363神猫 ミーちゃん、フリーズする。
さて、ゼルガドさんのことは、神猫商会で手伝ってくれる職人さんを集めたカティアさんに任せる。カティアさんが面通ししてくれるだろう。俺たちは王宮に行きましょうか。
「み~」
嫌がるレティさんの首根っこを捕まえて、王宮に行って来ますとルーカスさんに言うと、
「何度も申し上げておりますが、王宮に行かれるのであれば、王宮に事前にお伺いの使者を出して下さい……はぁ。馬車の手配は如何いたしますか?」
「ははは……馬で行って来ます。ごめんなさい……」
「みぃ……」
ミーちゃんと一緒にルーカスさんに平謝り。ルーくんとラルくんを誘って馬で王宮に向かう。ルーくんとラルくんはレティさんの馬に同乗。レティさん不機嫌そうに見せているけど、口元の端が吊り上がっていて嬉しさがダダ漏れ……。
さて、王宮に向かう途中に商業ギルドに寄ろう。
「これはこれは神猫商会さま」
「み~」
いつもの担当者さんがニコニコ顔でお出迎え。
「今日はどのようなご用件でございますか?」
「明後日にまた鮮魚を卸したいと思いますので、声掛けをお願いできますか?」
「ほう。以前のあれをやるのですな」
大手の料理店には直接高級魚を卸すけど、中小の料理店では高級魚は手が出ない。なので、大手の料理店で売れ残った魚を以前の方法で売ろうと思う。
ついでに、一般のお客さんにも売ろうかと。前回売れ残りの魚を、町の奥様方が喜んで買って行ってくれたからね。
今回は事前に商業ギルドで話を広めておけば一般の人も大勢来るだろう。ウハウハだね。
「み~!」
ミーちゃんも明日も市場に行ってお魚買うよ~! とやる気満々です。
「それでは、こちらでテントを用意します。氷は神猫商会さまが用意でよろしいでしょうか?」
「み~」
「はい。それで構いません。あと、その場で焼いて売るなんてどうですか?」
「み~?」
「それは面白いですね。焼き手と道具はこちらで手配しましょう」
意外と大きなイベントになりそうだ。商業ギルドでも担当者さん以外の人たちも出てきてメモを取っている。中央広場で……なんて不穏な言葉も聞こえてくる。そこまでしなくても良いんじゃないですか?
さあ、用事も済んだし王宮に向かおう。
王宮に着くとすぐにニーアさんと馬丁さんがやって来た。馬丁さんはスミレが居ないので残念顔。
「ペロしゃん……」
「がう」
「きゅ~」
「ルーきゅん。ラルきゅん」
ここにも残念顔が居た。レーネ様はルーくんとラルくんをギュッと抱きしめてペロが居ない寂しさを紛らわしているのだろう。
「もうすぐペロたちが帰って来ますよ」
「はいっ!」
「そうなの? 私もペロちゃんとセラちゃんに早く会いたい!」
今日はエレナさんもご一緒のようだ。
「み~」
「こんにちは、ミーちゃん。いつも艶々で羨ましいわ」
ミーちゃん、王妃様の前に行ってご挨拶。ご挨拶が終わるのを待ってましたとルカ、ノア、レア、カイがミーちゃんに突進! 猫団子へと変わる。
レティさんが王妃様に軽く会釈をしてニーアさんが用意した俺の左の席に着く。
「ネロくん。そちらの女性は?」
そういえば、レティさんとエレナさんは初対面だった。
レティさんがいつも通り着ていたローブのフードから顔を現すと、
「ま、魔族……」
「彼女はネロくんの第二夫人よ」
「だ、第二夫人!? 第一夫人は!?」
そっちですかい! 魔族はどこ行った!?
「氷族と紅霊族のハーフでネロの妻のレティと申します」
「ま、負けた……」
エレナさんはなにを勝負してなにに負けたんだろう……。
「それでネロくん。今日来た用件はなにかしら?」
「ブロッケン山の街道の件です。街道整備も終わりましたので告知をお願いします」
王妃様にニクセで獣人の村作りが始まったことを伝え、その時に通りかかった商隊のことを話した。
王妃様に話している間にルカが俺の膝に乗ってきてスリスリとご挨拶してくれる。と思ったらいつの間にか俺の右側に座ったエレナさんと、俺の左側に座ったレティとでルカの奪い合いがはじまった。
邪魔なんで向こうに行ってやってください。
取り敢えず、俺に睨まれたレティさんと王妃様に睨まれたエレナさんは休戦協定を結び、ミーちゃんにペロペロされてたノア、レア、カイを引き剥がしレーネ様の所にすごすごと移動していった。テーブルの上にあったお菓子も一緒に持って行くところはちゃっかりしている。
急に弟妹を連れ去られ唖然として固まって動かなくなったミーちゃんを、ニーアさんがひょいと抱っこして王妃様の元に連れて行く。
王妃様にモフモフされてやっとフリーズが解けたようだ。
「み、みぃ!?」
ここはどこ~!? って困惑顔のミーちゃんも可愛いね。
「そう。もう、通れるのね。予想より早かったわね……どうやったの?」
「フォルテの住人には街道整備は断られました。麦の収穫時期と重なることと、モンスターが怖くて作業なんてできやしないと。なので、知り合いの妖精族のみなさんに協力してもらいました」
「そういえば、ネロくんにはそんな味方が居たわね……でも、優秀過ぎない?」
「妖精族は多彩なスキル持ちが多いですし、普段から大自然の中で暮らしているので適材適所です。ちゃんと報酬も出してますよ?」
妖精族が少しずつ外の世界に出ていくための一歩だ。労働には対価が必要という人族の常識を覚えてもらわないと、人の良い妖精族では悪い人に簡単に騙されそうだからね。少しずつ常識を覚えてもらわないと。
そのためにも早く神猫商会の商隊を動かしたいね。
ペロたち早く戻って来ないかなぁ。
ペロというよりルーさんなんだけどね。
「み~」
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