み~ちゃんの異世界放浪記 その玖
今日は三月三日のひな祭り。
この世界にはそんな風習はないけどね。
でもせっかくなので、ひな祭りは女の子のお祭りだから、今日はミーちゃんの日にしてしまおう。
朝からミーちゃんに内緒でひな祭り……もとい、ミーちゃん祭りの準備。
菱餅、ひなあられ、桜餅もどき、甘酒は酒粕がないので断念。
菱餅は本当のお餅と葛餅を使って作ってみた。食紅が見つけられなかったので
ひなあられはお米を油で揚げてポン菓子を作って砂糖、砂糖入り抹茶をまぶせば完成。砂糖は黒砂糖なのでほんのり茶色いで抹茶は緑。ピンク色がないのが寂しい。
そして桜餅もどき。なぜもどきかといえば、桜の葉がないから。
彩音さんの形見の桜はベン爺さんのおかげで順調に育っている。でも、葉を取れるほどになるにはまだまだ先の話。
なので、桜の葉のない桜餅を作成。ちなみに、道明寺バージョン。単に作るのが簡単だったから。でも、この桜餅もピンク色じゃなくて白……。
代わりに餡子をたっぷり挟みました。
さて、準備が整った。居間のテーブルに紙で折ったお雛様とお内裏様を並べて置き、その前に作ったお菓子を並べる。
なんとなくひな祭りぽっくなった。
「あっ!? お雛様だ!」
「本当だ。もうそんな時期なんですね」
二階から降りてきた宗方姉弟がさっそく見つけた。
この二人にお雛様と認識されたのなら上出来だろう。
「ただいまにゃ~」
「み~」
「にゃ」
「がう」
「きゅ~」
買物に出掛けていたみんなが戻って来た。
「ただいま戻りました。まあ、可愛いお人形さん?」
「みゅ~」
この世界には折り紙という文化がないので、ユーリさんも一瞬悩んだようだね。
「これ、なんにゃ?」
「お雛さまといって女の子のお祭りだよ」
「にゃら、ペロには関係ないにゃ」
「そんなこと言っていいのかい? 女の子のお祭りだから、ミーちゃんのお祭りでもあるんだぞ」
「にゃ、にゃにゃ……姫のお祭りかにゃ? じゃあ、お祝いするにゃ!」
「み~♪」
ペロはミーちゃんを抱っこしてスリスリしている。それがお祝いのしるし?
「えー、ミーちゃんだけですかー。ここにも女の子が居るんですけどー」
「高校生にもなって、ひな祭りもないでしょう。姉さん……」
「煩いぞ。トシく」
まあ、うちでひな祭りの対象になるのはミーちゃんとカヤちゃんくらいなものだ。と思っているとカヤちゃんたちも帰ってきた。
「可愛い!」
「ネロさん。これはなんですか?」
ヤン君に俺の故郷の女の子のお祭りだと説明する。
「じゃあ、カヤのお祭りでもあるんですね?」
「そうだね。みんな揃ったから始めようか」
うちに居る全員を居間に集めて、作った
ほとんどの人が意味がわからないけど、俺が作ったお菓子を喜んで食べている。
ミーちゃんは餡子たっぷりの道明寺に目を輝かせています。傍で食べているカイの道明寺の餡子も虎視眈々と狙っているのがわかる。こんなところで野生の本能を出さないでよね。カイが怖がって背を向けてますよ。
「やっぱり甘酒がないと、締まらないー!」
「じゃあ、さっさと酒造れ。宗方姉弟」
「えっ!? ネロさん、もしかして、酒粕がないと甘酒作れないと思ってます?」
「ばあちゃんは酒粕使ってたぞ?」
「たしかに、酒粕使った方が美味しくできますが、もち米と米麹だけでもできますよ?」
えっ!? そうなの? 知らなかった……
「トシくん。すぐに作りたまえ!」
「姉さん……作るっていったて半日以上はかかりますよ」
そうか……残念。でも、今度作ってもらおう。
「そういえば、ミーちゃんとカヤちゃんがお雛さまとして、他はどうなのー?」
「他というのは三人官女とかですか? 姉さん」
内裏雛、三人官女、五人囃子、
お内裏さまとお雛さまって言ってるけど、お雛さまって全体を表した言い方で男雛と女雛が一対でお内裏さまなんだよ。親王と親王妃ってことらしい。
もひとつ間違いがあって、あかいお顔の右大臣ってあるけど随身って護衛の人で大臣のことじゃないんだよね。正しくは近衛中将か少将になる。
まあ、そんなことはどうでも良いか……。
宗方姉弟がみんなに説明して、あーでもない、こーでもないと姦しい。
「にゃら、随身はペロとセラにゃんだにゃ!」
「にゃ!」
まあ、妥当な選択だろう。
「三人官女は私とユーリ……あとは」
「もちろん、
レティさんがユーリさんと三人官女に名乗りを上げると、クリスさんも手をあげた。クリスさんはミーちゃんが神猫って知ってるからね。
「みぃ……」
あれ? 久しぶりにミーちゃんに可哀そうな目で見られているんですけど……?
五人囃子には宗方姉弟とカティアさん、ララさん、ヤナさんに決まったようだ。
残るは仕丁
「がう」
「きゅ~」
「お、俺か!?」
ルーくんとラルくん、グラムさんに決定のようだ。
さて、こうなるとミーちゃんとカヤちゃんのお相手になる男雛だね。残る男性陣の数は少ない。
カヤちゃんのお相手はお兄ちゃんのヤン君に早々に決まる。年齢的にカヤちゃんのお相手になる人が見つからなかったからしょうがない。カヤちゃんが喜んでいるから良しとしよう。
となると、ミーちゃんのお相手だ。
もちろん、俺が……
「みゅ~」
「み~」
「……」
そういえば、カイも男の子だった……。
「カイくん。お似合いです」
ユーリさんの言葉が胸に突き刺さる……悔しくなんかないんだからな!
ミーちゃんと俺はいつも一緒だから、今日のところはカイに譲ってやるんだからな!
来年は俺がそこに居るんだからな!
来年もみんなで楽しくひな祭りできると良いな。
「み~!」
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