322神猫 ミーちゃん、それでも宝石好きなの。だって女の子だもん!

 青色の金属ゴーレムが居る。


 前の世界ならタロスってところかな。だとしても、踵を攻撃したくらいで倒せる様なモンスターじゃないだろうね。


 今回の金属ゴーレム対策はゴーレムの動きを止める事。用意する物は安物の鉄の槍数本。流石に今回は単独では厳しいので、ペロ達にけん制してもらう。



「けん制するだけで良いんだな?」


「はい、お願いします。ただ、ゴーレムには近づかないでくださいね」


「何する気にゃ?」


「科学の実験かな?」


「み~?」


「科学ですか?」


「実験大好き!」



 科学と言うより化学の実験かな? まあ、取り敢えずやってみようか。


 ペロとジンさんが青銅ゴーレムの気を引き、宗方弟が炎スキルで更に気を引く。その間に俺は青銅ゴーレムの後ろに回り込む。青銅ゴーレムは俺に全く気付いていない様子。ペロ達が上手く青銅ゴーレムの敵愾心ヘイトを稼いでくれてるおかげだね。


 そーっと槍の穂先を青銅ゴーレムの脇に近づける。大丈夫、まったくこちらに気付いていない。じゃあ、一気にいきますか。


 青銅ゴーレムの脇に槍の穂先を当てがい槍の穂先に雷スキルで放電させる。穂先が目で見ていられない程の青白い光りを放つ。これは、手ごたえありの感触。放電をやめて青銅ゴーレムから距離を取る。青銅ゴーレムの脇に槍が柄ごと引っ付いているのが見える。成功か?



「なんにゃ~!」


「バ○ス?」


「目が~、目が~!」



 宗方姉弟よ、お約束ありがとう。


 では、説明しよう。今回の試みは、雷スキルを利用した電気溶融を用いて青銅ゴーレムの脇を固定したのだ! これで青銅ゴーレムは右腕を上手く使えなくなるはず。これを他の部分にも行えば青銅ゴーレムは身動きできなくなる予定。まあ、予定は未定だけどね。



「み~?」



 あっ、ミーちゃん危ないから近寄っちゃ駄目! って言おうとしたけど、予想に反して青銅ゴーレムはピクリとも動かない。why?


 ミーちゃん、青銅ゴーレムの足をテシテシ叩いた後、青銅ゴーレムの体を駆け上がり頭の上にドヤ顔で鎮座する。



「み~」



 どうやら、青銅ゴーレムは機能停止したようだ。何故?



「おい、ネロ。どうなってやがる?」


「これが少年の狙いか?」


「なんにゃ? 動かなくなったにゃ」


「にゃ」



 近寄って青銅ゴーレムの前に立ってみても青銅ゴーレムは動かない。青銅ゴーレムの弱点は踵じゃなくて脇だったのかな?



「槍がゴーレムに引っ付いて取れないです」


「ふにゅー。本当に取れないよー」



 いったい、何が起きたんだろう。まあ、結果オーライって事で良いんじゃねぇ?



「よくねぇよ! 説明しろや!」



 デジャヴュでしょうか? なんか前にもこんなやりとりがあったような?


 取り敢えず、休憩がてらに俺がやろうとしていた事を皆に説明する。



「そんな事が可能なのかよ?」


「でも、実際ゴーレムに槍の穂先が引っ付いてるっす」


「アーク溶接ってやつですかね」


「確かに化学の力だねー」



 そう、化学の実験は確かに成功した。でも、ゴーレムの動きを封じる事が目的であって、機能停止させるとは想像していなかった。



「み~」



 って、ミーちゃんどうしたの? えっ、宝石の原石? 倒した訳じゃないから無いんじゃない?


 ミーちゃん、がーんとした表情でトボトボ青銅ゴーレムの足元に行って力なくテシテシと青銅ゴーレムの足を叩いている……そ、そこまでですか!?


 宝石の原石なんて烈王さんに貰ったのが山ほどあるでしょうに……乙女心は複雑だよ。仕方ない。ミーちゃんの為だ、ちょっとだけやってみますか。


 オブジェと化した青銅ゴーレムに近づいて土スキルを使いゴーレムの中にある異物を外に排出するようにイメージする。


 うーん、一気に疲れが溜まっていく感じになる。やはり、金属を土スキルで操作するのは大変だ。五分程土スキルで悪戦苦闘すると、青銅ゴーレムの体からカランコロコロとエナジーコアと何かの宝石の原石が落ちてきた。



「み~!」



 ミーちゃん、嬉しそうに落ちてきた宝石の原石を咥えて持ってくる。ルビーの原石で、ミーちゃんの好きな宝石だ。良かったね。



「み~」



 エナジーコアは宗方弟が拾ってじーと見ている。どうかしたんだろうか?



「ネロさん。エナジーコアにヒビが入ってます。このせいでゴーレムが止まったんじゃないでしょうか?」


「雷スキルのせい?」



 電気溶融でゴーレムの動きを止めるつもりが、ゴーレムの素材である金属を伝わって内部のエナジーコアを破壊したって事? エナジーコアってそんなに脆いの?


 今まで直接エナジーコアに雷スキルを使った事は無い。まあ、当たり前だけどモンスターの体の中にあるから直接狙えない。でも、今まで雷スキルを使って倒したモンスターのエナジーコアは無事だった。肉の壁のおかげ?


 ミーちゃんバッグから壊れてないエナジーコアを出してもらい、床に置く。



「そんなとこにコアを置いて、何する気だ?」


「なんにゃ、なんにゃ?」


「にゃ?」



 ジンさんとペロ達が怪訝な表情で俺を見ている。



「ちょっと実験をしてみます」



 さて、どうなるだろうか? ミーちゃん、どうなると思う?



「み~?」




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