366神猫 ミーちゃん、ハンマープライスです。

 来てくれた方にはちゃんと説明する。注文された分の魚はちゃんと用意していると。


 その上で、いくつかの珍しい魚介類を売りたいと思うが、数が少ないのでセリ形式で売りたいと伝える。


 面白そうだと多くの人が納得してくれたけど、現金の持ち合わせがない人がほとんどだった。


 まあ、ここに来ている人たちは王都の指折りのレストランの料理人や、貴族の台所を預かる料理人なのでお金は後日払いで良いことにした。


 なぜって? それは神猫商会の会頭であるミーちゃんが、競りをやりたくてお金なんて良いから早くやろう~よ~ってせっついてきている……。


 会頭の意見には逆らえません。はい。


 ミーちゃんがそわそわして、俺をテシテシしてくる。


 しゃーない始めますか。


 商品を載せるテーブルの上に小さい木箱を置いてミーちゃんを乗せる。ハンマーは無いけど即席のオークショニア用の壇ってことで。


 ミーちゃんもわかったようで、ハンマーの代わりに可愛いお手てで壇をテシテシ。



「それでは最初の商品です」



 出す商品の順番はミーちゃんにお任せ。


 出てきたのは大きな海老。周りからおぉーっと驚きの声が上がる。


 出てきた海老は伊勢海老に似ているけど大きさが半端ない。一メル近い大物だ。名前を市場で聞いたけど忘れた。まあ、伊勢海老で良いや。


 ヴィルヘルムの市場の人も、これだけ大きい海老は滅多に見られないと言っていた。だけど、ここだけの話、大味であることと調理し難いことから人気がなく安く手に入れている。


 ミーちゃん的にはインパクト狙いが上手くいったって感じかな。



「み~!」



 まだ、最初の商品だというのに、競り値が飛び交う。あまり高くなり過ぎるのもなんなので、切りの良いところでミーちゃんの可愛いお手てハンマーがテシっと鳴る。


 競りは半分お遊びみたいなものだからね。それでも、ウハウハの値段で競り落とされる。ぐふふふ……やめられまへんなぁ。


 二つ目の品は大きな貝。シャコ貝に似ている。これも一メルを超える大きさだ。生で食べても美味しいし、焼いて食べても良い。これだけの大きさだと何人分なんだろう?


 またある程度、値の上がったところでミーちゃんハンマーが鳴る。お買い上げありがとうございました。


 次に出てきたのはテーブルから頭と尾が飛び出すほどの大物。カジキマグロだ! たぶん。


 鋭い角から尾びれまでの全長は三メルを優に超える。角部分は加工して銛の先端にに使われるくらい鋭く硬い。


 本日の競りの目玉商品が登場です。みなさん、目をギラギラさせるも、固唾を吞んで競りの始まりをまつ。



「み~」



 ミーちゃんの声が始まりの合図となり競りが始まる。


 凄い速さで値が上がっていく。ミーちゃん興奮しながら見守っている。


 実はこの魚、市場でも久しぶりの大物で丁度俺とミーちゃんが市場に行った時に競りにかけられるところだった。


 商業ギルドに入って居れば競りに参加できることは以前に聞いていたので、参加してみることにしたのだけど……。


 ミーちゃんがどハマり。


 競り値をどんどん上げていく。最後は三組だけでの競り合いとなった。相手も必死に競り落とそうとするけど、その度にミーちゃんから値を上げてと催促が入る。


 正直、どんどん競り値が上がっていき、血の気が引いていく思いだった。


 競り落とした時は、久しぶりにミーちゃん雄叫びを上げてたね。


 おっと、競り値がミーちゃんが競り落とした値を超えた。競りに参加している人も三人だけにになっている。


 ミーちゃんもこの白熱した競り合いに、どこで止めるか悩んでいるようだ。まあ、他の人たちから見れば顔を洗ったり、首を傾げたりと可愛い動作にしか見えないだろうけどね。



「み、み~!」



 競り合いが二人に絞られミーちゃんが競り落とした値の二倍になったところで、やっとミーちゃんハンマーが振り降ろされる。


 いやー。ミーちゃんもなかなか粘ったね。まさか、ここまでの値段になるとは……ウハウハだよ。


 さて、競り落としたのはどこかの貴族のお抱え料理人らしく、執事らしき人に上手くやればはく製にすることもできると言って競り落とさせたようだ。


 確かにこれほどの大物を剥製にすれば見栄えは良いだろうね。特に貴族なら他の貴族に対して自慢できる逸品になるだろう。


 うちの壁にも作って飾ろか?



「み~!」



 冗談だからね。ミーちゃん。



「みぃ……」



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