391神猫 ミーちゃん、家と本店を繋げました。

 牙王さんの所へは午後に行くとして、午前中はこの家と本店を繋げる転移門の設置をしよう。


 さて、どこに設置しようか? ミーちゃん、どこがいいと思う?



「み~?」



 倉庫辺り~? との回答が返ってくる。確かにその辺が無難かな。本店とここを繋げるにあたり懸念することは防犯だ。この転移門は迷宮用なので、使用者フリーになっている。なので、ないとは思うけど、本店の転移門からうちに乗り込まれる可能性もあるわけだ。


 なので、対策として直接家の中に転移するのではなく、倉庫に転移門を設置すればなにかあっても時間が稼げる。それに倉庫なら馬舎のすぐ横なので、うちの馬や馬舎を寝床にしている白狼たちが気付くはずだ。


 本店のほうは逆に店の中に設置しようと思う。今度、ヴィルヘルム支店からこちらに移ってくる男性ドラゴンに夜は常駐してもらおうと思っている。ドラゴンなら防犯上最高品質間違いない。



「み~」



 ミーちゃんも納得のようです。


 倉庫に来て転移門の設置。毎度のことながら、なにか体から抜けていく感覚が慣れない。それでも、ちゃんと設置できている。じゃあ、本店に行きますか。


 ルーくん、ラルくん、それに嫌がるレティさんを引っ張り本店に向かう。どこがいいかな? 居住スペースに小さな倉庫のようなスペースがあったのでそこに設置することにした。設置完了。


 さあ、ちゃんと作動するか実証実験だ……と、思ったら、ルーくんとラルくんが転移門に入って消えて行った。ちゃ、ちゃんと向こうに着いているよね?



「み、み~」



 レティさんと転移門に入るとちゃんと倉庫の中だた。ルーくんとラルくんは俺たちを見ておかえり~って表情をしている。



「便利だな。少年。だが、防犯上問題あるのではないか?」



 レティさん、珍しく仕事らしいことを言っている。なので、本店にはドラゴンに常駐してもらうことを伝えた。



「クリスか?」


「いえ、ヴィルヘルム支店から二人呼びます」


「人外魔境だな……」



 もう少ししたら、妖精族も増えるので言い得て妙だね。



「み~」



 設置も完了しもう使えるのだから使わないともったいない。というわけで、全員集合といきたいところだけど、このことを知るのは必要最低限のほうがいいよね。


 クリスさんは神猫屋で出かけているので、ルーカスとカティアさん、ララさんとヤナさんに伝えることにした。ヤン君親子やその他の人たちには教えない。教えてもいいのだけれど、絶対に秘密という重荷を背負わせたくない。



「ハァ……」


「み~?」



 ルーカスさん、なんです? そのため息は? 他の三人も顔を引きつらせているんですけど?



「ネロ様が非常識だとは認識していましたが……ここまでだとは」



 なんですか!? その非常識って! 俺くらい真面目で常識的な人間いないでしょう!



「みぃ……」



 ミ、ミーちゃんまで!?



「ネロ様。常識が聞いて呆れます。自前の転移門なんて、どこの王侯貴族ですか!」


「い、一応、貴族なんですけど……?」


「ネロ様!」


「はひっ!」


「非常時の抜け道としてならいざ知らず、王都の中央部にいく時間を短縮するためだけなどということで、転移門を設置することなどありえません!」


「ネロ様。神猫商会に資金が潤沢とはいえ、これだけの物を設置するのにどれだけかかったのでしょうか?」



 なんだ、ルーカスさんとカティアさんはお金のことを心配してたのか。



「タダですよ?」


「み~?」


「「「「……」」」」



 あれ? みんな険しい表情をして無言なんですけど?



「いいですか、ネロ様。今この国に転移門を作れる者が何人いるとお思いですか?」



 クイントの流れ迷宮で転移門を作る人を呼ぼうとして、多少時間がかかると言っていた。転移できる人は王宮にも各ギルドにも何人か抱えているとも言っていたし、五人くらいはいるんじゃない?



「私が知る限り、現在転移門を作れる方は一人です。それもだいぶご高齢と聞いています。もし、このことが他に漏れれば……どうなるかおわかりいただけるでしょうか?」


「さ、さあ?」


「み、み~?」



 ル、ルーカスさん、こ、怖いですよ。



「まずは、国が黙っていないでしょう。我々のことを信頼してくれていることは嬉しいことですが、ネロ様は甘すぎます。ネロ様に仕えているとはいえ、国から雇われている身の上。これほどの事案、黙っているわけにはいかないでしょう」



 他の三人も厳しい表情のままだ。まあ、うちの情報がダダ漏れだったのは知っているので問題ない。知られて困ることなんてないしね。逆に知ってしまったら相手が対処に困ることだらけだと思う。


 まあ、心配しているなら安心させるのも、主人の勤め。



「王妃様にはこのことを話してあるから心配ないよ」


「み~」


「「「「!?」」」」


「王妃様とお父上の大公様に一つずつ献上する話でまとまっているから」


「み~!」


「本当でございますか?」



 こんなこと嘘を言ってもしょうがないでしょう……。



「事情があって設置するのが俺しかできないという条件があるけどね」


「王家の非常用の抜け道をネロ様が……設置した後、口封じなどは……」



 いやいや、それはないでしょう……な、ないよね? 



「み、み~」




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