360神猫 ミーちゃん、村作り始めます。

 さて、どうしよう。


 烈王さんは帰っちゃったし、自分でどうにかしないと駄目なんだろうね。


 この空間に入った時が夕暮れだったから急がないと、家の人たちが心配してしまう。


 うむー、と考えて思いついたことを一つ一つ実行していく。ここに入った時と反対のことをやってみるけど上手くいかない。


 これは本格的に不味い。体感時間で二時間は過ぎた気がする。


 ミーちゃんの所に帰りたいよう~。ミーちゃん、プリ~ズ!



「み~?」



 あれ? ミーちゃんが目の前で、どうしたの~? って首を傾げて俺を見ているね。



「戻って来たか。冷えたエールくれ」



 周りはまだオレンジ色の風景……あれ?



「うん? 二の鐘以上、あの空間に居たような……」


「み~?」


「ネロが自分の空間に入ってから、それほど経ってないぞ。時間を引き伸ばした空間だったんだろうな。最初にしては上出来だ」


「まったく意識してやってないんですけど……」


「……ま、まあ、これから練習していけばいいんじゃねぇ?」



 そうですね……。


 もう、いい時間だ。家に帰ろか? ミーちゃん。



「み~」



 ん? なにか忘れてない?



「み~?」



 あっ!? グラムさんは?



「み、み~」



 ミーちゃんも忘れてたでしょう……?



「みぃ……」


「あいつなら当分戻らないから気にするな」



 そうなんですか? まあ、家族水入らずだろうから、ゆっくりしてくるといいよ。



「み~!」



 家に帰るとルーカスさんに荷物が届いていますと言われたので、荷物が置いてある倉庫に向かうと大量の荷が積み重ねて置いてあった。頼んでいた大型のテントや日用品のたぐいだ。


 ミーちゃんバッグに収納してもらう。


 明日、獣人さんたちの先遣隊がニクセの村に行くので、カティアさんに頼んで商業ギルドに無理を言って集めてもらっていたものだ。さすが、商業ギルド。やる時はやるね。


 夕食を食べ終えた後、レティさんに明日は獣人の村に行きますからねと言ったら、子猫~とルーくんとラルくんを抱きしめながら言われた。だから、子猫はペロが戻って来てからだよ。


 ちなみに、ミーちゃんはカヤちゃんに抱っこされながらも餡子舐めてます。必死です。


 翌朝、蒼竜の咆哮のホームの転移プレートを回収してから迷宮へ移動。


 獣人さんたちは準備が出来ているようで大勢集まっている。


 ニクセの村に転移する前に狐獣人の長老に、この転移が終わったら村の祠に転移プレートを置くように頼んだ。これからはギルドの転移ゲートを使わず、直接獣人の村に転移することにする。



「じゃあ、出発しますので一ヵ所にかたまってくださ~い!」


「み~!」



 もちろん、一度では全員転移出来ないので何度か転移を繰り返す。総勢二百人の大所帯だ。最後の組の転移する時、狐獣人の赤ちゃんを抱っこしてニヘラと笑っていたレティさんを無理やり引っ張って来たのはお約束。


 全員を転移し終わったので、ミーちゃんバッグから荷物を村の中央に出す。


 おぉー、と言う獣人さんの声があがる。正直、俺も声をあげそうになった。それくらいの大荷物。凄いね~。



「み~」



 獣人さんたちには一通り村の中を案内する。というより、壁で覆っているので外に出れない状態。自分で作ったのだけど、村は広い。とにかく、広い。ちょっとやり過ぎた感じがある。あの時は、少し広いかな? 程度に思っていたけど、こうして見ると広い……。



「少年。広過ぎないか?」


「そ、そうでしょうか?」


「み~?」



 まあ、大は小を兼ねるって言うからね。問題ない……よね?



 獣人さんたちはなん組かに分かれて動き出す。でも、あちこちでヘンな声が上がっている。なんでしょう?


 ヘンな声を上げている獣人さんの元に行くと、どうやら用意した道具などに感嘆していたようだ。こちらではたいした道具じゃないけど、迷宮に閉じこもっていた獣人さんたちにすれば、もの凄い価値ある道具に見えるらしいね。


 ビビりながら使っている姿に苦笑いしながら、俺は獣人さんの一組と街道側に村の入り口の門を作るために来た。


 土スキルで作った壁の一部を崩せば入り口の完成。あとは、獣人さんたちが用意してきた部材や、ブロッケン山の街道整備で出た木材を使って門を作る。お任せです。


 外に出て日向ぼっこをしていると東の方から商隊らしき馬車の一団が街道をやってくる。東の鉱山街からか、ブロッケン山を大回りして来た商隊だろう。馬に乗ったハンターらしき人が商隊から離れてこちらに来た。



「すまないが、ここは村か?」


「まだ、作ってる途中ですけどね」


「み~」


「そうか……作っている途中か。もし良ければ少し休んでいってもいいかい?」


「中に入らなければいいですよ」


「み~」


「助かる」



 そう言って商隊に戻って行った。


 ルミエール王国からブロッケン山を大回りしてヒルデンブルグ大公国に入ると鉱山街とニクセの真ん中に出ることになる。鉱山街とニクセの間には村が無いので野宿になる。ハンターさんたちが居るといっても気を休める余裕はない。


 村の中に入れなくても、大勢の人が居ることでモンスターは寄って来難いから少しは気を休めることが出来ろだろう。ニクセまでは商隊のスピードではここからだと一日半から二日はかかる。百里の道も九十九里をもって半ばとすっていうから、ここでしっかりと休んでいけば良いよ。


 そろそろ、ブロッケン山の街道を使えることを大々的に公表した方が良さそうだ。


 帰って王妃様に相談かな?



「み~」







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