337神猫 ミーちゃん、ご褒美貰います。

 ミーちゃんには悪いけど、帰り道がわかっただけでも良しとしよう。


 そういえば、話の中に出てこない種族が居るけどどうなんだろう?



「話は変わりますが、妖精族もあなた達が造ったのですか?」


「ふむ。妖精族か。彼らは獣人族から枝分かれした隔世遺伝を起こした者達だ」



 獣人族を作るのに多くの種類の遺伝子を掛け合わせた事による、隔世遺伝的に変化した者が妖精族だと言う。人より隔世した遺伝子の姿に偏り、ある意味突出した能力を持って生まれてくる。


 今は獣人族の遺伝子が定着した為、妖精族が獣人族から産まれることは無く、妖精族もいち種族として安定しているらしい。



「さて、そろそろ時間だ。最後に約束通り、迷宮最下層に辿り着いた褒美をやろう」


「一人一つですか? それとも全体で一つ?」


「み~?」


「せっかくだ、一人一つやろう。しかし、決めるのは君だ。彼らとは会う気は無いからな」



 皆の分を俺が決めちゃうの? 後で恨まれないかな?



「どんな物がもらえます?」


「金でも宝石でもAFでも。我らにやれるものなら何でも」



 ふむ。下知は取った。なので、俺とミーちゃんの分は決まった。他のメンバーは

 AF辺りで良いだろうか? 



「何か変わった物ってありますか?」


「そうだな……スキルオーブなどはどうだ?」


「み~?」



 スキルオーブってな~に? って、ミーちゃんが興味を持ったようだ。俺はなんとなくわかている。おそらく、ゲームなどでは定番のアイテムだろう。


 聞けばやっぱり俺が思っていた通りの物。初級クラスのスキルを自由に一つ選べるそうだ。なかなか良い物だ。俺や宗方姉弟は異世界補正で、限定付きで好きにスキルを選べるけど、普通の人は選ぶことができないからこれは凄いお宝だろう。


 うちのメンバーは俺とミーちゃん抜きで七人、グラムさんも入れたら怒るかな?


「それでは、AF四つにスキルオーブ四つください。俺とミーちゃんの分はご相談で」


「数が合わぬようだが?」


「そうですか? 先ほど、全員にくれるって言いましたよね?」


「……君が神の眷属と一緒に居るのは、おかしくないかね?」


「誉め言葉ととっておきますね」


「みぃ……」



 ミーちゃん。何故、そこでごめんねぇって顔するの! 俺は私利私欲の為にやってる訳では……三割くらいはやってるけど、皆の事を思ってやってるのだからね!


 AFはリストを見せてもらい、身体強化五割増しと異常状態回復速度大を二つ、シールドという一定量のダメージを軽減してくれる物を貰った。


 身体強化とシールドは良いとして、異常状態回復速度大を見つけた時は目を疑ったね。王様に譲った耐性の指輪は異常状態を高い確率で防ぐって物だったけど、異常状態回復速度大は異常状態を回復させる。


 耐性の指輪は運が悪いと異常状態になる。だけど、異常状態回復速度大は異常状態になったとしても必ず回復する。毒や麻痺などは自然に治癒せず、解毒薬が必要になる場合もあるのに、それが必要ないのだ。検証してないけど、後装備でも異常状態が回復すると思っている。


 これがあれば、ミーちゃんのミネラルウォーターが無くても異常状態を回復出来るという訳だ。


 さてと、それでは俺とミーちゃんのご褒美をもいましょうか。



「知識が欲しいです」


「どのような知識だ?」


「この世界が動き出す為の知識です」


「み~」


「この世界が動き出す……?」



 ずっと思っていた。この世界は全てにおいて停滞していると。思想、学問、芸術、それによる文化や生活。


 普人族が現れ国を作り人族の領域を広げたけど、その頃から今に至るまでほとんど変わっていない。政は王政による封建社会。学問や芸術も一部の特権階級だけ。


 政治を行う者にしたら、愚民政策を執り領民は言われた事だけする方が治めやすいのはわかる。しかし、一般の人々は税に苦しみ生きるので精一杯。その一般の人々の道から外れた人は、流民となりスラムなどで生きるだけの為に生活をし、それすらできない人は犯罪に手を染めるか死ぬしかない。


 全てが停滞しているからだ。


 全ての特権階級の人が悪いとは言わない。ルミエール王国やヒルデンブルグ大公国などはまだましな方だけどね。


 一般の人にも学問や芸術の道を開き、この世界全体を一部の特権階級が動かすのではなく、一般の人の一般の人による一般の人の為の政治が行われるようにしていかなければならないと思う。



「エナジーコアの有用なエネルギーがある為、大規模な産業革命も起きません。有用なスキルがあるので、大型機械が発明されません。なのに、大規模戦闘でのスキル運用が全くできていない。一部の特権階級が愚民政策を執り知識を与えていないからです」


「それでどうしろと?」


「知識をください。基礎教育、倫理、道徳に役立つもの全て」


「知識を得てどうするつもりだ。君が特権階級の一人になるだけなのでは?」


「これでも俺はこの国の貴族の一人です。領地を持ち領民も居ます。そこで、

 各町に無料の学校を作ろうと思います。最初は私の領地だけになると思いますが、まあ出来る事から一歩ずつですね。教える教師も育成しないと駄目ですから」



 いくら民主主義と騒いでも、理解できなければ意味がない。俺は王政が悪いとは思っていない。只、王が変わる事により善政が悪政に急に変わるといった政治体制に問題があると思っている。


 まあ、向うの政治も駄目駄目だったけど、この世界の政治に比べればまだましだろう。



「上手くいくかね?」


「さあ、わかりません。ですが、一歩を踏みださなければ、前には進みませんから」


「この船には一部の知識しかない。全ての知識は各システムに保存されている。この大陸であればヴァルハラ・システムだな。マスター権限を与えたのだ。好きに使えば良い」


 ん? ってことは、俺とミーちゃんのご褒美はノーカン? 別の物で良いってこと?



「み~?」




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