359神猫 ミーちゃん、浮く!?

 うーん、わからん。


 考え、行動し、また考え、実行するを何度も繰り返すが、うまくいかず悩んでいる。どうやれば自分の収納の中に入れるんだ?


 体全体が無理なら腕だけでもと思ったりしてやってるけど、うまくいかない。


 ミーちゃんの修行もうまくいってない。


 右にコテン。左にコテン。目の前の木にぶつかってコテン……。



「みぃ……」



 俺もミーちゃんもいき詰っている。なのに、烈王さんは酒を呑み、肴に舌鼓を打っている。


 なにか、助言はないのですか?



「ん? なんだその恨めしそうな目線は……眷属殿まで」


「みぃ……」


「眷属殿は自由に空を飛びたいのか?」


「み~」


「うーん。おそらく……いや、たぶんできるようになる方法はある」


「み~?」


「だが、とても辛く苦しい修行だ。やってみるか?」


「み~!」



 なんだなんだ、空を飛べるようになるだとぉー! 俺も飛びたい!



「俺も空を飛びたいです!」


「ネロは時空間スキルを鍛えれば転移できるようになるから、必要ないだろう。さっさと自分の空間に入れるようになりやがれ!」


「転移と空を飛ぶのは別! 俺も飛びた~い~」


「ちっ、仕方ねぇな。だが、眷属殿ならいざ知らず、ネロは覚えられるかわからねぇからな。これから覚えるスキルも非常に稀有なスキルだからな」



 駄目でも挑戦したい。空を飛ぶのは浪漫だからね!



「じゃあ、始めるぞ」



 烈王さんがパチンと指を鳴らした瞬間、



「ふみゅ……」


「ふぎゃ……」



 ミーちゃんと俺はなにかに押しつぶされたかの如く、地面に這いつくばされてしまった。


 う、動けないし声も出せない。ミーちゃんも同じようだ。



「スキルってんはなぁ。体で覚えるのが手っ取り早いんだ。ちなみに覚えるスキルは重力だ。重力って知ってるか?」


「じってまふぅ……」


「ふみぃ……」


「なんだ知ってるのか。博識だな。ネロの居た世界は科学の進んだ世界のようだな。重力ってのはな……」



 それから一時間ほど潰れたカエル状態で、烈王さんの熱弁を聞かされた……。ミーちゃんも俺もぐったりです。正直、烈王さんの話半分も聞いていなかったよ。


 そして、烈王さんが重力スキルを解くと、体が羽でも生えたかの如く軽くなる。


 そして、満を持して鑑定してみる。


 重力スキルゲットだぜ! ミーちゃんがね……。



「み~!」


「眷属殿は覚えたか。ネロは駄目だったようだな。だが、眷属殿が覚えたからな、毎日さっきの要領で重力スキルを使ってもらえば、ネロもいつか覚えると思うぞ」



 その、いつかっていつなんでしょう……。


 それよりミーちゃん、重力スキルを使ってみてよ。



「み~?」



 ミーちゃん、真面目な表情でうむーとすると、ふわふわと浮き上がったじゃありませんか!? いいな~、ミーちゃん。羨ましいよ。


 でも、思ったようには動けないようで、猫かきで泳ぐようにしか移動できないようだ。



「みぃ……」


「ま、まあ、練習あるのみだな。当分はそっちの板切れで練習するんだな」


「フライングボードでですか?」


「み~?」


 フライングボードなしでも飛べるようになるために、重力スキルを覚えたのになぜ?



「なに言ってるんだ。その板切れ自体が重力発生装置じゃないか」


「「……」」



 言われてみれば……そうなのか?



「自分の左右どちらかに重力をかければ、反対側に曲がっていくはずだ」


「み~!」



 ミーちゃん、またフライングボードの修行に入った。じゃあ、俺も時空間スキルの修行に戻ろう。


 でも、どうすれば良いのかわからない。



「ヒントください!」


「ヒントっていってもなぁ……初歩中の初歩だからなぁ。うーん。空間に入るんじゃなくて、自分の居る場所を空間にすればいいんじゃねぇ?」



 ほう。なるほど、考え方を変えるわけですな。収納空間に入るのではなく収納空間を袋と考えて、自分にかぶせるというイメージでやってみよう。


 おっ!? ここはどこだ? 何もない薄暗い空間にぽつんと立っている。



「ここがネロの空間だ」


「烈王さん?」



 なぜ、あなたがここに居るのでしょうか?



「俺を誰だと思ってる。人の空間に干渉するなんて、寝ながらでもできるぞ」



 さ、さすが次元竜というべきか。



「これを繰り返しおこなって時空間スキルの熟練度を上げろ。完全にものにしたら次のステップに移る」



 転移とは? と、烈王さんn問うと、この空間に入った場所とは違う場所に出ること。と、烈王さんから簡単な答えが帰ってきた。



「ネロが使っている転移装置は、出入り口をあのプレートで固定しているんだ。だから、誰でも使える」


「やけに詳しいですね」


「当たり前だ。あれは俺が作ったんだからな」


「えっ!? AFって神人が作った物だけじゃないんですか?」


「馬鹿野郎。神人如きに作れて俺に作れないわけはないだろう!」



 そ、そうなんですね……次元竜、半端ねぇっす。


 で、どうやってここから元の場所にもどれば良いのでしょう?



「それも、修行の一つだ」



 そう言って烈王さんは消えたね……。


 ミーちゃん、助けて~!



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