393神猫 ミーちゃん、もう使徒様でいいです。

 ヨハネスさんがやっぱりフローラ様の名前はマズかったかなぁってな表情でこちらを伺っているので、フローラ様から許可が下りたことを伝える。もちろん、神罰と水飴のお供えの件もだ。



「ご、ご神託でございますか……」


「み~」



 と言って平伏してしまった。誰もいない部屋で良かったよ……。面倒くさいけど無理やり立たせ、フローラ様のデフォルメされた絵のページを切り取って渡し、水飴の瓶にこの絵とフローラ様の名を描いた紙を張るようにとフローラ様から指示があったことも言っておく。


 ヨハネスさん、ひざまついた状態で両手天にを突き出すように紙を受け取り、涙を流しながら破ったページを天に掲げているね……。



「神が御自らご神託を書かれたものを手に触れられる時がくるとは……もう、思い残すことはありません! すぐにでもフローラ様の御身の元へ……」


「みぃ……」



 おいおい、まだまだあなたがやらなければいけないことが山積みですよ。勝手にあの世に行かないでください。


 感涙しているヨハネスさんにフォルテの孤児院の院長になってくれるといっているセイラさんにもう少し待ってもらうように頼んでおく。できれば、ルーさんに頼む商隊と一緒にフォルテに向かってもらおうと思っている。



「承知しました。使徒様の仰せのままに」


「み、み~」



 はいはいってミーちゃん、だいぶ投げやりになってます。もう、使徒様でも何でもいいみたい。神猫なのにね。


 家に戻りルーカスさんに馬車の用意をお願いすると、ため息が漏れる。



「馬車を注文することをお許しください」


「いいですねぇ。うちの紋章、でっかく入れてくださいね?」


「み~」


「も、もちろんです……」



 うちの紋章は王妃様の計らいで王宮の紋章官の方々が、ミーちゃんと俺の注文を聞いて作ってくれた。


 盾にドラゴンが絡みつき中央にミーちゃんがでーんと構え、両脇に白狼と黒豹がミーちゃんに両手を掲げているものだ。よく横向きのライオンが立ち姿で両手をにゃんこ構えの格好をしているあれだ。


 出来た紋章を見て王妃様とニーアさんは苦笑い。でも、レーネ様は大喜びで自分の紋章も、ミーちゃんの部分をルカに変えて同じ構図にしたいと言ってくれた。両脇はノアとレアでいいんじゃないかな?


 そういえば、馬車が出来上がったらスミレはどうするんだろう? 絶対に馬車は引いてくれないだろうな。かといって王宮に行かないわけがない。うちでもベン爺さんがスミレの世話をよくしてくれているけど、王宮の馬丁さんはスミレにとって別格のようだ。


『グランド ヴィルヘルム ノルド』でもかなりいい具合に世話してもらっていたけど、王宮の馬丁さんはさすがに世話の焼き具合が半端ない。恋人が訪れて来たかのような歓待ぶりだからね。


 となると、ミーちゃんがスミレに乗って王宮に行く?



「み~♪」



 いいよ~って簡単に言うけど……ミーちゃん用の鞍でも作りますか。


 まあ、今日のところはいつものレンタル馬車を使う。なので馬車を借りに、さっそく本店に転移門で飛ぶ。



「凄いの一言でございます……」


「ねっ、便利でしょう?」


「み~」



 なぜかルーカスさんはジト目。気にしない。気にしちゃ駄目。もう設置しちゃったんだから仕方がない。今の俺にはこれを撤去するすべがない。時空間スキルの熟練度が上がればなんとかなるとは思うけど、今すぐの話ではないからね。


 本店で待っているように言い、ルーカスさんは馬車を借りに行った。面倒だから一緒に行くと行ったら、世間体があるから駄目ですと怒られた。


 貴族でその長たる俺が執事とはいえ使用人と一緒に馬車を借りに行くのは世間体も悪いし、他の貴族たちや町の人々になめられかねないそうだ。


 でも、普段からミーちゃんと町をぶらぶらしているから、今更な感じだよねー。



「み~」



 馬車が本店の裏に着いたのでミーちゃんと乗り込む。ルーカスさんは家に帰る。ちゃんと御者さんも込みのレンタルだ。ルーカスさんも忙しい身の上だからね。



「み~」



 御者さんに王宮に行くように指示を出して窓から町の姿を眺める。さすがに晩秋近いこともあり、窓から入る風も冷たくなってきた。人肌恋しい季節だね。


 ユーリさん早く帰って来ないかなぁ。まあ、ペロでもいいか? もふもふで暖かいし。



「み~」



 そういえば、前に合ったケットシーはどうしてるんだろうね? そろそろ、野宿するには厳しい季節。町猫さんたちの世話になってるとはいえ、うちに来てくれてもいいんだけどなぁ。



「み~?」



 ペロちゃんの友達かも? ってそれはないと思うよ。確かに見た目は可愛いケットシーだったけど、やけに美声のダンディーボイスだったからね。だいぶ年上じゃないかな?


 それにペロと同じ里出身かもわからないし。そういえば、ペロの里もどこにあるか聞いたことがなかった。ヒルデンブルグのような南に住んでいたような気配はなかったから、ルミエール王国内か北の国かもしれない。


 ルミエール王国内なら一度行ってみたいよね。



「み~」



 ペロのご両親に挨拶したいの? お世話になってるより、お世話してるほうなんだけど……。まあ、ミーちゃんがそれで納得ならいいけどね。


 ケットシーの里かぁ……きっと、モフモフパラダイスだろうな。お子ちゃまケットシーは可愛いだろうね。



「み~!」



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