401神猫 ミーちゃん、塩の商いに興味があります!

 海岸沿いの道をを走っていると遠くに村が見えてきた。あれがおそらく俺の目的地だろう。


 近くまで行くと村というより工業団地って感じかな。全然、近代的ではないけど、煙突のある工場らしき建物や倉庫が建ち並んでいる。陸地奥側は居住地のようだ。


 門には衛兵さんが立っていて、ただの村ではないことがわかる。



「にゃんか凄いにゃ~」


「み~」



 衛兵さんに商業ギルド証を見せて村に入る。さて、どこに行けばいいのだろうか?


 こういう時はあれだな。



「ペロ。屋台でなんか食べる?」


「食べるにゃ!」


「み、み~?」


「姫。おやつは別腹にゃ!」



 お昼にはまだ早い時間帯。ペロはちゃんと出てくる前にしっかりと朝ごはんを食べて来ている。ミーちゃんが、ま、まじ~? って言う気持ちはわかるけど、これが腹ペコ魔人のデフォルト。


 ミーちゃんだって餡子食べる? って聞いたら食べるって言うでしょう?



「み~♡」



 でも、あげないよ。



「みぃ……」



 ペロも同じようなものだよ。



「み、み~?」



 じゃ、じゃあ、ミーちゃんはなんでダメなの~? それはね、ペロが腹ペコ魔人だからです! 前に、餡子食べ過ぎて動けなくてなったことがあるよね?



「み、み~♪」



 誤魔化しても駄目です。顔を餡子だらけにして、歩くこともできずにキャリーバッグの中でコロコロ転がっていたのは誰ですか?



「み、みぃ……」



 わかればよろしい。で、ペロなんだけど腹ペコ魔人の凄いところは、例えお腹がいっぱいでもそこから更に食べることができる丈夫な胃袋を持っていること。良い意味でだと、その胃袋の消化能力。悪い意味でだと、燃費の悪さ。ミーちゃんのミーちゃんバッグに匹敵するするのではないかと思われる無限胃袋。


 もし、ミーちゃんが好きなんように餡子を食べたら、ペロと違って、歩けなくなるくらいにぷくぷくになって大変なことになるよ。



「みっ!?」



 ミーちゃん、ぷくぷくになった自分の姿を想像して、プルプルと震えながら顔面蒼白状態に陥っている。ちょっと脅かしすぎたかな? ミーちゃんの場合、ミーちゃんのミネラルウォーターがあるからそうならないと思うけど、あえて教えない。そうだとしても、やっぱり食べ過ぎは体に悪いからね。



「おっちゃん! 焼肉串、三本にゃ!」


「あいよっ!」



 大きい塊肉が三つ刺さった串が焼き台に載せられ焙られる。ジュウっと脂が滴り落ち、なんともいえないお肉の匂いが辺りを包む。何度かひっくり返して最後に塩をパッとかけて出来上がり。



「お待たせ!」



 ペロが受け取り、さっそく頬張る。



「味付けが塩だけにゃのに、にゃんともまろやかにゃ味わいにゃ!」



 ペロから一本もらい一口食べてみる。お肉はそれほどのお肉ではない。筋っぽいし固いお肉だ。でも、美味しい。本当に塩だけの味付けなのだろうか?



「旨いだろう? ここで作っている塩の中でも一番旨味のある塩を使ってるからな」



 なるほど、おそらく塩の精製でも造り方が違う塩なのだろう。ミネラルの多い自然塩、天然塩というやつだろうな。



「兄ちゃんたちは行商人かい?」


「はい。塩が欲しくてきました」


「行商人程度が扱う量なら問題ないが、大きな取引はできないから気を付けろよ」


「み~」



 どういうこと? 顔に出ていたのか屋台のおっちゃんは丁寧に説明してくれた。


 簡単にいうと、塩は国がすべてを管理しているのだ。商業ギルドは一切関わっていない。


 塩は人が生きていくうえで必要不可欠なもの。だからこそ、敵に塩を送るなんて言葉が生まれるくらい大事なもの。塩は言わば戦略物資なのだ。戦う兵士だって人間。もし、塩の流通が止められた戦うどころではなくなる。いや、だからこそ侵略して来るのか?


 話がそれた。そういうものなので国が一元管理して流通量を調整している。そんな大事な塩だから、信用のない商会には商わせない。国に申請して認められた商会のみ売買ができるのだ。小売店は別ね。昔の日本と違って塩の専売制度はない。国から塩を大量に仕入れる時だけ必要になる申請。


 でも、あんまり儲けはないそうだ。流通と価格の安定を目的として国が管理しているので勝手に値を釣り上げられない。それをやったら塩の売買から締め出される。


 それでも、儲けは少ないけどこの世界の海が干上がらない限り安定したも請けにはなる。必需品の塩を買わない人なんていないからね。どうしよう? 神猫商会でも取り扱う?



「み~!」



 みんなのお役に立てるの~! と会頭が申しているので申請はしておこう。駄目でもともとって感じだ。


 塩を買う場所と申請する場所は村の中心部の役所だそうだ。


 行ってみよう。


 歩いてみるとわかる。村の規模じゃない。ここは将来、町へと発展するだろう。ヴィルヘルムとも近いし、道も整備されている。なんといっても塩を生産しているのだから、重要な拠点でもある。


 村を囲う防壁も少しだけど石造りの壁になっている。工事は止まっているようだけど。もしかしたら、もう少し規模を拡張するつもりなのかもしれない。


 ここで働いている人たちの家族と思われる人たちで、中心部の商店街は賑わっている。お店の品ぞろえも悪くない。国営企業で働いている人たちだからいい給料をもらっているのかも。


 中心部の建物の中でも一際大きな建物に来た。ここが役所で間違いないだろう。



 じゃあ、入りますか。



「まだ、食べきってにゃいにゃ……」


「みぃ……」



 ペロはここに置いて行きますか……。



「み~」




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