394神猫 ミーちゃん、護衛はドラゴンです。

「ねえ、ネロくん。もしかして、個人で転移門なんて持ってないわよね?」



 ミーちゃんしか連れて来てないのでレーネ様はがっかり。でも、ルカとレアとカイは嬉しくてミーちゃんに抱きついて離れない。ノアは王様の所にいるそうだ。



「余っていた転移門を使いましたが何か?」


「何がって……。そう使ったのね……」



 目が点とはこいうことを言ううのだろう。お綺麗な王妃様に、いつもキリリとしたニーアさん。もうひと押しすれば顎も外れるんじゃないだろうか?



「残りはもうないのよね?」


「大公様の分がまだ残っていなすが、それ以外はないです」


 やっと復活した王妃様が目頭を押さえつつ聞いてくる。


「ネロくんは作れないのよね?」


 作れるわけがない。まあ、将来的には作れるようになるかもしれないけど。というか、烈王さん以外にそんなことを簡単にできる人(竜)いるのかな?



「無理です。それに烈王さん以外で作れる人に会ったことがないです。烈王さんは神猫商会の大事なお客様であり、パトロンですから融通してくれているだけです」


「烈王様をパトロンって……でも、神猫商会が潤沢な資金を持っている理由がわかったわ」



 半分当たりで半分ハズレです。確かに烈王さんからもらった金貨や宝石の原石は相当な資金になると思うけど、以前に王妃様に渡した緑の宝石硬貨の通称国貨は迷宮で獣人さんたちからもらったものだ。


 国貨やアルサイト硬貨はまだたくさんミーちゃんバッグに入っている。そっちの資金のほうが莫大だと思う。



「どこからどこにつながっているか教えてくれない?」



 可愛らしく首を傾げ聞いてくるが さすがに教える気はない。もしかして、もう一つも欲しかったのかな? もう、1つあげているからあげる気はない。



「教えたくないです」


「み~?」



 やっとルカとレアとカイから解放されたミーちゃんが王妃様に挨拶にやって来ところで、なんで教えてあげないの~? って聞いてくる。


 前に話したことがあるから、牙王さんの所から烈王さんの所に行く転移門は、まあ教えてもいい。 あれは俺とミーちゃんがいないと使えない転移門だからね。


 問題は今回使った分だよな。


 それ以外は転移門なんて使っていない。でも、代わりに転移プレートを使って移動している。これがばれたら絶対に欲しがるし、王妃様はしなくても話が漏れて他の者が国益のためと取り上げられる可能性もある。そうなったら、ルミエール王国と俺たちの間に亀裂が入ることになる。


 そうなれば今までのような関係ではいられなくなる。それは寂しいことだ。そうならないために転移プレートと、解錠のネックレスのことは絶対に秘密にしなくちゃならない。


 この二つのAFは誰もが欲しがるとても貴重な物だ。もし、持っていることがバレれば厄介事があとからわんさかとやってくることが目に見えてる。ミーちゃんにはあとで釘を刺しておかねば。



「教えたところで俺とミーちゃん以外使えないようになっています」


 嘘です。誰でも使えます。


「ハァ……そういうことなのね。さすが烈王様、抜かりはないわね」


「前にも言いましたが、一つは烈王さんの所に直通ですので、普通の人には使い道もないですよ」


「み~?」



 みんなで遊びに行く~? って迷惑だし! 結局、牙王さんの所までは自力で行ってもらわないといけないから却下です。



「みぃ……」



 そ、そんなに残念がらなくても……。



「それなら、お父様の所へも簡単に行けるわけね。お父様も不思議に思っていたから、ネロくんがあまりにも神出鬼没だって」



 いくつか持っているように思わせておいたほうがいい。どう考えても時間的に無理があるからな。でも、烈王さんと親密という隠れ蓑があるので転移プレートのことは誤魔化せる。


 ある程度バレているので先日行って転移門の話をしてきたことも話した。それと、西の魔王との交渉のことも。



「西の魔王も動き出したってことなのね……」


「動き出したというより、動かざろう得ない状況になりつつあるということではないでしょうか。西の魔王は魔王の中でも温厚ということですから、交渉の余地があると思います」


「み~」


「敵の敵は味方……なのかしら?」



 正直、何とも言えない。そうであって欲しいと思うけど、長い間生きてる魔王だから何を考えているのやら。烈王さんの所に傲慢な使者を送った経緯もある。今回はまともな使者を送って来たようだけど、追い詰められているとも考えられる。



「それを知るためにも会ってみたいと思います」


「国としては願ってもない外交の使者になるけど、私個人としては危険すぎて同意したくないわ」


「ですが、烈王さんの仲介でもあるので、魔王といえど我々に危害を加えてドラゴンと喧嘩する気はないと思いますよ?」


「そう思いたいけど……誰か腕の立つ者を同行させたいわ」


「アンネリーゼ様。魔王相手ではそれこそ勇者でもないと無理でございます」



 的確なご意見ありがとうございます。ニーアさん。でも、そんなに都合よく勇者なんていませんよ。



「ネロくんの所にいる勇者の卵たちはどうなの?」



 いたね……そんな姉弟が。



「まだ、殻すら割ってませんね。五闘招雷の足元にも及びません」


「み~」


「その五闘招雷の絶剣はネロくんの部下になったのよね?」


「フォルテの代官をやってもらっていますが、フォルテの立て直しで身動きができない状況です」


「そ、そう。フォルテなのね……」


「みぃ……」



 グレンハルトさんの所にも行かないと駄目だな。商業ギルドとの近隣の村を回る行商の話も詰めないと……。


 王妃様が困った表情のまま、うーんと唸っている。心配させすぎなのもあれなので、少しは安心してもらえる話をしよう。



「確かに勇者は無理ですが、ドラゴンの護衛はいますよ?」


「み~!」


「えっ!? え、えぇー!」


「……」



 ミーちゃんはふんすぅとミーちゃんの護衛なの~! ってドヤ顔。王妃様は驚きすぎです。逆にニーアさんは何言ってんだよお前、みたいなジト目やめてください。


 ぞくぞくしちゃいます。



「みぃ……」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る