361神猫 ミーちゃん、ネロを冷めた目で見る。

「マルタ商会のアデルと申します。ここで休ませていただけるとお聞きしましたが、明日の朝までよろしいでしょうか?」


「み~」


「構いませんよ。これだけ人が居ればモンスターも寄って来ないでしょうから」



 商隊のみなさんが野営の準備をしている間、アデルさんと世間話をしたところ、マルタ商会はセッティモに本店がある商会だそうだ。


 昔からヒルデンブルグの町々を廻って交易をしているそうで、ブロッケン山が通れなくなり大変困っているそうだ。



「もうすぐブロッケン山の街道が使えるようになりますよ」


「み~」


「ほう。どこで聞いた情報ですかな?」


「ここの領主様が言っていたそうです」


「新しい領主様のことですね。フォルテとニクセを治めるとか。お会いになったことは?」


「み~」



 そうだね。鏡があればいつでも会えます。なんて言えるわけがない。



「まさか。あるわけないじゃないですか。でも、この話はニクセの代官様に聞いたことです」


「なるほど、リンガード様からお聞きになったことであれば、間違いないでしょうな」



 アデルさんといろいろと話していたら、もうお昼近くになっていた。村の中に戻るといくつものテントが既に設営されている。寝床は大事だ。


 中央で昼ご飯が作られているけど、作っているのが男性なのでなんとも野性味あふれる豪快な料理になっている……手伝った方が良いだろうか? ちょっと味してみる。


 うん……。食べられなくはない。スパイシーな味と言えば聞こえは良いけど、悪く言えば辛いだけ。食べたいか? と聞かれたらノーと答えるね。



「みぃ……」



 しょうがない、ちょっとだけ手を加えよう。寸胴鍋のスープに瓶詰めのホールトマトを加え塩で味を調える。お肉が入ってるので出汁は出てるけどコクがない。ミーちゃんバッグから牛乳を出してもらい味を壊さないように少量ずつ投入。良い感じに出来上がった。


 獣人さんたちの主食は芋らしいけど、せっかく小麦粉があるので塩などを加えてナンっぽいものも作った。


 匂いに誘われてみなさんやってくる。食事を受け取り各々適当に座って食べ始める。最初は静かに食べていたけど、時間が経つにつれてわいわいと楽し気な雰囲気になってきた。


 食事は楽しくとらないとね!



「み~」



 俺もご相伴に預かろうと思っていたら、寸胴鍋の前に列が……おかわりですか?みなさん、首を縦に振る。


 ミーちゃん、先にご飯食べてて……。



「み~」



 結局、俺の分は残らなかったよ……。ミーちゃんバッグからクアルトのドガさんが作った料理を食べました。みんな元気かなぁ~。香辛料を届けに行きたいなぁ~。喜ぶと思うんだ。きっと。



「み~」



 それより、ここの食事事情をどうにかしないといかんばい! 食事は元気の源。美味しくない料理ばかりでは、みなさんのモチベーションにも関わってくる。


 これは一度迷宮の獣人の村に戻って相談かな? それにレティさんが暑さでバテ気味。ご飯も食べず、フローズンばかり要求してくる。お腹壊すよ?



「みぃ……」



 先遣隊の代表の方に一度迷宮に戻ることを伝えて迷宮に転移する。朝に転移した場所ではなく、以前に泊まった狐獣人さんの村の倉庫前だ。


 村の中央に行くと、長老さんがお子ちゃまたちと日向ぼっこをしていたので声をかけようと寄って行くと、レティさん目敏く長老さんが抱っこしていた赤ちゃんを奪取。


 おいおい、レティさんや。長老さん、びっくりして腰が抜けて動けなくなってるじゃないか。ってミーちゃんまで赤ちゃんの所に行ってスリスリ、ペロペロしてるね……。



「す、すみません。大丈夫ですか?」


「こ、これは、ネロさん。大丈夫です。ちょっと驚いただけですよ。それより、どうしました? なにか問題でも?」


「大問題です!」


「そ、それほどの大事ですか!?」


「ご飯が不味いです!」



 長老は目が点になっている。レティさんいつの間にかミーちゃんと狐獣人のお子ちゃまたちにミーちゃんクッキーを配っている。ついでに、もふもふを堪能しているようだ。羨ましい……。



「不味いのですか……」


「不味いんです!」


「そ、それは大変ですね。長に相談してきましょう」



 よろしくお願いします。待ってる間、俺もお子ちゃまたちにフローズンを作ってやる。ついでに、もふもふを堪能します。みんな、お日様の匂いがした。


 長老が戻って来たので話を聞くと、料理をする人を部族から一人ずつ出すようにと村々に人を出したそうで、集まるまで待ってて欲しいとのこと。


 時間がかかりそうなので、狐獣人さんの手を借りてお風呂準備することにした。お子ちゃまたちにねだられてしまったからしょうがない。


 浴槽は土スキルでちょちょいと作り、水は狐獣人さんたちの人海戦術。あとは水スキルでお湯にする。


 狐獣人さんたちにも水スキルで温度変化する方法を教えたけど、ここまでの量を変化させることができる人は居ない。教え方が悪いのか? 熟練度が低いのか? わからない。


 今回もお年寄りとお子ちゃま優先で入らせる。お子ちゃまたちは俺とレティさんでミーちゃんシャンプーで洗ってから入らせる。青りんごの良い匂いだからみんな喜んでいる。


 赤ちゃんはレティさんが一緒に入れると息巻いていたので任せる。みんなの前ですっぽんっぽんになった時は驚いたけどね。本人が気にしてないようなので良いのか? ミーちゃんも一緒だ。ミーちゃんもすっぽんぽんだけどね。


 レティさん、目のやり場に困るので隠す所は隠してくださ~い~♪


 ムフフ……♪。



「みぃ……」



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