379神猫 ミーちゃん、王妃様はやっぱり侮れません。
「それはもはや国宝級などではなく天宝、いえ神宝級ではないでしょうか……」
「烈王様もなんてものを作ったのかしら……それも、簡単にあげるだなんて……」
まあ、烈王さんですから。
「み~」
「ネロくん。その転移門まだいくつか持ってるのよね?」
「二つ使ったのであと三つ残ってます。短い距離なので使い勝手が悪いんですよねぇ」
「神宝級の転移門を使い勝手が悪いだなんて……この子、考えていた以上に大物だったようね……いえ、その反対もあり得るわね……ぶつぶつ」
なんか王妃様がぶつぶつと独り言を言ってるけど聞き取れない。
しかし、この残りの転移門、本当に使い道がなくミーちゃんバッグの肥やしになっている。烈王さんの話では十キロ程度が精々って感じだった。
これが向こうの世界だったらいくらでも使い道があったのだろうけど、この世界で十キロでは中途半端過ぎるのだ。王都から十キロ行ってもなにもないからね。
もうすぐ、神猫商会の本店の改装が終わるから王都の端の
「ねぇ、ネロくん。それを譲って欲しいって言ったら、譲ってくれるかしら? ちゃんと烈王様にもネロくんに対価を払うわ。王宮だっていつも安全とは限らないの、少しでも多くの手札が必要なのよ」
王妃様の言ってる意味はわかる。なにかあった時の緊急用の逃げ道を確保したいのだろう。まあ、歴史あるルミエール王国の王宮だから多くの隠し通路があるだろう。俺のマップスキルにもそれらしきものが写っている。口が裂けても言わないけどね。死にたくないし。
「うーん。烈王さんに聞いてみないとなんとも言えません。王妃様が悪用するとは思いませんが、烈王さんと俺とミーちゃんの信頼の上で作ってもらったものですので」
「そうよね……駄目元で良いから聞いてもらえないかしら?」
「わかりました。もし、了解を得られた場合の報酬ですが……」
「あら、ネロくんが報酬の件で前向きなのは珍しいわね」
まあ、烈王さんからは了解を得られると思う。なので、あの件をお願いすることにする。隠れ蓑のことだ。
かくかくしかじかと話をするにつれ、王妃様の口元がヒクヒクと動いてらっしゃいます。
「そ、それは、これからも騒動が起きるということかしら……?」
「み~」
「ドラゴンはフリーダムですからね。それとも王妃様はひ弱なこの身の私に、ドラゴンに躾をしろとでも?」
「「……」」
王妃様もニーアさんも二の句が継げずにいる。ヒルデンブルグ出身のお二人は、ドラゴンの姿を見たことはなくても大公様からドラゴンの話は聞いているはず。ドラゴンを見たことがなくても飛竜は見たことがあるはず。エレナさんのバロンだって王宮に来てるしね。
あんなのを躾けるなんて無理。炎を吐かれて消し炭になるのはご免だよ。ミーちゃんだったら躾けれるかもしれないけどね。俺には無理!
「悪いことばかりではありませんよ。ここでドラゴンに恩を売っておけば魔王討伐で手を借りれるかもしれませんよ?」
「み~」
「「!?」」
もう借りる約束はしているけど、王妃様に悪い取引ではないことをアピールしておかないとね。
「ドラゴンが私たちに手を貸してくれると?」
「一から十までは無理でも一か二くらいは貸してもらえればなと」
「それをネロくんが交渉してくると?」
「俺の交渉というより、ミーちゃんのお願いってとこですね」
「み~!」
ミーちゃん、とっても良い笑顔で、まっかせなさ~い! って言ってますが、もう烈王さんから言質は頂いているから別にこれからミーちゃんのすることはないよ?
「み、みぃ……」
「ミーちゃんなら世界征服できるのではないかしら……。わかりました。あとのことは、こちれが責任を持ちますので、この件はネロくんに一任します。良い報告を期待してます」
「はっ。非才なる身の全力をもって」
「み~」
クックック……うまくいった。話の論点をうまくすり替え、こちらの不手際を帳消し。そしてなにより、面倒事を王妃様にな擦り付けることに成功。
今回のミッションは大成功だぜ!
ねぇ、ミーちゃん!
「み~!」
「あっ、そうそう。この件はお父様にもちゃんと話を通しておいてね。ヒルデンブルグの盟友とベルーナが飛び越して話をすると、外交上問題があるから」
げっ、そういう面倒なことはそっちでやってほしいのですけど……。ニーアさんが手形を渡してくる。
また巡察使か? と思ったら、特使となっている。それも、国王様のサイン入りだ……。
「よろしくね♪」
「はい……」
「みぃ……」
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