364神猫 ミーちゃん、ブロッケン山の主だけに良くわかってらっしゃいます。

「それで、完成した街道の状況はどうなのかしら?」


「荷馬車が二台擦れ違えれる幅があります」


「み~」



 他にも中間地点に壁で覆った野営地を作ったことなどを話した。


 ミーちゃんが王妃様の前でどや顔してます。ここはどや顔しても全然問題ない。とても誇れることだからね。



「牙王殿はなんて言ってるの?」


「以前交わした盟約通り、こちらが約束を違えない限り協力すると言ってます」


「み~」


「端的に言えば、どういう形で協力してもらえるのかしら?」



 現状、ヒルデンブルグ大公国に騎竜隊の駐屯地の場所を貸している。これはヒルデンブルグだけでなく、ルミエール王国にも利があることだ。それは王妃様もわかっている。



「商隊がブロッケン山に入った時点からブロッケン山を出るまでの間、牙王さんの配下の者が護衛に付きます。牙王さんの配下の者が居れば、余程のことがない限り安全です。注意するのは、はぐれの野良モンスターくらいです」


「み~」


「それは事前に連絡が必要なのかしら?」


「必要ありません。ブロッケン山に人が入れば彼らは気付きますので」


「ずっと商隊の護衛をするのは大変じゃなくて?」


「み~」



 ミーちゃん。みんな暇だから~って……そんなこと王妃様に言えませんよ。



「彼らはこの同盟を重んじています。それを誠意ある行動で示してくれることでしょう」


「わかりました。それでは来月行われる、レーネの誕生日式典の日に発表しましょう。宝剣の献上とネロ男爵の正式なお披露目に添える良い話になるわ」


「み~」



 ミーちゃんを筆頭に、エレナさんとニーアさんがうんうん頷いている。正直、考えるだけで胃が痛い。



「レーネへの誕生日プレゼントも期待してるわよ」


「私も欲し~い~」



 エレナさん、誕生日を迎えるということはひとつ歳をとるということですよ?



「……いらない」



 じゃあ、そういうことで問題無いですよね?



「……はい」



 乙女のエレナさんは置いといてレーネ様のプレゼントかぁ。候補はいくつかある。まあ、まだ時間があるからゆっくり考えよう。


 そして、誕生日といえばケーキ。こっちの常識ではどうなのだろう。そもそも、ホールのケーキを見たことがない。焼き菓子やタルトは見たし食べてもいる。だけど、生クリームでデコレーションされたケーキは見たことがない。


 これは試してみる価値ありかな? 膨らまし粉とアーモンドの粉末は義賊ギルドのミストレティシアさんにお呼ばれした時に確認している。それがあればスポンジケーキは作れるだろう。


 生クリームは高いけど手に入るし、果物はヴィルヘルムに行けばいくらでも手に入る。


 俺ひとりでやるより宮廷料理長を巻き込んだ方が良いかも。材料も人手も十分にある。



「どうしたのネロくん? ひとりでニヤついて気味が悪い」


「み~?」



 エレナさん、失礼ですよ。レーネ様のために秘策を考えていたというのに。



 思いついたが吉日。宮廷料理長の所に行って話をしよう。



「ケーキ? なんだそれは?」



 宮廷料理長に説明するけど、いまいち伝わらない。ただのお菓子と違って夢にあふれているお菓子なんですよ!



「……」



 駄目だ……このあふれる熱い思いが伝わらない。



「要は見栄えの良いお菓子ってことだろう? 考えは面白い。手伝ってやる。宮廷料理長としてレーネ様に贈り物をしたいと思っていたところだ」



 材料を揃えるのに少し時間がかかるので用意ができたらまた来ることを伝える。



「しかし、男爵になったんだろう? 仕事せんで良いのか?」


「俺の下で働いてくれてる人たちが優秀ですので……」



 実際、俺がやることなんて報告書を読んで判を押すことくらいだからね。



 さて、みなさん満足しましたか? 


 王妃様はエレナさんとラルくんをモフり、ニーアさんはルーくんをレーネ様と一緒にモフり、レティさんは侍女軍団とミーちゃんとその弟妹たちをモフりながらのモフモフ談議。


 全くもって、カオスだ……。


 レーネ様に悲しい顔をされたけど、近いうちにまた来ますと約束することで笑顔になってもらった。


 家に戻ると陽あたりの良い場所でゼルガドさんがベン爺さんとお酒を飲んでいる。



「プハァー。昼間に飲む酒はうめぇー」


「みぃ……」



 ミーちゃん、そんな姿を見てヤレヤレと首を振ってます。まあまあ、忙しくなるまでのほんの一時だから大目に見ようよ。



「み~」



 ベン爺さんが俺とレティさんの馬を連れて馬舎に行ったので、ゼルガドさんにお願いをする。



「早急に作ってもらいたいものがあります」


「うん? どんなものだ?」



 紙に作ってもらいたいものの絵を描いてゼルガドさんに見せた。



「ふむ。この歯車を回すと下の部分が回転する仕組みだな。水車の小型版ってところか? で、これはなんなんだ?」


「料理などで使う攪拌機です。手で泡だて器を使ってやると時間が掛かるし疲れるでしょう? これなら誰にでも簡単に泡だてられます」


「ネ、ネロ! おめぇ、天才だな! これは売れるぜ!」



 はいはい、ゼルガドさんは試作品をいくつか作ってくれるだけで良いです。それを量産して売るのは神猫商会ですので。



「み~!」


「お、俺の取り分は?」


「売れたら考えます」


「よ、よし。すぐ作る。こんなもの作るなんて朝飯前よ!」



 腕の良い職人が居ると便利だね。


 これからもどんどん作らせよう。



「み~♪」






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