362神猫 ミーちゃん、レベルUPしました。

 料理部隊が集まるまでの間、何度かお湯を沸かし直してみんなにお風呂に入ってもらった。



「ネロさん。みな、揃いました」


「み~」



 十人ほどの恰幅の良いおばちゃ……お姉さんたちが集まっている。これから当分向こうで生活することになるから、このくらいタフじゃないとね。


 じゃあ、出発しま~す。



「み~!」



 村の方は順調に作業が進んでいるようだ。テントを建て終わり家を建てるための木材加工をする人たち、井戸を掘る人たち、畑を作る人たちとに分かれている。


 家も大事だけど早めに畑を整備して香辛料の栽培を始めてもらわないとね。この村の特産品兼収入源になるから。



「み~」



 楽しみだね~って神猫商会の会頭も仰ってます。十分にうちの主力商品になり得る。ウハウハだね。


 そろそろ、うちに帰ろうか。皆さんには数日後にまた来ることを伝えてあとにした。



「お客様がお見えです」



 家に戻るとルーカスさんに来客を伝えられる。誰だろう?



「ネロは本当に金持ちだったんだな……ネロ様って呼ばねぇと不味いか……」


「ネロでいいですよ。ゼルガドさん」


「み~」


「お、おぉ。久しぶりだな。ネ、ネロが言いってんならそうするぜ」



 しかし、来ているのはゼルガドさん一人。家族を連れて来るって言ってなかった?



「あとから来る。オーアから呼んだからな、ベルーナに着くには時間がかかる」



 オーアというのはルミエール王国の北にあるドワーフ族の国の名前。ロタリンギアの北でもある。そりゃあ遠いね。



「み~」



 ゼルガドさん、妙に身軽なんですけど荷物どうしたんです? 



「家の裏の小屋に住まわしてもらう。爺さんには許可を取ってるぜ」


「こちらの部屋を用意しますが?」


「いや、いい。どうせ仮住まいだ。別の場所に行くんだろう? それにこっちじゃ落ち着いて酒が飲めねぇ」


「わかりました。それでは、道具や資材を集めたら一度、目的の場所に行きます。職人ギルドで必要な物を集めてください。特に銅が大量に必要になりますので手配をお願いします。支払いは神猫商会でしますので言ってください」


「お、おぉ。ご、豪儀だな……」


「み~」



 ミーちゃん、そうでもないよ~って言ってる割に、どや顔ですよ。


 銅は蒸留装置を作るのに必要だ。模型を作って試行錯誤で作るしかない。完成するまでどのくらいお金がかかるかわからないけど、これは先行投資だ。実際に完成形を見て知っているので成功するのは間違いない。


 宗方姉弟が帰って来たら手伝わせよう。家が酒造会社だから十分に役立つだろう。



「まあ、当分は旅の疲れを癒してください。その後は存分に腕を振るってもらいますので」


「み~」


「任せておけ。俺を雇ったことに損はなかったと証明してみせるぜ」


「では、最初の仕事ですが、うちで雇っている鍛冶職人に銃の作り方を教えてください」


「ぐっ……俺の発明を寄こせってか……?」


「まあまあ、話を聞いてください」



 そう、大気スキルを使った銃を大量生産しようと思っている。大気スキル持ちは意外と多い。でも、役立たずと言われ使う機会がなかったんだよね。でも、クイントで俺が実践してみせて、セリオンギルド長が報告書を本部にあげたおかげで、本部も重い腰を上げたそうだ。


 ハンターギルドで訓練が始まれば銃を欲しがる人が増えるのは必定。今のうちに大量生産しておくというわけだ。ウハウハのためにね。


 でも、今の一人で全部作って調整も一人でするのは生産性とコストが割に合わない。なので、銃の部品を分業制で作らせ、最後の組立と調整は信頼の置ける者にやらせるつもりと説明する。



「で、最後の工程は誰がやるんだ? 俺か?」


「ゼルガドさんは今後動き出したら、寝る暇もなくなるぐらい忙しくなるので駄目です」


「……本気まじ?」


「み~!」


本気まじです。なので、ゼルガドさんのご家族にお任せしたいと思います。どうせ店を作るのでそっちもお任せしようと思ってます」


「そうか……それはありがてぇ」


「み~」



 いいってことよ! 従業員は家族同然だよ~って……今日のミーちゃん、なんか会頭のレベルが上がってません? それとも、悪い物でも食べた?



「み、みぃ……」



 ま、まあ、それは良いとして、ゼルガドさんに数枚の紙を見せる。



「これは!?」


「ロタリンギアで作られている武器の設計図です」



 宗方姉弟が書いたものをヒルデンブルグで作成し、改良したものを設計図にした物。王妃様に渡した物の写しだよ。



「すげぇな……」



 ゼルガドさん、設計図に穴が開くのではないかというほど見入っている。



「その設計図の中にはありませんが、ロタリンギアも銃の開発をしています」


「なに……!?」


「それはスキルに関係なく誰にでも撃て、さらにゼルガドさんが作った銃より強力な銃になると思われます」


「そんなこと出来るのか?」


「出来ます」



 向こうに残っているニセ勇者の遠藤勇、陸山総司はおそらくだけど火縄銃のような銃を開発していると思っている。


 だけど、火縄銃は欠点が多すぎる。それに同じような物を作っても痛み分けで被害がでて終わりだ。ならばどうするか? いかれ頭の本領発揮してもらい、何世代も後の銃の開発をしてもらい向こうの銃を圧倒してもらう。


 最低でも雷管と後装式の銃は欲しいところだ。コッキングレバーと弾倉もあれば尚良し。


 いかれ頭の実力とやらを見せてもらおうか!



「み~!」



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