338神猫 ミーちゃん、手の平を返します。

 ここが正念場。行くぞミーちゃん!



「み~!」


「では、俺とミーちゃんは別にご褒美を貰ってもいいですよね?」


「ふむ。致し方ないが、そうなるな」



 よっしゃっ! ミーちゃん、なに貰おうか? えっ? AFの空飛ぶお船? そんなのあった?


 AFのリストを再確認すると船とはちょっと違うけど、フライングボードのような物の項目をミーちゃんがテシテシ叩いてアピールしてます。



「これはどのようなAFですか?」


「空中に浮く連絡移動用に作られたものだ。我々神人以外に使える者は居ない。はずだったが、その子猫は例外だな」



 形と大きさは、まんま、車輪の無いスケートボード。ミーちゃんが乗るにはちょうど良い大きさ。動力が神力だから、ミーちゃん自身が永久機関。高度は最大2メル最大速度は時速50キロ程でるそうだ。


 操縦用の腕輪を着ける事で、イメージで操縦できるようになる優れもの。これならミーちゃんでも操縦できる。ミーちゃんの場合、腕輪じゃなくて首輪になるけどね。


 ミーちゃんはホクホク顔。実は欲しいのを我慢していた模様。ミーちゃん、良い子です。


 さて、俺が管理者にお願いするご褒美はと言うと。



「カカオ豆の種をください。できれば、コーヒー豆の種も」



 そう、チョコレートです。チョコレートが食べたいです。でも、確か猫ってチョコレート食べれないんだよね。まあ、ミーちゃんは何を食べても平気なんだけど。



「ほう。神の食べ物を所望するか」


「み~?」



 神の食べ物? なにそれ? ミーちゃんもコテンと首を傾げてハテナ顔。ミーちゃん、チョコレート食べたことないんだろうね。


 それより猫獣人とかケットシーが食べても大丈夫なのでしょうか?



「問題無い。猫に比べ体の大きさが違うので中毒は起こさない。猫の遺伝子を持っているだけの人だと思えば良い」



 それなら安心だ。腹ペコ魔人のペロが一番心配だったんだよね。危険だから食べたら駄目って言っても、ちょっとだけって言って食べそうな奴だから。ちなみにセラは黒豹だけどモンスターに分類されるので、ミーちゃんと同じでなにを食べても問題無いと、以前にロデムさんから聞いている。もちろん、ルーくんも同じ。



「残念ながらコーヒー豆の種は保存していない。だが、マヤリスの南半球にある国では、普通に栽培されている」



 という事は輸入できる、或いはもう輸入されてる可能性があるという事だ。



「じゃあ、代わりにサトウキビの苗と、遠心分離機なんて貰えません?」


「君は遠慮が無いな」


「み~」



 ネロくんだから~ってミーちゃん、何気にディスってません? 遠慮で腹が膨れるなら遠慮でも何でもしますよ。立っている者は親でも使えって言うでしょう。せっかくのチャンスなのだから、貰えるものは根こそぎ持って帰りたいです。



「サトウキビの苗はやろう。だが、遠心分離機もここには無い。システムに行きAIに作らせれば良い」



 おぉー、ラッキー。それにしても、システムは相当に有能みたいだ。行くのが楽しみだ。


 遠心分離機があれば白砂糖を作ることができる。まだ、この世界で白砂糖を見たことがないので、もしかしたら遠心分離機がないのかもしれない。でも、蜂蜜を分離させるのに使っていそうな気はする。となると、黒砂糖を白砂糖にする工程が確立されていないと考えるべきかな?


 普段は黒砂糖でなんら問題は無いけど、お菓子を作るなら白砂糖の方が味も見栄えも良くなる。


 売れる。必ず売れるぞ! ニクセでサトウキビを栽培して、フォルテで砂糖かぶを栽培させればこの国周辺の砂糖を供給できるようになる。


 黒砂糖は庶民に適正価格で売り、白砂糖は貴族や金持ちに高値で売り捌けばウハウハですな。


 神猫商会の会頭のミーちゃんどうよ?



「みぃ……」



 ネロくん、お目々がレトになってるよって。あれ? あんまり乗り気じゃないね。白砂糖ができればミーちゃんの大好きな餡子が、今より上品でより美味しくなるんだよ?



「み~!」



 良し、やろう~よって……ミーちゃん、手の平を返し過ぎじゃありません?



「み~」



 餡子は正義って……。ミーちゃん、本気まじですね。


 管理者はまた、どこからともなく五十セン四方の箱を出した。中身を確認すると一見、竹の節に見えるサトウキビが二十本入っている。とても大事なものなので、すぐにミーちゃんバッグにしまってもらう。



「さて、これですべて良いかな?」


「はい。ありがとうございました。大変助かります。それから、今後、あなた達とはもう会えないのでしょうね?」


「み~?」


「そうだな。もう君達と会う事はあるまい。我々はこの星を見守るだけの存在」


「それだけですか……」


「そう、それだけだ」



 神界に戻るために修行する者、別の星で全てをやり直そうとする者、そして何もせず只見守る者。それは、元の高みに戻ろうとする事、己の力を信じ先に進む事、全てに絶望してその場で動きを止める事。


 俺だったらどの立場を選ぶだろう? 一つだけ確実に言えるのは、立ち止まる事はない。立ち止まったらそこで終わりだ。例え、這ってでも前に進む事を選ぶ。


 ミーちゃんもそうだよね?



「み~」




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