400神猫 ミーちゃん、監督の判定は甘々なのです。

 エフさんはピラフ、ララさんはから揚げ、そして俺はプリン作り。腹ペコ魔人が帰って来たのだから生半可な量では足りないだろう。


 そんな料理を作っている俺たちをカティアさんに抱かれて、ミーちゃんが食い入るように見ている。


 そう、一番端のコンロで小豆を煮ているのだ。餡子はいっぱいあるんだけどね。最近、女性陣が朝食でトーストに塗って食べるのがブームになっているせいで若干だが減っていく。


 そんなあんトーストを食べる女性陣を見て、ミーちゃんは毎日気が気ではない様子。ミーちゃんはみんながあんトーストを食べているところを不安な表情で行ったり来たり。自分の分がなくなるのではないかと心配なのだ。


 だがしかし、みんなが食べてるのはエフさんが作った餡子で冷蔵庫にあるもの。ミーちゃんがおやつに食べる餡子は、ミーちゃんバッグに入っているもの。お気づきだとは思うけど、うちの女性陣がどれだけ餡子を食べようとも、ミーちゃんバッグの中の餡子は減らない。


 餡子のこととなると冷静さを欠くミーちゃんなのだ。


 なので、餡子作りが始まると必ずミーちゃんがやって来て厳しい目で監督を始める。出来上がる頃になるとしっぽをゆらゆらさせて、監督責任とばかりに味見を要求してくる責任感の強いミーちゃんなのである。餡子だけに判定は甘々だけど。


 さて、料理を作ってる間にクリスさんとヤンくん親子が帰ってきた。ヤンくんとカヤちゃんはペロたちが入ってるお風呂に突撃。大騒ぎになっている。ヤナさん、頑張れ。


 料理を居間のテーブルに並べて立食形式にした。みんなが揃い、初めての人もそうじゃない人も自己紹介をする。



「おぉー。イカレ頭のおっちゃんにゃ!」


「うるせぇ。にゃんこ」


「にゃんこにゃにゃいにゃ! ペロにゃ!」


「み~」



 いつのも漫才が始まっている。


 ルーさんはヤナさんにお酌をされてデレデレ。元気に走り回っているクオンをセラが前足で踏んずけ、教育的指導が入る。セイランはララさんに抱っこされながらご飯を食べている。


 いつの間にかクリスさんとカヤちゃんがペロの取り合いをしている。ペロはまったく意に返さずピラフおにぎりとから揚げをハムスターのように頬張っている。


 なぜにペロは女性にもてるのだろう? お人形のようにモフモフの体か? それともやはり、あの食べ物のことしか考えていないつぶらな瞳なのせいなのか? どちらも俺にはまねできない。うむぅ。


 そんな楽しそうにしているみんなを自分のことのように、ニコニコ顔でミーちゃんは見ている。



「なんか僕たちがいない間に増えましたねぇ」


「楽しくていいじゃないかー!」



 宗方姉弟にゼルガドさんを紹介する。



「やっと帰って来たからな、バリバリ働いてもらうぞ。初めは蒸留酒造りからだ。まずは蒸留器の開発だな」


「冗談だと思っていたが、まさか本気で御神酒を造るんだな。ネロ」


「この二人はお酒造りの知識を持っています。蒸留酒だけでなく、米からもお酒を作る方法も熟知してますからね。ゼルガドさんの頭脳と技量を合わせれば楽しいこと間違いないですよ」


「酒造りかぁ」


「まさか、こんな日が来るとはー」


「み~」



 ミーちゃんも期待してるよ~って応援。ミーちゃんは飲むことができないけど、神猫商会の目玉になると思っている。酒を制する者は世界を制するの~! とかたまに言っているくらいだ。どこでそんなこと覚えてくるのだろう? ギルドの酒場辺りが怪しいな。


 食事が終わり、お茶を飲みながらクイントを出てからのペロたちの話を聞く。ペロがテーブルの上で身振り手振りで話を盛り上げ、セラと宗方姉弟が合いの手を入れ更に盛り上げる。ルーさんだけがその時のことを思い出してげっそりとした表情になる。


 うん。ルーさんはよく頑張った。ルーさんがいてくれて本当によかった。ルーさんがいなかったら、まだ当分の間帰って来なかっただろうよ。こいつら。


 その夜は遅くまでペロたちの武勇伝が語られた。その話はまた別の機会に話そう。


 朝起きればさすがに昨日の夜更かしでみんな眠そう。それでも、クリスさんとヤンくん親子は神猫屋開店のため出かける。一応、五日に一度の間隔で休みにしているけど、お客さんの要望で神猫屋を開けるためクリスさんとヤンくん親子が交代での休みになっている。そのため、ルーカスさんの弟のベルティさんや従兄弟のフランツさん、従姉妹のテレサさんが手伝いで入ってくれている。


 早く本店をオープンさせたいところだ。



「み~」



 朝食を食べ終え、ミーちゃんとセイランを抱っこしてモフモフ成分を補充しながら考えごと。クオンはルーくん、ラルくん、セラ相手に鬼ごっこ。ちみたち、外に行って遊びなさい!


「かう!」


「がう!」


「きゅ~!」


「にゃ……」



 やんちゃな弟妹分にお姉さんのセラでも持て余し気味のようだ。


 じゃあ、俺も出掛けようかね。無理やりペロを起こして護衛を頼み、ヴィルヘルムに飛ぶ。



「まだ、眠いにゃ~」



 最初はレティさんを護衛に来ようかと思ったけど暑いのが苦手なレティさんを毎回連れ出すのは申しわけない。グラムさんがいれば問題ないのだけど……生きてるのか?


 ペロを馬の後ろに乗せヴィルヘルムの町を出て海岸沿いを走る。ペロと一緒ってのも久しぶりだ。



「み~」


「そうにゃか? そういえば、スミレにゃんはどうしてるかにゃ~?」


「み~?」



 ミーちゃんとペロの話が盛り上がるなか、俺は目的地を探し馬を走らせる。海風が気持ちいい。



「み~」



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