385神猫 ミーちゃん、牙王さんの説得をする。
ミーちゃんには悪いけど、家に帰った。
「みぃ……」
俺たちだけで泊まったら、ペロたちに恨まれるよ?
「み、み~」
次の日、烈王さんの所に行く前に牙王さんに話をしておく。
「なるほどな。西の魔王か……」
「古の魔王ですな」
牙王さんもロデムさんも神妙な表情だ。まあ、当然だろう。相手が魔王なんだから。
「み~?」
「う、うむ。ミー様がそう言うなら……なぁ?」
「そ、そうですな。我らが恩人のミー様がそう仰るなら……」
ミーちゃん、牙王さんに仲良くなることは良いことだよ~? って上目遣いでうるうる。俺でも断れん……。
「ゴブリンキングは災厄。何としても、強大になる前に倒さねばならない相手だ」
「問題は南にいる魔王共ですな」
魔王とはいっても準魔王。実力的にはグランベアクラス、なんだそうだ。それでも牙王さんに怪我を負わせ、白狼族たちを窮地に追いやった相手でもある。決して侮ってよい相手ではない。
それが二体もいて、ゴブリンキングが周囲に攻撃を仕掛け混乱している隙に乗じて、ヒルデンブルグに攻めようとしている。
それだけじゃない、隣国のロタリンギアまでヒルデンブルグを狙っている。もし、ヒルデンブルグが万が一どの勢力かに敗れたとしたら、次の矛先はブロッケン山に向くだろう。
強力な飛竜隊がいるといえ、周りが敵ばかりでは厳しいものがある。ルミエールも主力はゴブリンキングを相手にしなければならない。援軍を出すといっても、所詮寄せ集めの兵。率いるのが神猫姫将軍ってことが唯一の救いだね。
「み~!」
ミーちゃんはなぜかやる気満々。姫将軍といえばオークにやられるのが定番だけど、ミーちゃんにかかればオーク如きでは相手にならない。オークはお肉だー!
「み、み~?」
そ、そこまで言ってないよ~? って、いえ、言ってください。
「みぃ……」
すみません。取り乱してしまいました。話を戻しましょう。
「だからこその同盟なのです!」
「ほう。どういう意味だ?」
「ご説明願えますかな? ネロ殿」
「み~」
ミーちゃんがそう申していますので、整理しながら説明しますね。
ヒルデンブルグの回りが敵だらけで危険なのは周知の事実。何度も言うけど、ヒルデンブルグが落ちた時点でこちらもチェックメイト。ルミエール単独で全てを跳ね返すことは不可能だ。勇者でもいれば別だけど。
ヒルデンブルグを巡る情勢は既に動き出していて止めることはできそうにない。なにより、ロタリンギアが胡散臭い。ロタリンギアというより、ロタリンギアを裏で操る奴がだけど。
いろいろ考えていると、ロタリンギアの後ろで糸を引いているのが魔王というのは、あながち間違っていないのではと思えてくる。
どう考えても、全てがロタリンギアの思惑が行く着く先に進む状況になっている。そう、この大陸制覇だ。この大陸ではロタリンギア、ルミエールにヒルデンブルグが三大強国。そのうち二国は仲が良く、領土拡大を望んでいない。
本来であれば、その状況ではロタリンギアは動く事ができないはずだった。だけど、ルミエールに災厄が訪れる。ゴブリンキングだ。戦い奪うことしかしない、魔王ですら嫌がる魔王。過去の戦いから見ても討伐したとしても国力が大きく下がってしまう。
これだけなら過去にも同じような事があり、ルミエール、ヒルデンブルグの同盟で乗り切ってきた。
が、しかしここでルミエールとヒルデンブルグを繋ぐブロッケン山で準魔王が魔王となるべく起ち上る……が、神猫に阻止される。もしこれが成されていたら、ルミエールとヒルデンブルグの行き来が大幅に減少する。
事実、今現在、西の街道はゴブリンキングのせいで封鎖。ブロッケン山も通る者がおらず、大回りになる東の街道のみが使われている。援軍を出したくても飛竜隊でもなければ大変な行軍となるだろう。
ここまで見ても、ことの発端はモンスター。それも魔王級。
「それが魔王によるものだと?」
「ロタリンギアの北東には古の魔王がいますが……」
「み~?」
そうなのだ。ミーちゃんがな~に~? と言うように俺たちが思うほど、牙王さんたちには納得がいかない。
魔王というのは力が全て。強い者が上に立ち、弱い者を従える。単純でそれでいて堅固な結束。それを良しとしてきた魔王が、ここまで手の込んだ策を弄するだろうか? と思ってしまうのだろう。
だけど、それしか考えられない。ロタリンギアに有利すぎる状況。かと言ってロタリンギアの内情が良くなっているかといえばそうではない。ロタリンギアにはオークキングがいる。
ロタリンギアに有利すぎる状況と言ったけど、裏を返せば人族同士で争いお互いに疲弊して、モンスター側に有利とも言えるんだ。そのモンスターの親玉が魔王なんだ。
西の魔王はこの大陸では比較的温厚な魔王と言われている。じゃあ、他の魔王は?
この大陸に人族が来て魔王を退けディメール王国を建国。その後、多くの国が起ち、北と南の魔王が倒され今に至る。古の魔王と呼ばれるんはロタリンギアの北東に座する魔王と西の魔王だけ。準魔王は多いけど実質魔王と呼べるのは古の魔王二体と新たに召喚されたゴブリンキングとオークキングだけ。完全に魔王サイドが減少している状況。
もし、俺が魔王なら何かしらの手を打つと思う。
もし、俺が魔王なら……!?
「み~?」
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