386神猫 ミーちゃん、もふもふちゃんを勧誘する。

 自分のことなが、また突拍子もないことが脳裏に浮かんだ。


 そう、もし俺が魔王なら……。


 そうなんだよ。もしかしたら、ロタリンギアを後ろで操る魔王の下に、異世界から召喚されたもしくはこの世界に迷い込んだ者がいるんじゃなのか?


 その者が軍師のように魔王に助言していたら? 今の状況を説明できるのでは?


 魔王側の神が召喚した場合や偶然繋がった道の場合、烈王さんでも異世界との道が開いたことを感知できないようだから、知らない間に異世界の人間が来ている可能性は十分にある。


 今回、ゴブリンキングが魔王側の神により召喚されたことを顧みれば、迷い人と考えるより全てが繋がったうえでの召喚された者のようにも感じられる。


 神の介入……それが何を意味するのか。正直、わからない。モンスター側が神が介入するほど窮地に立たされているとは考えにくい。この大陸は今ゴブリンキングやオークキングがいるけどそれ以外は、意外と均衡を保っているように見える。


 他の大陸はどうなのだろうか? 『グランド ヴィルヘルム ノルド』で会った外国の商人や外交官に緊迫した様子はなかった。この大陸以外は割と平和なのかも。


 と、ひとり思いにふけっている間にも牙王さんとロデムさんの話は続いていたようで、



「ネロ殿のが考える西の魔王が関わっていようがいまいが、今は傍観できる状態ではありませんね」


「南の魔王が動く今、俺たちだけが何もせずにのほほんとしてるわけにはいかねぇ。古くからの因縁を断ち切るのは俺たちの宿命……いや、義務なのかもしれねぇな」



 そのためにも同盟が必要と理解してくれたようで、西の魔王との外交の時にはロデムさんも一緒に来てくれることになった。



「み~」


「ふむ? うちのちび助たちが欲しい?」


「以前、護衛に付けた者たちではお役に立てませんでしたか?」


「み~」



 違うよ~って言って説明しようとするけど、どう説明していいか悩むミーちゃん。


 護衛の四頭は良くやってくれている。 主にレティさんの相手を嫌がらずに……。まあ、そのうち一頭はグレンハルトさんと一緒にフォルテに行ってしまったけど。


 どう、説明するか迷ったけど、事実を話そう。ルミエールの王妃様とうちのレティさんがミーちゃんのお供にルーくんがいるのを羨ましがって、自分たちももふもふが欲しいと言ってることを話した。



「もふもふってよ……」


「ネロ殿の奥方ならば是非にお呼びませぬが、ルミエールの王妃となると……」


「人質か……」


「み~?」



 ひ、人質!? そんなことまったく考えもしなかったよ……。




「み~!」


「ミー様の弟妹ぎみが王宮におられるのですか?」


「み~」


「ほう。それなら一族の者を出しても悪いようにはされないか……」


「み~」



 ミーちゃん、可愛がってくれるよ~って説得をしてくれています。



「わかった。ミー様がそこまで言うなら、友好のために出そうじゃないか」


「将来的にはルーくんのお嫁さんにしたいと思っています」


「あいつのか?」


「み~」


「ブロッケン山のルーくんとルミエールで育てられた子が結ばれれば、絆も強くなりますから」



 婚姻外交ってやつだね。



「なるほどな」


 今回来てくれるもふもふちゃんは、白狼族の中からルーくんと近い歳の女の子二人になった。このもふもふちゃんたちは牙王さんの遠い一族で、一応牙王さんと血が繋がっているので家族と言っても過言ではない。


 ルーくんより少し小さいくらいかな? 一人はとても元気で、もう一人はおとなしい子のようだ。


 すぐに連れて行っていいぞ、なんて牙王さんは言うけどちゃんと親御さんと話をしてからでお願いします。向こうに行ったらなかなか帰って来れなくなるから。



「み~」



 これで、レティさんと王妃様の件は片付いた。この後は一度、家に戻り馬に鞍をつけてヴィルヘルム支店に飛び、嫌々するレティさんを伴い味噌造りをしている村へと馬を走らせる。スミレじゃないので時間はかかったけど無事着いた。スミレとユーリさんは今頃どうしているだろうか? いつ頃帰って来るんだろうね?



「帰ってこなければ私が第一夫人だな。少年。それにしても、熱いぃ……」


「みぃ……」



 なんてこと言うのでしょう。でも、本音は気にしているんだよね。素直じゃないから。レティさんはツンデレさんだね。


 村に着くと、大豆畑はもう刈り入れが終わっているように見える。



「おぉ、神猫商会さん。よく来られました。刈り入れも終わり、そろそろ仕込を始めようと思っていたところですよ」



 村長さんはニコニコ顔で迎えてくれる。


 こっちの世界では大豆は家畜の餌として使われるので、人の食料としては流通していない。先の夏祭りの際に枝豆として食べことがきっかけで、枝豆として食べる人が増えたらしい。それでも、成熟した大豆を食べる人はいない。神猫屋できな粉として売っているけど、原材料を知っている人は少ないと思う。


 そういうことなので、大豆の価格は安い。今回の味噌の仕込はこの村の大豆だけでは足りず、近隣の村々から買ったそうだ。あの蔵を使って造るのだから、相当な量が必要になるのはわかっているけど、どんだけだよ!



「み~」



 いやまあ、ミーちゃんの言うとおり、楽しみではあるけどね。



「塩ですか?」


「塩ではなくて、塩を作るときに出るにがりが欲しいんです」


「うむぅ。にがりですか? 聞いたことがないですね」


「み~?」



 やっぱり知らないのかぁ。豆腐を見たことがないから、そうだろうとは思っていたけどね。村長さんに塩を作っている所を聞いてみると、ヴィルヘルムの近くでも作っている所があるらしいので詳しく場所を聞いておいた。今度行ってみよう。


 せっかく村に来たので、新米ともち米を買って帰った。ヴィルヘルム支店本店でも必要なので、安く仕入れられるここで買う。大量に買ったことで村長さんも大喜び。この村とは長い付き合いになるので、win winの関係でいたいからね。



「み~」





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