392神猫 ミーちゃん、食い意地なんて張ってませんよ~♪

 口封じは冗談として、本店と家を繋げたのだから使わなければもったいない。


 クリスさんとイルゼさんたちが戻って来たら説明しよう。神猫屋屋台は本店に置いてクリスさんたちだけで移動に使えばいい。


 こうなるとバロが必要なくなるけど、人懐っこく愛嬌もあるのでペットととして飼うことに依存はない。ベン爺さんたちが出掛ける時に使ってもいるしね。


 ベン爺さんで思い出した。温室のほうはどうなっただろうか?



「がう」


「きゅ~」


「み~」



 家のほうで見かけないと思ったらルーくんとラルくんは温室の周りで遊んでいたようだ。白狼三頭も温室の周りで寝そべってゴロゴロしている。



「温室は暖かいからのう。温室の周りも熱が伝わってポカポカじゃのう」



 なるほど、最近めっきり寒くなってきたからね。ここは常時、暖かくしているので寝床には最高だ。でも、ちゃんと家の警護を頼むよ?



「「「アオォン」」」


「み~」



 温室の中に入ると一変して常夏。ちょっと動くと暑いくらいだ。



「み~」



 ミーちゃん、青い芽が出た場所に向かいスンスンと匂いを嗅ぐ。カカオと甜菜は五センくらいまで育ち、ターメリックも芽を出し始めたようだ。サトウキビは見た目は変わってないように見える。



「根が……」


「え?」



 いつの間にか隣にスキニーさんが立っている。何か言ったようだけど小さい声すぎて聞き取り辛い。



「根は伸びとるから心配はいらないと言っておるのう」


「そ、そうなんだ。まだ、スキルを使ったら駄目ですか?」


「まだじゃのう。芽が出たばかりで生命力が足りんのう。今、無理に急成長させると、生命力を使い果たしてしまう恐れがあるのう」


「み~!」



 じゃあ、しょうがないね! ってミーちゃんが、俺の代わりにベン爺さんたちに答えてくれる。そんなミーちゃんの頭をベン爺さんは孫の頭を撫でるようにわしゃわしゃと撫でる。



「がう」


「きゅ~」


「踏んじゃ……」



 そんなベン爺さんにルーくんとラルくんも撫でてと突進するけど、スキニーさんが何かを言いながらルーくんとラルくんを捕まえて抱きあげる。



「がう」


「きゅ~」



 スキニーさんは恐らく、畑を荒らさないようにしたのだろうけど、ルーくんとラルくんにとっては遊んでもらえると思って嬉しそうにスキニーさんの顔をペロペロ。スキニーさん、嫌そうにしていないので好きにさせる。



「み~」



 ミーちゃん、順調に育っていることに満足のご様子。なんといっても、餡子の原料の一つを育てているのだから気になるのだろう。ミーちゃんとにとっては餡子の原料を自給自足できるようになれば、餡子食べ放題になると夢見ているのだろう……そんなことさせませんから!



「み~?」



 温室は順調。次はゼルガドさんだな。



「おう。どうした? 攪拌機の改良は順調だぜ」


「み~」



 最近はみんなとも打ち解けてきてミーちゃんたちの頭を撫でるようにまでなった。偏屈親父も少しづつだけど軟化しているようだ。いいことだ。


 そうそう、攪拌機の初号機は木製だったけど、改良を加えていくうちに半分が金属製に変わっている。その分重くなったけど格段に使いやすくなった。本店のオープンに合わせて製品化しようと思っている。カティアさんとも相談だな。


 だけど、今日ゼルガドさんに会いに来たのは違う理由。



「銃を作ってください。注文が入りました。リボルバー式が三十。ライフル式が十五です。弾は各五百の二種類なので、四万五千発です」


「み~」


「きゅ、急だな……」



 まあ、ゼルガドさんにとっては急に思われるかもしれないけど、クイントから王都に来る間世間では行方不明になっていたわけで……。


 ゼストギルド長を介してセリオンギルド長から、俺に注文がきたみたい。それならとゼストギルド長も注文してきた。加えて、義賊ギルドのミストレティシアさんも正式にレティさんを通して注文してきたのだ。


「前に言ったように分業しても構いません。個別に部品を作らせてゼルガドさんが組み立てるほうがいいのでは? 特に弾は一人で作ったら大変ですよ?」


「そうだな考えてみるぜ。で、期限はいつまでだ?」


「先方からはできるだけ早くと」


「そ、そうか……」


「み~」



 顔を引きつらせたゼルガドさんの元を後にする。頑張ってください。


 さて、あとすることはフォルテの孤児院の件だな。会いに行きたくないけど、教会のヨハネスさんに会いに行こう。



「ようこそおいでくださいました。使徒様」


「だから、その使徒様はやめてください!」


「み~!」


「何を仰られます! フローラ様直々の仰せ。誰が何と言おうと使徒様です!」



 鬼気迫る勢いで詰め寄られる。美女に詰め寄られるなら嬉しいけどおじさんに詰め寄られても嬉しくない。



「他の人の前では絶対に秘密ですからね!」


「当たり前です! それくらいの分別は持ち合わせております!」


「みぃ……」



 ミーちゃん、ヨハネスさんを怪しいの……って見ています。俺の同感だ。



「今日来られたご用件は何でしょうか? 水飴の件でしょうか?」



 水飴の作り方から製造、そして売り上げの全てを教会に正式に寄付という名目で渡したのだ。



「違います。ですが、何度も言いましたが売り上げは孤児院と恵まれない人への奉仕として使うことは忘れないでください。もし、懐に入れるようなことがあれば……」


「あれば……」


「前任者のように神罰が下るでしょう。努々お忘れなきよう。フローラ様は見ておられますよ」


「ゴクリッ……も、もちろんでございます。全ての教会にフローラ様のご慈悲と伝えております。他の教会でも準備でき次第製造に入る予定です。そこで……水飴にフローラ様の御名を冠してもよろしいでしょうか?」



 うーん。どうなんだろう? やっぱり不敬になるのかな?


 ミーちゃん、俺の肩からスルスルと鞄に降りて行きテシテシと叩きだす。


 まさか!? 来たのか? 来たんですね? 



 ハウツーブックを取り出して確認。ページが増えている。なになに……問題ない。名前と可愛い絵が欲しい? そこにはデフォルメされた可愛らしいフローラ様? の絵が描いてある……何気に上手だ。


 他にはさっき俺が言った売り上げを着服したら神罰を加えると書いてある。


 最後に水飴を祭壇に置き、自分に奉納しろとも書いてあった……。教会の者に着服するなと言いつつ、自分は着服するんかい!


 さすが、ポンコツ神様の姉。ミーちゃん並みに食い意地が張ってるな。



「み、み~?」



 目が泳いでいますよ。ミーちゃん。



「み、み~♪」




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