384神猫 ミーちゃん、遠慮なんてしません。
古の魔王。
流れ迷宮の管理をしている神人と、この世界の覇権を争ったモンスターの王。
正直に言えば、怖い。でも、モンスターの中には牙王さんたちのように争いを好まない者もいる。
それに今回はドラゴンの烈王さんを介してとはいえ、人族と同盟を結ぼうと考えている。
相手が魔王とはいえ、こちらから平和への道を閉ざすのは愚の骨頂。取り敢えず、話し合いはするべきだ。
「ウハウハか……。確かに西の魔王と同盟が結べれば、後方を気にせず戦えるがのう。決して楽な交渉ではないぞ。それにもし襲われでもしたらどうするつもりじゃ?」
「楽な交渉ではないのはわかっています。ブロッケン山の牙王さんに協力を仰ごうと思っています。牙王さんもスパイダークイーンと同盟を結んで、ゴブリンに当たっていますから味方が増えるなら協力してもらえると思います」
「み~!」
任せて~! ってブロッケン山の真の主でしたね……ミーちゃんは。
「身の安全に関しては、護衛を烈王さんから借りる予定です」
実際は予定ではなくもういるんですけどね。出掛けたまま戻って来てないけど。グラムさんなら逃げる隙くらいなら十分に作ってくれるはず。その作ってくれた隙に転移プレートを使って逃げればいいだけ。問題ないな。
「ドラゴンの護衛か……。ネロ君は烈王殿に可愛がられておるのう……」
ミーちゃんが、ですけどね。まあ、俺も烈王さんの弟子ですから。
実際のところ西の魔王だってドラゴンを敵に回す気はないだろうから、交渉が決裂したとしても襲われることはないだろう。
もしそれでも万が一があったら、ゴブリンキング戦の前に切り札使っちゃうよ? 止め用に宗方姉弟も連れて行こうか?
「よかろう。この国にだけのことでは済まされんからな、アンネリーゼには儂から手紙をだそう。西の魔王との交渉はネロ君に一任するとな。本来であれば何人か文官を連れて行ってもらいたいところだが、ネロ君のように魔王と交渉するという気概のある者おらぬうえ、無理に連れて行ったとしてもネロ君の足手まといになるだけじゃからのう」
「み~」
そうですね。気心の知れた仲間だけのほうが良いです。取り敢えず、俺が行って話をしてから、同盟を結ぶのであれば改めてそういう場を設ければ良いと思う。何があってもいいように烈王さんの島とかでね。
「実はその烈王さんから以前流れ迷宮用に、転移門を自由に作れる札をもらったことがあるのですが、いくつかは設置してきたのですが二つほど余っているんです」
「ほう。それが儂にくれる良いものということじゃな」
「はい。烈王さんからは自由に使っていいと許可を得ています。迷宮用の転移門なので長距離は飛べませんがヴィルヘルム近辺なら問題ないと思います」
「烈王殿が作られたとはいえ、国宝級の代物じゃな……。本当によいのか?」
「正直に言いますと、本当はさっきの件がなくても大公様に差し上げるつもりでした。もう一つのほうをアンネリーゼ様あげる約束をしたときに、盟友であるヒルデンブルグを差し置いて、ルミエールだけが烈王さんの恩恵を授かるのは道義上よろしくない。ということで、特使に任命されてここに来た次第なんです」
「み~」
特使だなんて大袈裟すぎるって王妃様に言ったら、転移門の札を同盟国に内密にとはいえ譲渡するのだから中途半端な権限を持たせるわけにはいかない、って言われた。特使は巡察使なんか目じゃないほどの権限を持っていて、ほぼ全権を委任されているほどの最上位の使者だそうだ。
だから、大公様は特使と聞いて穏やかじゃないなって言ったんだろう。
そういえば、転移門の札についてはニーアさんから、ルミエール王国お抱えの空間士の中でもエリートの転移士ですら作ることができないどころか、未だかつて転移門を好きに設置できる転移門の札のことは記録どころか言い伝えでさえ聞いたことがない代物と聞いている。
その空間士っていうのは、空間スキルや転移スキル持ちのひとたちで国やギルドに所属している人たちを指す。流れの空間士っていうのはほとんどいないそうだ。うちの屋敷を他の場所から移転させたのも空間士だね。
その中でも転移スキル持ちはエリート中のエリートなんだけど、転移スキル持ちは短距離しか転移できないとはいえ暗殺などの観点から、反強制的に有無を言わさず国かギルドに所属させられる。逆を言えば、国やギルドに所属していない転移スキル持ちは闇ギルドの手先ってことになるらしい。
あれ? 俺、ヤバくない? いやいや、それ以前に時空間スキルってことが知られること事態が危険だよな。なんで今まで気づかなかったんだ……あれほど彩音さんに平和ボケには気をつけるように言われていたのに……。どうしよう?
やっぱりこういうことは烈王さんに相談かな? トンボ返りになるけどしょうがないね。
「ということで、どこに設置するか考えて置いてください。三日後にまた来ますので」
「うむ。承知した。ヴィルヘルムに滞在するならいつもの宿を用意しよう」
「嬉しいお話ですが、いろいろ行く場所もあり私とミーちゃんだけなので神猫商会の支店でも十分なので、今回は諦めます」
「そうか。じゃが、必要なときは『グランド ヴィルヘルム ノルド』に泊まると良い。ネロ君が行ったら何を差し置いても泊めるように言っておくでな遠慮は無用ぞ」
「み~」
何を差し置いてもって……。ミーちゃんもやったね! って……。
ちょっとは遠慮しようよ。
「み~?」
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