるが無視。



「ゼルガドさん。臼ってあります? 個人で使えるくらいの大きさで」


「個人で使うってことは小さいのか? 探せばあるんじゃねぇか?」


「み~?」



 探さないとないのかぁ。



「ミキサーなんて、ないですよね?」


「み~?」


「みきさー? 聞いたことがねぇなぁ」



 宗方姉が絵を描いて説明してくれる。



「ここを金属の刃にすればいいんだろう? まあ、作るのは簡単だな。どちらかっていうと木工職人の仕事じゃねぇのか? こんなの何に使うんだ?」


「調理器具だよ。ゼルガドさん。ネロさん、これで今度は何を作るんですか? 腸詰ソーセージですか! 腸詰ソーセージならミンサーのほうがいいのでは?」


腸詰ソーセージなら売ってるよ。明日行く所にあるから帰りに食べようか?」


「「はい!」」


腸詰ソーセージはこの辺じゃあ珍しいからな、俺の分も買ってきてくれ。あれを焼いてエールで流し込んだら最高だぜ!」


「み~!」


 まあ、いいんだけどね。腸詰ソーセージって結構、高級品なんだよね。どうしても、香辛料、砂糖、塩を使うから割高なんだよ。それから、ミーちゃん。ノリがいいのはいいのだけど、食べもしないし、飲みもしないでしょう!



「み、み~」



 それよりミンサーか……そういえば、そんな機械あったね。豆腐を作るなら、ミンサーのほうがミキサーや臼より簡単だね。


 構造は簡単だ。アルキメディアン・スクリューさえ作れれば後は出来たようなもの。なんとか絵に落としてみる。



「こりゃなんだ?」


「アルキメディアン・スクリューですね」


「ネロさん。意外と絵がうまい~」


「み~」



 ゼルガドさんが俺の描いた絵を、穴が開くのではないかというふうに覗き込む。



「これを考えた奴は天才だな……」



 はい、天才です。二千年以上前の人だけど。



「回転で送ることも受けることも可能か……すげぇなこれ! 高い所に水を送れるんじゃねぇかこれ!」


「そのとおり! 揚水器として使われているのだ!」


「み~!」


「やっぱりな! こっちから送って刃で細切れにして押し出すか。よく考えられた道具だ。よし、こいつを作ってやる。少し時間をくれ」



 ゼルガドさんの琴線に触れたようだ。やる気になった時のゼルガドさんはすごいからな、期待だ。それにしても、今夜のミーちゃんはノリがいい。神猫商会に新しい人が入ってうれしいのかな?



「み~!」




 翌朝、眠い目を擦りクオンとセイランを抱っこする宗方姉弟を引っ張り、人気のない倉庫に移動する。



「こんな所に連れて来てどうするんですか?」


「まだ、眠いのだ~」


「「かうぅ……」」



 二人の手を取ってヴィルヘルム支店に飛ぶ。



「ここはどこですか!」


「目がパッチリだよ!」


「ヒルデンブルグ大公国の公都ヴィルヘルムにある、神猫商会の壱号店だよ」


「み~!」



 まだ、早朝なので、大工さんも来ていない。お店のほうでは気配がしているので、店を開ける準備をしているのだろう。



「転移ですか!? スキルなんですか!?」


「転移もの、定番のチート。やっぱりあったか~」



 いや、普通にあるからね? 珍しいことは珍しいスキルだけど、王宮で雇われているからね! 俺の場合はAFで限定があるけど、対価なしで使い放題だけど。



「残念ながら今のはスキルじゃないよ。AFなんだ。転移のスキルはあるけど覚えると、ほぼ強制的に国かギルドに雇われるそうだよ」


「み~」


「それは……」


「やだ~!」



 うるさい二人を引き連れ、アレックスさんたちヴィルヘルム支店の面々に宗方姉弟を紹介する。



「イケメン、美女揃いに驚き!」


「フツメン、フツ女を見て落ち着く私」


「「普通でごめんなさい……」」


「みぃ……」



 ロッテとダミアンが悪いわけじゃないから謝る必要はないよ。こいつら二人が……、



「「あばばばば!!!!」」



 ちょっと、お仕置きしておきました。クオンとセイランはクラウディアさんたち女性人にモフモフされているから大丈夫。


 ケーラとアデルの部屋に声をかけると既に起きていた。準備が整うまで外で待つ。開店の邪魔になるからね。


「み~」



 二人が出てきたので、昨日連れて来ていた馬を貸すことを伝える。



「本当にいいのですか? でも、ここまでしてもらっても、何も返せるものがありませんが……」


「ケーラ。これからいっぱい働いて返していくんだよ。それに、馬がいれば危険も少ないし、時間の短縮にもなる。ありがたく使わせてもらおうよ」


「そうだね。お借りします」


「み~」



 ニクセでは代官の所に行けば泊めてもらえるように書いた手紙を渡し、フォルテに着いたら代官屋敷に馬を返してと言っておく。前にも言ったが獣人の村でも俺の名前を言えば、村の中で休めると再度言っておく


 宿代も浮くし安全だからね。



「み~」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る